言語学や言語習得関係入門レベルの講義を履修したことのある第三者に一番最初のパラグラフだけ与え、私の論文をなぞってもらいました。最後に啓蒙的助言を自分なりに書いてもらいました。 最後のまとめの両者の比較をごらんください。私の論文をなぞれば、だいたい似たようなものになります。 もどる
字幕なしで英語の映画を見る方法
BBBB CCCCC 2017年1月16日

 「『英語の映画を字幕なしで楽しみたい』というのは日本人の英語学習者の持つ夢である」、とよく言われる。この夢はどのようにしたら実現できるであろうか。英語の聞き取りの難しさはどこにあるのか、その難しさを克服するためにはどのようにするべきか考察する。

  ◎映画の英語を聞き取る上での難しさ
 私たちが英語学習をしていると、ネイティヴが話す英語で聞き取れるもの、聞き取れないものが当たり前のように存在する。その中でも、単純に聞き取れないもの、聞き取れるものが存在するが、映画を見ているうちに、その言葉の意味を理解できる、というような状況になることもあるだろう。そういった映画の英語を聞き取る上での言葉の理解、学習について分類をしながら映画の英語を聞き取る上での難しさについて論じていこうと思う。

●聞き取れる言葉と聞き取れない言葉
 映画のセリフなどを聞き取って、理解できることや、その単語を思い浮かべられることは、英語の映画を字幕なしで楽しむ上での重要なポイントとなる。  しかし、そのセリフや単語を認識していなくても、映画の前後のストーリーから、それらを推測し、意味が分かることがあるだろう。この場合、映画のシーンの理解に差し支えはない。ただ、映画のワンシーンで意味を推測できた単語があったとしても、映画とはまったく別の状況で使われた場合、聞き取ることができるかどうかは疑わしい。つまり、意味が映画中で推測できたとしても、その後に、学習されなければ、習得されず、わからない言葉のままになる、というわけである。このことは、私たちが英語の文章を読む上でも同じことが言えるだろう。いくつか分からない単語や言い回しがあったとしても、その文章の前後の文脈から分からない単語の意味を推測できたという経験は英語学習者であれば、多くあるはずだ。

●聞き取れない言葉が聞き取れる
 映画の前後のシーンや英語学習者が持つ情報、知識、イマジネーションなどをもとに、母国語での意味を知っている語に、英語を当てはめて、聞き取りができるということである。

●すべての単語の聞き取りができるが、単語の指す意味が分からない
 我々は知らず知らずのうちに母国語をもとに文法や単語の固定観念を持っているはずだ。そのため、英単語を全て聞き取れたとしても、セリフとしての意味が明確に分からないということがある。そういった母国語のステレオタイプが英語を聞き取るうえでの支障となる。

●ただ1つの単語が聞き取れず、セリフ全体が分からない
 ただ1語だけが不明な英単語であったとして、その単語がセリフ中で重要な単語であるとすれば、明確にそのセリフの指し示す事柄や状況が分からないことがある。また、上述の「聞き取れる言葉と聞き取れない言葉」にあるように推測できる場合もあるかもしれないが、映画のように次から次へと言葉が流れてくる状況で、意味を考え、推測するというのことは難しいところでもある。

●カタカナの音として、音のみ記憶に残る
 前後のシーンから類推しても、意味や綴りが分からないが、カタカナの音として記憶に残る場合である。上述のように、私たちは母語のステレオタイプを持っているため、聞き取りにくい発音などが存在する。カタカナの音のみの記憶だと英語の正確な発音と異なるため、意味や綴りを類推するのも難しくなるだろう。

●異なる言葉と勘違いする
 聞き取れたと思っても、その単語が勘違いであった場合、映画の内容を理解する上で差しさわりが生じる。

●ゆっくり、はっきり、は聞き取りやすい
 聞き取り能力とは、一語一語を聞き取る力+その文(セリフ)を解読する力である。この2つの力は、「時間」が大きく影響する。まず、一語一語を聞き取る能力としては、話者の話すスピードが影響することは間違いない。話者の話すスピードが速く、単語同士が連結してしまう場合や、弱いアクセントのものなどは英語学習者にとって聞き取りが難しい。一方で、解読する力に関しては、一語一語が聞き取れたとしても、それを単語としてではなく、文として意味を解釈するまで時間を要する。この二つの点を踏まえて、ゆっくり、はっきり、とした話され方をする場合、その英語は聞き取りやすい。

●文の持つ英語の論理・発想の違い
 母国語の持つ構文と英語の構文の考え方が異なるために、その意味を瞬時に理解することが難しい。

●シーンとセリフが合わない
 耳から聞き取れたことと、目から見てとれる情景がマッチしておらず、セリフの意味解釈ができない。

これまで、英語の映画を見る上でのセリフの聞き取りの難しさについて論じてきたが、これからは、聞き取り、意味を解釈するまでの過程や、英語学習者の聞き取りが難しい理由について考察する。

●意味解釈の過程
 A.1 音を聞く 2単語や文を認識B意味解釈
 B.1 音を聞く 2意味解釈
 C.1 音を聞く 2認識できないB意味解釈できない
 以上の3パターンがある。Aの過程に要する時間を短くできればできるほど、映画の英語を聞き取れるだろう。そのためには、英語母語話者のように音を聞き取った瞬間に意味が直接つながるような表現を数多く習得するべきだ。ただ、その表現がいくつあるのかは皆目見当もつかない。

●聞き取りの困難な理由
 英語学習者が聞き取る上で難しい理由として、
1一つわからないと全体がわからないと決めつける。
2少しの音の違いでついていけない。
3知っている言葉・表現に置き換えようとする。
4スピード、数語がかたまりになった言葉についていけない。

 以上のように、英語の映画を字幕なしで楽しむためには、多くの要因が積み重なり、私たち日本人英語学習者に意味理解を阻んでいる。上述のことを踏まえ、筆者なりの字幕なしで映画を楽しむためには何が必要であるのか、述べる。
 まず、聞き取れない言葉や少しあやふやだと感じるセリフがあった場合、そのセリフの字幕を確認するべきだろう。そのセリフが映画の場面の理解に支障をきたすようなら、その場で字幕を確認し、意味理解をすべきであろうが、分からない都度確認するのが厄介であるならば、分からなかったセリフがあった時間をメモし、後で確認することや、すべて見終わってから、もう一度字幕付きで見返す、というのも手ではないだろうか。  
  また、私たち日本人が高校までの英語の文法で習っていない構文を持った文や、母国語とは違う発想の構文も出てくるだろう。そういった時に、流すのではなく、書き留めておくことが必要だ。そうでなければ、また別の機会でその構文や語法がでてきた時に、分からない、ということになってしまう。分からないままにするのではなく、習得しなければならない。
 次に、1語だけわからない単語があったとしても動じないことが大切だ。  さらに、何度も英語話者が使う表現などを聞く訓練をすることや、メモすることで、聞き取り、直接意味につなげられるような表現、語法、単語を増やすことが大切だ。直接意味につなげられるような表現を身に着けることで、次から次へと英語が流れてくる映画の状況で、瞬時に意味解釈できることは大きな武器になるだろう。
   以上のことが、筆者が考える、「字幕なしで英語の映画を楽しむために必要なこと」である。  


 下記の専門的知識を持った大学教授の贋作のまとめと上記の第三者のまとめとを比較してみてください。さすがにプロは違います。最後にせりふの発話にまで持って行くところなど秀逸です。しかし、言い回しは多少違いますが、「分からなかったセリフがあった時間をメモし、後で確認することや、すべて見終わってから、もう一度字幕付きで見返す(第三者)」と「台詞やナレーションを確認し、知らない表現を書き留めていくことです。これを1本の映画全体を通してやる。そのあと、その表現集を参考にして、字幕を見ながら、意味や音を確認しつつ映画を何度か見ましょう。そのあと「字幕なし」で見てみてください。(大学教授)」などは、私が論文で述べた映画視聴の方法の記述と映画開始からの時間入りでのせりふの提示を認めれば、当然このように書きたくなるのでしょう。


「字幕あり」で理解できなければ「字幕なし」では理解できません。「字幕なし」で挑戦してからでもいいのですが、お勧めは、まず「字幕あり」で見て、台詞やナレーションを確認し、知らない表現を書き留めていくことです。これを1本の映画全体を通してやる。そのあと、その表現集を参考にして、字幕を見ながら、意味や音を確認しつつ映画を何度か見ましょう。そのあと「字幕なし」で見てみてください。時間とエネルギーがかかりますが、「字幕なしでハリウッド映画が見る」ことができるはずです。理解できなければ、もう一度「字幕あり」で理解できなかったところを確認し、またそのあと「字幕なし」で見ます。

 「何だ、大変だし、時間がかかるなぁ」とお思いになるかもしれません。しかし、まず1本理解できなければ、結局1本も理解できません。子供に同じ絵本を何度も読んで聞かせると、文字の分からない子供でも、本のセリフを全部覚えてしまって、まるで読んでいるかのように「読む」ことが可能になることがあります。それと同じように、まずは、映画一本、自分のものにしてしまわなければなりません。そうしなければ、やっぱり「夢」は「夢」で終わってしまいます。

  映画を選ぶには、内容が面白いことが何より大切ですが、英語の難しさが映画によって異なることに注意が必要です。聞きやすいのは子供でも見ることができる映画です。聞けるようになるだけではなくて、話せるようになりたいのであれば、素敵な台詞が沢山出てくる映画が良いですね。その役になりきって、鏡に向かって何度か実際に口に出して言ってみてください。とっさのときに口から出てくるかもしれません。そうなれば、もはや、あなたの英語は(たまに)ハリウッドスター並みです。

 


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