日本の階層システム 全6巻  東京大学出版会  1995年SSM調査の成果を出版したもの  どちらかというと学術書というよりは一般向けの本 『1 近代化と社会階層』 原 純輔 編  I 近代化と階層  1章 近代産業社会日本の階層システム(原 純輔)  II 近代化の歴史社会学(1) −戦前から戦後へ  2章 新中間層の誕生(中村牧子)  3章 自営業層の戦前と戦後(鄭 賢淑)  4章 近代都市東京の形成(粒来香)  5章 戦後日本の農民層分解(橋本健二)  III 近代化の歴史社会学(2) −高度成長そして現在  6章 高度経済成長の光と影(佐藤嘉倫)  7章 日本的経営と長期雇用 −戦後期に着目して(稲田雅也)  8章 専業主婦層の形成と変容(杉野 勇・米村千代)  9章 「豊かな社会」と周辺層(西澤晃彦)  IV 欧米と日本 10章 産業社会の中の日本 −社会移動の国際比較と趨勢(石田 浩)  付録 SSM調査(社会階層と社会移動全国調査)について 『2 公平感と政治意識』 海野道郎 編  I 階層意識の諸相  1章 豊かさの追求から公平社会の希求へ      −階層意識の構造と変容(海野道郎)  2章 人は何になりたいのか      −職業魅力の構造(都築一治)  3章 自分はどこにいるのか      −階層帰属意識の解明(間々田孝夫)  II 公平性と社会評価  4章 公平理念はどのように形成されるのか      −概念の整理と日本の位置づけ(宮野勝)  5章 不公平感はどのように生じるのか      −生成メカニズムの解明(織田輝哉・阿部晃士)  6章 日本人の不公平感は特殊か      −比較社会論的視点で(斎藤友里子・山岸俊男)  7章 不公平感が高まる社会状況は何か      −公正観と不公平感の歴史(間淵領吾)  III 政治意識の変容  8章 政治イデオロギーは政治参加にどう影響するのか      −現代日本における参加と平等のイデオロギー(小林久高)  9章 反権威主義的態度の高まりは何をもたらすのか      −政治意識と権威主義的態度(轟 亮) 10章 無党派層は政治にどう関わるのか      −無党派層の変貌と政治参加の行方(片瀬一男・海野道郎)  付録 1995年SSM調査(社会階層と社会移動全国調査)と質問文(抄) 『3 戦後日本の教育社会』 近藤博之 編  I 教育機会の趨勢  1章 階層研究と教育社会の位相(近藤博之)  2章 教育機会の格差は縮小したか      −教育環境の変化と出身階層間格差(荒牧草平)  3章 学校ランクと社会移動      −トーナメント型社会移動規範が隠すもの(中西祐子)  4章 地域移動から見た就学・就職行動(粒来香・林拓也)  II 教育と職業  5章 教育と職業のリンケージ      −労働市場の分節化と学歴の効用(濱中義隆・苅谷剛彦)  6章 学歴社会の未来像 −所得からみた教育と職業(矢野眞和・島一則)  7章 資格社会の可能性 −学歴主義は脱却できるか(阿形健司)  III 教育意識の変容  8章 高学歴志向の趨勢 −世代の変化に注目して(中村高康)  9章 大衆教育社会のなかの階層意識(吉川徹)  IV 近代社会と学歴 10章 近代階層理論の浸透      −高度成長期以降のライフコースと教育(岩井八郎) 11章 「知的階層制」の神話(近藤博之) 『4 ジェンダー・市場・家族』 盛山和夫 編  I ジェンダーと社会階層  1章 ジェンダーと階層の歴史と論理(盛山和夫)  2章 教育達成のジェンダー構造(尾嶋史章・近藤博之)  3章 女性の階層的地位はどのように決まるか?(赤川 学)  II ジェンダーと市場  4章 M字型就業パターンの定着とその意味      −女性のライフコースの日米比較を中心に(岩井八郎・真鍋倫子)  5章 性別分業を維持してきたもの      −郊外型ライフスタイル仮説の検討(田中重人)  6章 市場参加/社会参加      −キャリア・パターンの多様性とその背景(中井美樹・赤地麻由子)  7章 女性の就業と階級構造(白波瀬佐和子)  III 結婚・家族・階層  8章 結婚市場の変容(志田基与師・盛山和夫・渡辺秀樹)  9章 労働市場の構造と有配偶女性の意識(木村邦博) 10章 家事に参加する夫,しない夫(岩井紀子・稲葉昭英) 11章 「理念」から「日常」へ −変容する性別役割分業意識(尾嶋史章) 『5 社会階層のポストモダン』 今田高俊 編  I 社会階層のリアリティ変容  1章 ポストモダン時代の社会階層(今田高俊)  II 弛緩する地位達成の意欲  2章 脱-階層志向の状況と構造(井上 寛)  3章 「こころの豊かさ」への志向構造(三重野 卓)  4章 情報コンシャスネスとオルトエリート      −階層化・脱階層化の同時進行と社会構造変化(遠藤 薫)  III 生活様式と文化のプレゼンス  5章 ライフスタイルと生活満足(白倉幸男)  6章 文化的寛容性と象徴的境界      −現代の文化資本と階層再生産(片岡栄美)  7章 市場に立脚する正統文化      −クラシック・コンサートに集う人々(米澤彰純) 『6 階層社会から新しい市民社会へ』 高坂健次 編  I これからの市民社会  1章 平等社会から公平社会へ      −新しい市民社会における資源配分原理(高坂健次)  2章 階層システムの公共哲学に向けて(盛山和夫)  II 政策課題  3章 階層と政治(宮野勝)  4章 新しい市民社会の高等教育      −市民による市民のための大学(岩本健良)  5章 政策対象としての真の社会的弱者とは(高坂健次・与謝野有紀)  III 新しい市民像  6章 〈階級〉のレクイエム      −ポスト〔階級〕社会の市民ポリティクス(土場学)  7章 社会的活動(豊島慎一郎)  8章 階層制の神話(太郎丸博)  9章 在日韓国人の社会移動(金明秀・稲月正)  IV 階層研究の今後 10章 市民社会の未来と階層階級の現在      −「中」社会の終焉から(佐藤俊樹・石原英樹) 11章 「閉じた階層研究」から「開かれた階層研究」へ      −グローバル時代の階層問題と「日本社会」(園田茂人) 村瀬の意見  上記の本に関する書評論文が、数理社会学会『理論と方法』、日本社会学会 『社会学評論』、日本社会心理学会『社会心理学研究』などに掲載されている。 村瀬の感想としては、章によってはかなりおもしろいものもあり、学問的に重 要な章もある。とくに個人的には、第2巻のV部はおもしろかった(ちなみに 私はこの6冊シリーズには参加していない。べつにさぼったわけではなく、個 人的に博士論文の締め切り間際で、他の仕事をやる時間がなかったのである。 私の研究成果の一部は『社会学評論』に論文として載っている)。  しかし欠点としては、巻によっては、各章ごとの関連がばらばらで、あまり 連携がとれていないことがあげられる。編者の努力不足が一部にある。また、 一般読者を意識しつつやや学問的にすぎる記述が多く、一般読者にとってはや や分かりにくいし、研究者にとっては分析が浅くてものたりない。その点、85 年SSM調査の単行本の方がよくできていた。別途、研究者用の単行本を作っ てはどうだろうか。国際比較が少ないのも問題である。また各種のグラフが、 データラベルがなく注など説明が不十分であり、分かりにくいものが多い。細 かい数表が多くて読みにくいのも事実である。有効なグラフを、より多く活用 する方が分かりやすい。