I am a picture.
<テーマコンセプト>
今回のファッションショー「I am a picture.」は美術館をテーマとした。
美術館は、そこに足を踏み入れるだけで外界とは違う緊張感や雰囲気が漂っていて、私たちの周りにありながら、私たちの日常とは違った一つの異世界を創り上げている。
自分では気がついていないが、すぐそばに存在する異世界は身近にあふれているのだ。私たちはこのことに着目し、日常とは異なる異世界を再認識するショーにしたいと思った。
本来、美術館は私たち自身が歩いて作品を鑑賞する。
それは、作品ひとつひとつを鑑賞する時間や、見方を強制されることがない。
そのため、その人の趣くままに鑑賞することができる。
しかし、ファッションショーにおいて、この関係が逆転する。
つまり、私たち自身が歩いて鑑賞することはなく、自分の前を作品が次々と通りすぎてゆく。
時間も視点も定められる。では、なぜ最初から展示の方法をとらず、ショーとしての形態にしたのか。
それは服というのは現実の生活に密着しており、展示という方法では服の持ち合わせる現実性が表現出来ないと考えた。
展示されていたり、動きのない服というのは動くことでなびく布の動きなどがなく、何処か現実味が欠けている。
空間的には異世界を表現しているが、一方で、デザイン•コンセプトをご覧になっていただければお分かりになると思うが、服では現実性を打ち出しているので、ショーという形をとった。
<デザイン案>
今回「異世界」ということが全体のテーマの根底としてある。
そこで、私たちデザイナーがこのテーマを考えたところ、絵画自体からインスピレーションを受けた服というのはありふれているので、それを私たち学生がやることに少し疑問を感じた。
そこで、画家のバックグラウンドを表現する服をデザインすることにした。
絵画というものを画家が創り出した、現実とは違った新たな世界だと考えると、一方で、絵画を描いた画家は現実に生きている。
そこには時代や人生などの要素あり、それが絡んできて作品がうまれてくる。
絵画作品には画家の存在が欠かせなく、服においても作品には必ずデザイナーの感性や人柄が現れる。
絵画と画家のバックグラウンドを表現した服を同時に鑑賞することで、絵画作品という新たな世界と、人生や時代背景などの作品がうまれた過程である現実の世界を同時に提示し、美術館の作品の脇や、イントロダクションのような二次元の説明書きの世界を、三次元の服に落とし込み、言葉ではなく形でどう表現したら良いのか、各々のデザイナーがリサーチし、考え、表現した。
<空間コンセプト>
例えば私たちが風景画を見るとき、画家は二次元の世界として、三次元の世界をキャンバスに落とし込む。その絵画には、二次元と三次元の世界が交錯しているのだ。
一方、額縁から切り取られた世界とは別に、私たちが生活している三次元の世界にも、平面である二次元の世界が入り込んでいる。
今回、異世界というのがコンセプトなので、そこで額縁を使い、モデルがその後ろに立つことで、額縁に写されたものは二次元の世界、そこから出た部分を三次元の世界として同時に見せることで異世界の交錯を見せようとした。