立教スポーツ第148号
<7月4日更新>
フェンシング部・歴史を作る騎士たち
昨年、男子フルーレの部で2部昇格を果たしたフェンシング部が今年も快挙を繰り広げた。 4月20日〜5月9日に駒沢球技場などで行われた関東フェンシングリーグ戦において3部サーブル、エペの部で全勝優勝。さらに後日行われた入れ替え戦で2部昇格を勝ち取ったのだ。4人という少人数でチームを組んだ本学。この結果は、多くの強豪校を相手にひるむことなく挑んできた証しであった。
機は熟した
昨年昇格したフルーレはいわば基礎力が問われる種目であるがサーブル、エペは攻撃権の有無や有効面の違いなど専門的知識が必要となってくる。「基礎には自信があります」と主将・三村(経2)が話したように地盤がしっかりしている本学は、意気揚々とリーグ戦に臨んだ。
高校時代サーブルで全国6位入賞の実績を持つ蘭(社1)と、高知国体フルーレ全国3位に輝いた実力派の遠藤(社1)の二人を新たに加え、本学はまずサーブルのリーグ戦を危なげなく戦う。しかし、第2戦の対東経大だけは苦しい試合展開となった。点差が開かないまま、終盤で逆転を許してしまう。「負けるかもしれない」という思いが三村の脳裏をかすめたが、主将として、強気に攻める姿勢を崩さなかった。その結果、本学はわずか2点差で接戦をものにした。勝利の女神を味方につけ、本学は3部1位に勝ち上がった。
続くエペのリーグ戦1日目、休部していたエペ専門の佐藤(経2)が戻ってきた。士気高まる中、一方で計算外の事態が起こる。ここまで全試合に出場していた遠藤が体調不良により戦線離脱してしまう。当初は三村、佐藤、リーグ戦に出る予定であったが、遠藤の欠場によりエペ初心者の蘭に急きょ出番が回ってきた。しかし動じず、気持ちを切り替えて戦った。試合後、蘭が「次につなげることだけを考えて時間切れを狙いました」と話したように本学の作戦勝ち。サーブルに続き、エペも全勝で入れ替え戦へ進むこととなった。
一戦一戦を経ていくにつれて感じる2部への確かな手ごたえ。三村が力強く言い放った。「昇格するしかない」(写真=前だけを見て突き進め、三村!)
仲間を信じて
遠藤不在のまま本学は5月17日、専大第一体育館で開かれた2部との入れ替え戦に臨んだ。三人は勝つことだけを見据えていた。
まず戦ったのはサーブル種目。相手は、昨年3部フルーレで本学を苦しめた東大である。しかし、今年の本学は違っていた。試合開始から東大を突き放していく。勝利は本学へ傾いていた。そして最後に順番が回ってきた主将・三村に力強いガッツポーズともに2部昇格を決めたのだった。
サーブルで勝利した集中力をそのままに、本学は自信を持ってエペの入れ替え戦に臨んだ。相手はまたしても東大。「エペは2点の差があれば十分勝てる」と三村が話していたように、東大に対して常に2年以上の差をつける。試合が経過するにつれて点差は開き45−25で勝利。見事エペも2部昇格を現実とした。
緊張感であふれていた選手たちの表情が、喜びへと変わっていく。三村は「自分たちがやれば(2部に)上がれると信じていた」と胸を張った。サーブルで公式戦初出場となった佐藤は「自分ができなくても二人がやってくれると信じていた」と話し、蘭も「先輩が(点を)取ってくれると思っていました」とほほ笑んだ。本学はいつしかどこよりも強い信頼で結ばれていたのだった。
今後の目標について、彼らは口をそろえて秋のインカレ出場と来季に向けて1部昇格を挙げる。切磋琢磨(せっさたくま)し合って自身を高めていた四人。いつも前だけを見て果敢に突き進む若い彼らは、これから始まる歴史の立役者となるだろう。
恵まれた環境
四年前、本学は廃部の危機にあった。人数不足もさることながら、指導者も不在、勝てる技術もない。こんな弱小のチームを救ったのはかつてフェンシング部が王座に君臨していた時代のOBたちであった。
まず新たな刺激を受けるために専大や東大という強豪校の合宿や練習に加わり、大学では異例の3種目全てにレベルの高いコーチをつけた。特にフルーレのコーチはインターハイ優勝、世界ジュニア代表、全日本チャンピオンの肩書を持っている。OBは最高の環境を作った。
厳しい練習の中で得るものは大きい。選手たちはメキメキと頭角を現していった。部員不足も少人数特訓として生かされている。遠藤は「全員がレギュラーだからこそコーチは同じように指導してくれる」と話す。
しかし本学がここまで強くなった一番の理由は選手たちの「フェンシングが好き」という心そのものだった。だからこそ日々の練習も頑張ることができる。この気持ちが、昇格を引き寄せたはずだ。
(杉野)
ボート部・インカレ制覇へ快漕
男子舵手なしフォアがインカレ優勝を成し遂げてから1年。今年も戸田漕艇場を舞台に新たなシーズンが幕を開け、本学ボート部は早くも好成績を出した。
まず、5月17日・18日の第25回東日本大学選手権大会で女子ダブルスカルが2位に入る。さらに5月29日〜6月1日に行われた第81回全日本選手権大会においても女子ダブルスカルは5位入賞を果たす。また、同大会で女子舵手なしペアが銅メダルを獲得した。この勢いをそのままに、彼女たちは夏本番へと向かう。
常に勝利を
冬場の厳しい練習を経てボート部がインカレに照準を合わせ、動き出した。
今年から女子ダブルスカル(以下女子ダブル)を組む坂井(文4)と稀代(きたい=観2)。東日本大学選手権がこのクルーにとって初の公式戦となった。
予選を早大に次ぐ2着で通過する。決勝でも終盤まで早大に食らいつくが、及ばず2位。満足のいく結果ではなかったが、それゆえ課題もはっきりした。坂井は「もっと二人の漕ぎ(こぎ)を合わせたい」、稀代は「最後まで漕ぎ切る気合が足りない」とそれぞれ分析した。また、坂井は「1000b(=東日本大学選手権)での経験を、2000bのレース(=全日本選手権)で生かしたい」と、2週間後の大舞台へすぐに気持ちを切り替える。
年に一度、全国から名だたる強豪が集結し、日本一の座を争う全日本選手権。予選で女子ダブルは早大、法大などの他クルーを常にリードする。ゴール手前でやや差を詰められるが、気を抜くことなく、1着で準決勝進出を決めた。
そして3日目の準決勝は雨と強風が重なる悪条件の中行われた。2着以上で決勝進出となる。本学はまずまずのスタートで、法大と2番手を争う展開に。だが中盤以降、思うようにペースが上がらず、惜しくも3着となった。
この結果、狙っていた決勝への道は断たれた。「法大には予選で一度勝っていた。勝てる相手だったのに…」と二人は悔しさをにじませながら、翌日の順位決定戦に挑むことになる。(写真=クルーを引っ張る坂井(手前)と稀代(奥))
実戦を積んで
大会最終日、女子ダブルに先駆けてスタートしたのは女子舵手なしペア(以下女子ペア)の小島(文4)と家永(社2)である。5クルーで争われる予選なしの決勝。出場クルー数が少ないだけに十分にメダルが狙える。スタートで出遅れたものの練習より高いピッチを保ち、ライバル慶大を抑えて見事銅メダルをつかみ取った。インカレへの通過点でメダルを獲得したことに二人は喜んだ。
女子ペアに刺激を受け、女子ダブルの二人は奮起を誓う。
そして、女子ダブルの順位決定戦が始まった。スタート直後、わずかに他艇に先を行かれてしまう。その差は変わらずレースは後半に突入。それでも二人は必死に漕ぎ続け、残り500bの地点で明大に追いついた。勢いは衰えることなくゴールを突き抜ける。わずか2秒の間に3艇がゴールするという混戦に競り勝ったのは本学だ。二人は全日本5位という価値ある成績を収めた。
二つの大会を経てインカレに向けての改善点が明らかとなった。まず、女子ダブルは精神力を養わねば、数日にわたる大会を本調子のまま保てない。さらに、坂井はクルーリーダーとして「稀代の力を生かすも殺すも自分次第」であると言う。坂井がいかに稀代の力を引き出せるかが、ダブルの成長への重要な鍵を握っている。女子ペアも、まだ十分でない体力と技術の両方を伸ばすために、一日一日を大切に練習に励むつもりだ。
インカレが目前に迫る。さらなる成長を遂げ、ボート部一丸となり決戦の場へ乗り込む。
(新屋、落合)
レスリング部・40年振りに掴んだ2部準優勝
本当に頼もしい。大型新人の加入でますます活気づく本学レスリング部が、大仕事をやってのけた。だが歴代最強チームを目指す彼らにとっては、ほんの序幕に過ぎないのかもしれない。
5月13日〜16日にかけて、駒沢オリンピック公園総合運動場体育館において開かれた東日本学生レスリングリーグ戦。今後の行く末を占う大事な大会で本学が収めた準優勝という好成績は、実に昭和38年度以来の快挙であった。
証明した実力
本学が所属する2部リーグは10校で構成されている。Aグループ、Bグループの二つに分けられており、本学はAグループに出場した。各グループ1位校が、1部との入れ替え戦に進むことができる。本学は主将である長南(コ2)を柱とし、1、2年生だけで試合に臨む若いチームだ。
本学の快進撃は、国武大に5−2で勝利した初戦から始まった。第2戦八戸工大に苦戦を強いられるも4−3で勝利する。続く第3戦、東北学院大を相手に2−2となり、このリーグいまだ勝ち星のない鈴木(法2)の出番が回ってきた。序盤にリードを許してしまうが鈴木は見事な逆転勝ちを収める。この一戦で試合の流れを完全につかんだ本学が5−2で勝利した。第4戦、Aグループ1位の座を競い迎え撃ったのは神奈川工大。長南、1年生ながら本学の中心選手である石井(観1)、坂斎(コ1)が勝利し4−3で接戦を制す。本学はグループリーグ1位という輝かしい成績を残し、1部との入れ替え戦出場権を獲得した。
波に乗り、まい進する本学は2部の頂点を目指し、Bグループ1位の慶大に立ち向かう。やはりグループリーグを1位で突破してきた両校。一歩も譲らない緊迫した試合展開となったが、善戦するも3−4で敗れた。
2部優勝は逃したものの、準優勝という結果を勝ち得た本学。1部昇格を目前に、本学はどのような試合を繰り広げるのか――。(写真=巧みな試合運びで相手を圧倒した長南(上))
実りある収穫
真っ向勝負で挑んだ1部・2部入れ替え戦。体が大きく力のある東農大の選手に、万全のコンディションで戦う本学であったが、入れ替え戦の張りつめた空気にのみ込まれてしまう。リーグ戦全勝の長南が、相手に力でねじ伏せられ敗退。勝利を期待された石井、坂斎も持ち前の粘り強さが発揮できずマットに沈む。本学は1勝も挙げることができず0−7で惨敗に終わった。1部校との実力差は歴然としていた。
1部昇格はならなかったが、すべての力を出し切った本学。戦いを終え長南は「確かに現時点で力の差はあるが、あと2年あれば昇格も夢ではない」と力強く語った。2部準優勝、入れ替え戦出場まで上り詰めた本学において、1年生の石井、坂斎の存在は非常に大きい。彼らの力は、本学の飛躍に不可欠であった。柔軟な体とテクニックを兼ね備えた石井、そして恵まれた体の大きさとパワーを持った坂斎。「緊張はしたがいい試合ができた」「今回の結果には満足している」と二人はそれぞれ初のリーグ戦を振り返った。
1部昇格への課題は「体が小さいために力負けをしてしまう。体づくりとスタミナをつけることが先決。ただ練習をするだけだ」と部員たちは口々に言う。1部校の強さを肌で感じ取った部員たち。彼らの取り組むべきことは、はっきりしている。
今季、本学は多くの収穫を得た。長南が2部最優秀選手賞を受賞したことと、1年生二人の加入そして何よりも貴重な経験を積んだことだ。「1部へ上がりたい」と語ったことが、近い将来現実になるだろう。彼らはそれだけの可能性を持っている。すべては、部員一人ひとりの力に委ねられた。栄光はもう手の届くところにある。
(山下)
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