全日本のリンク。今年もあの場所へ立つために――。 11月3日~5日、群馬県総合スポーツセンターアイスアリーナで行われた第32回東日本フィギュアスケート選手権大会。シニア男子の部で本学の鳥居(経3)が総合3位に輝いたのである。これで3年連続となる全日本選手権出場が決定。演技に磨きをかけた鳥居が、日本フィギュア界最高の舞台へ再び挑む。 示した実力 今回の東日本選手権は12位以上で全日本への出場権が得られるという大会。鳥居にとっては難無く越えられる順位である。求められるのは全日本へ向け、いかに良い演技をするかということだった。 大会初日のショートプログラム。「直前の練習ではとても調子が良かった」と鳥居は言う。迎えた本番。最初に予定しているのは大技、3-3回転のコンビネーションジャンプである。一つ目のジャンプは成功。しかし二つ目のジャンプが2回転になってしまう。中盤でも2回転アクセルが1回転になるというミスが出た。それでも大きく崩れることなく演技を終えて、得点は46・09。ショートプログラム4位につける。 ミスをして少し焦りがあった鳥居。気持ちを落ち着かせ2日目のフリースケーティングは臨んだ。初めに挑むのは2回転アクセル-3回転トウループのコンビネーションジャンプ。「前日の失敗があったので何としても決めたかった」という鳥居は、これを見事に成功させる。次の3回転ループは2回転になってしまったが、その後は順調な滑りを見せた。最後のストレートラインステップも華麗に決めてフィニッシュ。92・42でフリースケーティング3位となった。これで鳥居の合計得点は138・51。ショートプログラム3位だった木村(八戸GOLD F・S・C)を逆転し、総合3位で全日本への出場権を獲得した。 大志を胸に 今大会の総合3位という順位。これは2年前の同大会と同じだ。この結果に対して鳥居は「おととしの時のような驚きはない。それよりも、もう少し点数を伸ばしたかった」と感想を述べる。好成績にも気を緩めることなく、次への課題を見つめていた。 鳥居は今年の全日本に並並ならぬ意欲を燃やしている。それは彼に悔しい記憶があるからだ。昨年の全日本、鳥居はミスを連発し121・84点で総合19位に終わった。そしてこの結果により全日本強化選手からも外されている。国際大会出場の機会が多い強化選手。その座を失うことは、世界を目指す鳥居にとってとてもつらいことだった。だからこそ今年は「去年の失敗は繰り返さない」と強い決意を抱いている。 全日本での目標として鳥居が掲げるのは「150点を超える」という明確なものだ。これを達成するには小さな失敗すら許されないだろう。鳥居は「今、持っているものすべてを出し切らなければ、たどり着くことはできない」と厳しい口調で語った。しかし強化選手に返り咲くためには、何としてでもクリアしたい目標なのである。 日々の努力の集大成。大観衆の前でそれを見せることができるのか。鳥居が大きな挑戦に向かって力強く滑り出す。 再燃する想い 鳥居の活躍の傍らで、一人の選手が思い悩んでいた。シニア女子で東日本選手権に出場した松村(法1)だ。前半のショートプログラムを終えて13位と、全日本出場条件である総合9位以内も見えていた。しかし続くフリースケーティングの演技で彼女は自分の良さを出せない。 「スケートはもう十分やった。そろそろ勉強に専念しようか」。スケートを続けていくことへの迷いが彼女の頭にはあったのだ。そんな中での結果は、大きく後退しての総合19位だった。 「(鳥居)先輩にも『このままじゃ終われないだろう』って言われました」。大会の後で松村はそう言って笑った。失意の松村を立ち上がらせたのは鳥居の言葉と、「好きでやってきた。そんな簡単にはやめられない」という彼女自身の思いだった。前を向いた彼女が今後どのような滑りを見せるか楽しみだ。