とどまるところを知らない男が今回も魅せた! 第52回全日本学生選手権トラック自転車競技大会のスクラッチにおいて渡辺洋平(社2)が見事優勝。立大からの全日本大会優勝者は実に45年振りとなる。激しいレースの中でも失われなかった「自信」が華華しい結果を呼び込んだ。
静かな幕開け
「優勝できるなんて思っていなかった」。45年振りとなった全日本クラスの大会での優勝。近年まれに見る快挙に最も驚いているのは他ならぬ渡辺本人だった。
自転車競技はロードとトラックに大別される。スクラッチはそのうちのトラック競技のひとつ。着順勝負のシンプルな種目だが、実に奥が深い。トラックの中でもとりわけ距離が長いため、位置取り、駆け引き、スプリント力と総合的な力量が試される。何よりスリリングなレース展開は見るものを飽きさせない。中長距離を得意とする渡辺にとって、実力を存分に発揮できる種目なのだ。
大会は2日間に渡って行われた。初日はトラック24周、総距離6キロの予選。上位6名が決勝に進めるとあって、渡辺は周りのペースに合わせながら、じっくりとチャンスを待った。こう着状態はしばらく続き、残り3周。先行していた前方の選手との差が徐々に詰まっていることを確認すると、果敢にスパート。思惑通りの展開で先頭集団を捉えた。惜しくもトップには及ばなかったものの、3着で予選を通過した。
そして、一夜明けての決勝。距離は15キロに伸びる。トラック60周の長丁場にも「序盤に差を許しても構わない」と渡辺は強気だった。前半30周、各校の精鋭たちが淡々と周回を消化していく中、渡辺もしっかりと好位置をキープ。このまま何も起きずに終わるはずがない。不気味なほど静かにレースは進んだ。
決死のラスト2周 予想通り、中盤以降レースは一気に活性化する。複数人での先頭争いが幾度となく繰り広げられ、積極的にレースを引っ張っていく。渡辺は、スピードに緩急をつけながら揺さぶる相手にもひるまず喰らいついていく。
残り5周、集団が再び一つに吸収されたとき、早大の選手がスパート。みるみるうちにその差は開いていくが、渡辺は深追いを避けた。「この選手は序盤に足を使っているな」。試合を重ねるごとに周りが良く見え、リラックスして走れると語る彼。これまでの経験は確たる「自信」となって渡辺を大きく支えていた。
残り4周、今度は日大の選手が加速。だが、集団もすぐに追走する。残り2周となったところでついに、渡辺がアタックをかける。「予選が終わった時から、決勝は自分で行くと決めていた」。執念のスプリントは、鮮やかに前を走る2選手を抜き去った。
ついに先頭に立った渡辺。だが、すでに体力は限界に達していた。後方から近づく車輪の音。後ろを振り返る余裕などない極限状態の中、全身全霊でラスト100bを逃げ切った。最高峰の舞台で渡辺が頂点に立った瞬間だった。
現在、彼は次なる高みに向け練習に励んでいる。その理由はひとつ。「目標はあくまでインカレでの活躍です」。戦いはすでに始まっている。(田島 尚斗)
【ハンドボール部】あふれる喜び 39年ぶり 1部昇格
1部昇格。誰もが待ち続けていた瞬間だった。リーグ戦全勝優勝と、破竹の勢いで迎えた入れ替え戦。昨秋もこの舞台に到達しながらも昇格を果たせず。今季は国武大との延長に及ぶ激戦の末、39年振りの1部復帰を決めた。また、8月に行われる東日本学生選手権大会への出場権も獲得した。
響き渡った歓声 入れ替え戦独特の緊張感が漂う中、運命の試合が幕を開けた。今シーズンを通して、立大の武器として確立した「守って速攻」がさえ、2点リードで前半を終える。後半に入っても果敢に攻め、一時は最大5点のリードを奪ったが、残り2分を切ったところで逆転を許す。万事休すか――。しかし、選手たちは諦めなかった。前節でも決勝点を挙げた新井(コ4)が、またしても土壇場でゴールを決め、同点に追い付く。勝負の行方は5分ハーフの延長戦へ。
開始2分、リーグ戦チームトップの得点を挙げた松井(営2)が2分間の退場を命じられる。その後立て続けに失点しチームが浮足立つ中、主将の石井龍(済4)は「今までやってきたことを徹底しよう」とチームを鼓舞した。自分たちを信じ、ひた向きにプレーを続ける選手たち。
ついにその時が訪れた。延長後半2分40秒、GK今野(コ2)が前線へロングパス。走り込んでいた玉城(コ3)にボールが渡ると力一杯に腕を振り抜く。固唾(かたず)をのんで見守る中、チームの思いを乗せたボールはゴールネットに突き刺さった。――逆転。誰もが待ちわびた瞬間だった。その後松井がダメ押しの追加点を挙げ、勝利を決定づけた。試合終了のブザーとともに、喜びの声がコートに響いた。
今、再び1部へ
1部の背中を追い続けた数ヵ月。「去年以上にコミュニケーションを深めていく中で、したいことの意思表示ができていた。そこがチームとして成長できたところ」と石井龍は今季の躍進について振り返る。その裏には、部員一人一人に浸透していた「守って速攻」と「闘争心」というスローガンがあった。今年からこの言葉を体育館に掲げ、常にチームの目の届く所に配置、練習中から意識を高く持ち意見をぶつけ合った。「いつの間にか合言葉になっていた」と部員が口をそろえるほど。何よりリーグ戦総得点1位、総失点2位という結果がチームの成長ぶりを物語っている。
ハンドボール部は一時部員も少なく関東学生の下位リーグに低迷していた。先輩たちが、代々引き上げてきたからこそ今がある。39年ぶりの復帰は現チームだけでなく過去の支えあってのものだ。現4年生が1年次にアスリート選抜入試が導入され「僕たちが入ったことで試合に出られない先輩たちもいた。プレー以外のところでそれぞれができることを一生懸命やって、チームをまとめてくれた」と石井龍は感謝の気持ちを語った。思いは一つになればかなう。今、再び1部に到達した。(堤美佳)
【ソフトテニス部女子】 半世紀の思いが今―― 創部史上初 1部昇格
創部から約半世紀の歴史の中で、ようやくたどり着いた「1部昇格」。2部全勝優勝が、この快挙に弾みをつけた。部は人数不足による低迷期を乗り越え、近年は着々と実力を上げてきた。そして、このチームが始動するとき揚げたのは「団体戦に強いチーム」。それが今、達成された。
昇格への切符 初戦からの4戦を全て3−0で勝利を挙げた立大。ヤマ場は最終戦・和洋女大だ。1部から降格してきたチームで「2部のほかのチームとはプレーや気迫が全く違う」と相川(コ2)は言う。しかし、ここでは負けられない。全勝同士の優勝決定戦が始まる。
一番手は出身高校の後輩と先輩ペアの薄葉(現1)と相川。薄葉は立大期待のルーキーで、1年生としては唯一リーグ戦のレギュラーに選ばれた。相川は今回全試合に出場した実力のある選手だ。ミスを誘う配球や体を張ったボレーなどで順調にゲームを取り、まずは1試合を先取した。
続いて、永見(現3)が二番手として出場。彼女に勝利の鍵となるシングルスを任せた。ゲームを取るごとに追いつかれ、手に汗握る展開でファイナルゲームまでもつれ込む。ここで光ったのが、彼女の“走り”だ。根気強くボールを追い続け、好リターンを連発。ポイントを重ね、最終ゲームを制した。決めた2部優勝。そして、入れ替え戦への道を切り開いた。
主将・渡辺(現4)の目には涙が。「ほっとした、っていう涙です」。彼女が入部してからの歴代の主将は、昇格を決めて引退しており、プレッシャーがあったという。
優勝はあくまで通過点。昇格のチャンスはもう、すぐそこまで来ていた。
果たした使命 2部優勝から一週間。運命の入れ替え戦がやってきた。相手の昭和学院短大は前回のリーグ戦で立大の2部優勝を阻んだ因縁のチーム。臨むのは、和洋女大戦と同じベストメンバーだ。
一番手の薄葉・相川ペアは5−0で圧勝。勢いそのままに、二番手の永見で全ては決まるかと思われた。しかし相手も1部校の意地を見せ、この試合には惜しくも敗れる。1勝1敗。次の三番手に、立大の昇格が託された。
部員の大きな声援を受け、最終決戦に臨んだのは林美(コ2)・石田(文3)ペア。練習試合においては負け無しの相手だが、決して油断することはなかった。林美が粘り強くボールを拾い、石田が決める――エースペアが華麗なプレーを見せ、ゲームを奪っていく。迎えたマッチポイント。林美が返したボールが、相手のペアの間を抜けた。その瞬間、部員やOGが見せたのは歓喜の笑顔。そして、歴代の部員の思いがこもった大粒の涙だった。
「ずっと夢だったので。1部に上げるのは使命みたいなもの。1部に上げる主将は1人しかいないから」と渡辺は2部優勝のときとは違う、涙の理由を語った。
これから挑む1部の舞台で、どれだけ通用するかは分からない。しかし、迷いなく前に向かおうとする彼女たちの姿勢は、なんとも頼もしい。(三浦美紀)
【水泳部】
杉崎 女子50m平泳ぎ ジャパンオープン 銅
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