強さの礎
立大には独自の理念がある。それは「ずっと強い立教」。今年だけでなくその先も勝ち続ける強さだ。毎年違う特徴を放つ彼女たちはこの1年、ディフェンスの底上げを図った。「まずは堅く守る。その後しっかりボールを渡せれば、個々の能力が高いアタック陣が点を入れてくれる」(清水佳=文4)。 磨き上げた戦力を駆使し、彼女たちはシーズンを戦い抜いた。
また、高校生を招いての合同練習。サブメンバー主体で争われる「準リーグ」を主催するなど、立大はラクロス界全体の発展を目指している。こうした活動を通じて部員一人一人が自らの役割の重要さを知る。それはある概念につながっている。"脳に汗をかくラク
ロス"。チームに何ができるかを考え、追求するという意味だ。
さらにその先にあるものが女子ラクロス部の根幹となっている。それは社会で活躍する女性を輩出すること。「ある物事をどのように極めるか。ラクロスはあくまでも成長するための手段」と常に考える姿勢を問う、佐藤ヘッドコーチ。彼は技術向上だけでなく人間
的な成長も願っている。
絶対にぶれない軸。それがあるから立大は進化を続ける。偉大な成績を残した2011年。その時間もまた「ずっと強い立教」の血となり肉となる。新主将・上岡(文3)は「アメーバのように柔軟性を持ってやりたい」と新チームを表した。2012年の個性を身にまとった彼女たちは念願の日本一へ、新たなスタートを切った。 (稲垣万)
【合気道部】
輝く日本一 宮崎 全日本綜合乱取の部 優勝
実に26年ぶりの快挙を成し遂げた。二段以上の選手が出場する全日本選手権において、宮崎一郎(営3)が綜合乱取の部で優勝。勝利に対する強い思いが最高の結果を生み出した。
念願叶って
「歴史を塗り替えたかった」。1年生の時から抱いてきた全日本優勝の夢。それを叶えるために、宮崎は今大会に挑んだ。3回戦まで順調に勝ち進み、着々と勝利へ近づいていく。
「フォーム修正した結果が準決勝で全て出た」。構えの修正は、7月に行われた学生選手権からの課題であった。開きがちだった肘を直し、腰を低くした。
それが功を奏し、準決勝では宮崎中心の試合運びとなる。正面のガードの甘さを見抜き、狙いを定める。見事正面打ちと抱え腕当ての合わせ技一本で勝利を収め、いよいよ決勝へ。
会場は厳かな雰囲気に包まれていた。「背中をたたいてもらって緊張がほぐれた」。同期のパワーを一身に受けた宮崎は、不安を拭い去り試合に向かう。
相手の戦い方から内刈りでいくと決めた宮崎。開始わずか1秒で思い通りの内刈りを決める。タイムアウトと同時に会場全体に響き渡る歓声。立大にとって26年ぶりの優勝だった。
優勝トロフィーを手にし「良い意味で重かった。歴史を感じる」と笑みを浮かべた。追い続けた日本一になる夢。ついに現実のものとなった。(山本香)
勝利への執念
「合気道は見るのもやるのも大学が初めて」と言う宮崎。それでも今大会での優勝は譲ることのできない一番の目標だった。
それに向けて宮崎は日々稽古を重ねる。4年生が一人もおらず、経験を積む機会が少なかった。だが「綜合乱取では負けたくない」という勝利への強い思いが原動力となっていた。そして後輩の存在もまた彼を奮い立たせる。「結果を残して後輩にうまく見せていかないと」。取り巻く全ての状況がプラスの要素となり快挙達成への距離を縮めていった。
本番で1度試合に勝っても、宮崎は決しておごることはない。次の相手の試合を観察して、弱点や特徴を見抜く。自分はどう戦えば良いか――。そのイメージを試合の中で生かしていった。さらに剣道の経験者でもある彼は「相手との間合いも意識した」と自分ならではの持ち味も発揮。全てを出し切って戦った。
今後は後輩への指導にも力を注ぐ宮崎。そして三段取得という新たな目標も掲げる。常に上を目指す姿勢を忘れない。そんな彼が全日本という大舞台で優勝したことは、必然だったに違いない。(小野錬)
【スケート部フィギュア部門】
踏み出す一歩 中村 インカレ 準優勝
今年も中村健人(営2)が観客を引きつけた。3位に大差をつけてのインカレ準優勝。昨年から順位を一つ上げ、十分な存在感を見せつけた。数々の大舞台での経験を彼は確実に成長へとつなげている。
攻めの4回転
大会2日目に行われた男子ショートプログラム(以下SP)。中村の今季のSPは、情熱的に踊るA・ピアソラのタンゴ『フガータ』。演技冒頭のコンビネーションジャンプ、続くトリプルアクセルを決め勢いに乗る。しかし最後のジャンプが1回転になり、悔いの残る演技となった。その後出場したのは、高いジャンプに定評があり、全日本5位の無良(中京大)だ。その無良に2点差をつけられ、中村は追う立場になった。
「絶対巻き返したい」と臨んだ翌日のフリースケーティング。曲は100曲以上の候補の中から、彼自身が選び抜いたサン=サーンスの『交響曲第3番』。滑走順は無良より先に。持てる力の全てを演技にぶつけ、逆転を狙う。
リンクに立った中村。曲がかけられる前の1分間をいつものようにたっぷり使い位置につく。冒頭には全日本で回避した4回転トーループを予定。「1月に入る前から跳ぶと決めていた」。スピードをつけ思い切り踏み切る。だが惜しくも転倒。それでも気迫のスピンやステップで魅せ、ミスを引きずることなく演じきった。しかし、7つしか跳べないジャンプの内3つで失敗。演技直後、中村は両手で顔を覆い、天を仰いだ。
「まだまだ弱い」
全員の演技終了後、廊下に張り出された順位表。その一番上にあったのは、中村ではなく無良の名だった。しかしインタビューの際、彼はすがすがしい表情を見せてくれた。「やりきった感がある」。
昨年の12月に行われた全日本。中村は目標としていた最終グループ入りを果たす。尊敬する「大輔君(高橋大輔=関大大学院)」と一緒に滑ることができたこの舞台は、自分の実力を試す絶好の機会だった。だが最終滑走の緊張から、体が固くなり納得のいく演技とはならなかった。
そして迎えたインカレ。中村は全日本で回避した4回転に、果敢に挑んだ。今や"4回転時代"と呼ばれる男子シングル。その中でトップを狙うためには、このジャンプが不可欠となる。転倒に終わったものの、今回4回転に挑戦したということが、中村にとって大きな収穫となった。
今シーズンを経て、失敗があってもすぐに気持ちを切り換えられるようになった、と中村は成長を実感していた。それでも「まだまだ弱い。今は挑戦しながら勉強していきたい」。いかに自分のスケーティングをきれいに見せられるか。中村の追求は止まらない。次こそは、心からの彼の笑顔が見たい。(寺門奈緒)