歓喜の駿間
最後の砦(とりで)としてアリーナへ向かったのは高橋優(社2)と聖雄号。この時、2位の日大の合計減点は4。彼女が障害を一つでも落とすと、合計減点が4で並んでしまうという状況。プレッシャーがかかる中で順番を迎える。「みんなができなかった部分を私がサポートしたい」。そう笑う彼女の背中は、とても大きかった。
高校時に、全日本ジュニアで2位という実績を残している高橋優。大一番での勝負強さを見せ、障害を落とさない。タイムオーバーによる減点のみに抑え、減点1でフィニッシュ。上位3人の減点合計を1とし、優勝を決めた。部員全員が誰よりも高く、そして速く頂点だけを目指して駆け上がった結果だった。
「一緒にいる時間がとても長いので、信頼できる」(高橋優)と語るように、厩舎(きゅうしゃ)で過ごす時間が長く、食事も共にすることが多い。信頼関係はおのずと築かれている。部の結束が今大会、最高の形で実を結んだ。
減点ゼロが複数人出たため行われたジャンプオフでも躍進は止まらない。早川は個人で2位、石栗は8位という好成績を収めた。
「近年、強いと言われるようになってきている」。主将の川添(法4)も今回の成績に喜んだ。
表彰式が始まる頃には競技中の豪雨は止み、馬事公苑には雲ひとつない黄金色の空が広がっていた。まるで、これからの立大馬術部の黄金時代到来を予感させるかのような、そんな夕暮れだった。 (川村亮太)
【ローラホッケー部】
つなぐ常勝軍団の歴史 立大史上初 男子 インカレ V3
これぞ王者の底力。ローラーホッケー部男子が創部史上初のインカレ3連覇を成し遂げた。東日本学生で5連覇を逃した立大。プライドをかけて臨んだ彼らが、見事秋の長野でリベンジを果たした。
王者のプライド
劇的な幕切れだった。2度の逆転勝ちでローラーホッケー部男子が創部史上初の3連覇を成し遂げた。
専大との準決勝。前半に先制を許す厳しい展開。それでも後半、大塚(コ3)の得点で1点を返すと、終了間際に原賢(法3)のパスから再度大塚が決め、勝ち越しに成功。苦しみながらも決勝進出を決めた。
決勝戦の相手は東日本学生5連覇を阻んだ因縁のライバルである日大だ。先制点は日大。不用意なミスから得点を奪われた。それでも彼らに焦りはない。「最後の試合なので楽しんでいこう」と高野(理4)。 懸命にパックを追い続けた。
後半残り5分、その思いが実を結ぶ。原賢のロングシュートが決まり、試合は振り出しに。そのまま決着はつかず、試合はフリーシュート戦に委ねられた。
「みんな嫌がると思ったので自分が一番に打った」と立大の一人目はキャプテンの藤森(文4)。 プレッシャーのかかる場面で冷静に決め流れを作るとGK の森(文4)が好セーブを連発。失点を1点に抑え、2―1でフリーシュート戦を勝利。最高の舞台で立大がリベンジを果たした。
険しい道のり
「ホッとした」。 多くの選手が試合後口にしたこの言葉が、全てを物語っていた。東日本学生4連覇にインカレ連覇。先輩たちが作り上げてきた功績はあまりにも偉大だった。今季、東日本学生5連覇を逃した彼ら。インカレのタイトルだけは譲れない。誰もがそう思っていた。
ここまでの道のりは平たんではなかった。長きにわたり指導者がいない中、戦ってきた立大。主将・大山(理4)はチーム運営の難しさを「つらい。決まらないときは全然決まらない。散々な結果になったこともある」と振り返る。選手の間でプレーの方向性が異なり、なかなかチームが一つにまとまらなかった。
そんな中迎えた今大会。「これまで一年間まとまりきらなかったものがやっとまとまった」と高野。今までとは違うチームがそこにはあった。劣勢になっても諦めない選手たち。ベンチ陣も一丸となって声援を送った。一年の最後で最も強いチームが完成した。
「来年も優勝する」。 そう語ったのは来季チームを担う3年生。視線はすでに来季を見据えている。揺るぎない王者へ。彼らの歩みは止まらない。(小原覚)
【スケート部フィギュア部門】
中村 東日本 準優勝
今季も氷上で輝きを放つ中村健人(営3)。東日本の大舞台で大技に挑み、美しい演技で準優勝を果たした。12月に控える全日本に向け、戦う準備は整いつつある。
完璧へのこだわり
「ミスをしないこと。基本だけど絶対条件」。そう話し臨んだ今大会。全日本の前哨戦として全力で挑んだ。
今季一新したショートプログラム(以下SP)のテーマは「ミステリアス」だ。シニア2年目として海外からの目を意識。持ち味の安定した演技で2位につけた。
フリースケーティング(以下FS)は「自分らしく美しく強く」がコンセプト。「絶対にやらなきゃいけない」と話した4回転ジャンプに挑戦した。転倒こそしたものの、挑戦したことは全日本へのいいステップとなった。しかし4回転の乱れがその後に跳んだジャンプに影響。配点の高い終盤にトリプルアクセルを決めるも、4回転後のジャンプの減点が勝負を分ける結果となった。
「全部1位を取りたい」と準優勝という結果に悔しさを隠さない。しかしこれは誰かに負けた悔しさではない。
「ミスをしないこと」。どんな大会でも目標は変わらない。ミスのない演技は自信になり、感情が自然に表現される。また演技全体を広く捉えられ、より美しいスケーティングや表現が生まれる。中村がミスのない完璧な演技にこだわる理由はそこにある。
自分らしさ
中村健人の言う「完璧」とは――。「全部技が成功したから勝った」ではなく「これが健人だよね」と中村の個性が光る演技をすること。個性を生かしつつ技をつなぐことが彼の言う「完璧」であり、理想でもある。
「主観が入ると自分の都合のいいようにしかならない」と外部の意見を大切にしている彼のスケートは、様々な価値観・見方により評価され磨かれる。他の人の真似はしない。良い所を吸収し、自分らしく消化することで中村健人のスケートは確立していく。
ひたすらに自らのスケートを模索し続けること。それが「フィギュアスケートの楽しみ」と中村は語る。
次なる目標は全日本のFSを上位6名が入る最終グループで演技すること。男子シニアには世界トップレベルの強豪が肩を並べる。そんな現状にも「"僕にはできない"と思うと試合の前から負けることになる」と強気な姿勢を崩さない。そして大きな目標として、2月に行われる四大陸選手権大会出場を掲げた。
「すごく厳しいのはわかっている」。だが中村健人は決して下を向かない。前だけを見据え彼らしく美しく強く。いざ、全日本へ。(大山茜)
【ボート部】
女帝の片鱗 全日本 女子 ダブルスカル 6位
夏の暑さが残る仲秋の戸田。全日本選手権の舞台で立大クルーが躍動した。女子ダブルスカルに出場した島津菜月(コ2)・松本愛理(えり=観2)が9年ぶりに6位入賞を果たす。2年生だけのクルーだが強豪と肩を並べ戦い抜いた。来年の彼女たちの活躍に大いに期待がかかる。
拮抗した戦い
初日の予選は3着。準決勝進出を逃しいきなり遅れを取るも、敗者復活戦で勢いづいた。前日の結果を引きずることなく堂々の首位でゴール。続く準決勝では3着と、決勝には手が届かなかったものの、最終日の順位決定戦へ駒を進めた。
厳しい残暑が続く中で行われた最終日。発艇の合図が響いた。全クルーの実力は伯仲し、序盤から混戦の様相を呈す。立大は紙一重の差で4番手に。しかし彼女たちは冷静に展開を読んでいた。
中盤にさしかかると、自分たちの強みである粘り強い漕(こ)ぎを見せる。一気に首位を奪取し1500b地点では4位の東北大と約6秒差をつけた。順調に艇を進めていたが、残り300bで強豪・早大に追い付かれてしまう。「勢いで負けた」(松本)。結果は僅差で2着。しかし彼女たちの表情は明るかった。
大舞台で6位という輝かしい結果を手にし「純粋にうれしかった」と島津。いつも以上の粘りを発揮し、自身の成長を実感できた大会となった。
激闘の4日間を終えて自身をつかんだ2人。この快挙は決して1人では成し遂げられなかった。ここにたどり着くには、一年半かけて築き上げた絆が不可欠だった。
築いた結束力
同期女子の漕手(そうしゅ)は彼女たちだけということもあり、入学当初から常に行動を共にしてきた仲の良い2人。昨年の全日本新人戦では初めて組んだにもかかわらず4位入賞を果たした。
しかし、彼女たちは自信を持てずにいた。特に松本は、練習で船が思うように進まないと自分を責めてしまう癖が。それをいつも支えてきたのが島津だった。「(松本だけでなく)2人の問題なんだ」と島津が語り掛けるたびに「また頑張ろうって思えた」(松本)。
支えられていたのは松本だけではない。島津もまた、腰痛による練習不足で今大会前には不安があった。そんな彼女を、松本は1人でトレーニングを続けながら励ましてきた。そして、気付けば互いが掛け替えのないパートナーとなっていた。
今大会で4年生が引退し、3年生に女子の漕手がいないため最上級生となった彼女たち。「先輩が抜けて立教が弱くなったと思われたくない」と女子部新主将の島津。先頭に立ち、部の雰囲気作りに努めている。
一年前より実力、精神面ともに成長している2人。新体制となった今、まだ見ぬ栄光をつかみ取るために彼女たちは漕ぎ続ける。(船越ゆかり)
【少林寺拳法部】
切磋琢磨 古川・波多野 全日学 男子 二段以上の部 5位
古川聡(済4)と波田野裕介(法3)が今年も武道館で躍動した!?全国の挙士たちが競い合う全日学の大舞台。今大会で部を退く古川と、古川から主将を引き継いだ波田野。新旧主将ペアはこの一年、日々挑戦を続けてきた。その結果、男子二段以上の部で5位入賞。彼らの努力が生み出した素晴らしい快挙だった。
追い続けたもの
「うれしさ半分、悔しさ半分」。古川と波田野は5位入賞の感想を複雑な表情で語った。目標の3位入賞に届かなかったからだ。
今大会に向けて、波田野は苦手とする投げ技にあえて挑戦した。これは今後の可能性を考えての決断だった。全ては「納得のいく演武」にするため。2人は演武前の立ち振る舞いなど細部にもこだわった。試行錯誤しながら何度も演武を練り直し、「もう練習したくない」と思うほど練習を積んだ。
そして迎えた大会。「思うほど点が伸びず不安だった」と2人は振り返る。同コート内の上位3組が合計点で並ぶ接戦となるも、練習の積み重ねが生きた。技術点で他を上回り1位で予選を通過する。2人は「距離感がつかめず、突きや蹴りの当たりが軽くなっていた」と反省。本戦では修正し、「いつも通りの演武」を披露する。結果は5位入賞。四段の拳士が多い中、三段の2人が入賞したことは快挙だ。
今回、新旧主将の挑戦は結果につながった。2人を動かしたのは入賞への強いこだわりだった。尊敬する先輩のため。かわいい後輩のため。2人の思いが最後に実を結んだ。(木下知哉)
新たな世代へと
「全てが思い出。本当にありがとう」。試合後の古川から波田野への言葉は、2人のこれまでの多くの経験や努力を物語っていた。
出会いは2年前の春。経験者である波田野の入部は大学から競技を始めた古川にとって大きな刺激となった。これを契機に、彼の中に「先輩としてまずは自分が成長し、後輩を導こう」という、強い意志が生まれた。
それから2人は多くの修練を積んできた。昨年の全日学二段の部では4位入賞。それでも彼らは結果に満足することはなかった。「後輩に結果として示したい」。強い気持ちが彼らを動かす。
新たに日本武道館での練習やビデオでの演武研究も始めた。自らを見つめ直し、互いに教え合うことで技術面も精神面も変えようとする古川。その姿勢を波田野も感じ取り、精進を続けた。
今後、波田野は古川に学んだことを生かし、部員と共に切磋琢磨(せっさたくま)しながら進んでいく。尊敬する古川のような、後輩に慕われる主将を目指して。少林寺拳法部は、ここから新たなスタートを切る。「波田野、任せたぞ」。新主将へと、思いは受け継がれた。 (古川香菜子)