唯一4年生の池上にとってはこれが引退試合。笑顔で送り出そうとベンチを含め全員で戦った。チームを支え続けた先輩に日本一という最高の花束を贈ることができた。
日本では競技としてまだまだ発達段階のローラーホッケー。「立教の優勝が学生ロラホ界の盛り上がりにつながればうれしい」と池上。彼女たちの成し遂げた偉業は未来の学生ロラホの青写真として刻まれたはずだ。 (大山稜)
【相撲部】
小兵の意地ここにあり 坪井 全国学生 65kg未満級 日本一
感動をありがとう! エース・坪井(済4)が学生選手権大会65`未満級で自身初の全国優勝を果たした。入学以来の夢をかなえた彼の目には、涙が浮かんでいた。決死の努力の末、ラストイヤーに華を飾った彼に観客たちは惜しみない拍手を送った。
小さな大横綱
「入学してからの目標だったんです、全国優勝することが。」 試合後、坪井はやっと相好を崩した。
全国大会に出場するのは東西でベスト8に残った16人。強豪たちが一堂に会する中、坪井の表情は落ち着いていた。東日本の翌日には西日本大会が行われる大阪へ。敵のデータをかき集めて1週間研究を重ね、今大会に臨んでいた。
1回戦、相手の出方を見極めて引き落とし。続く2回戦では、土俵際まで追い詰められる危ない場面も。しかし、持ち前の筋力で体勢を整えて相手を押し出した。準決勝では上背のある相手に強烈な突き上げを食らわせ押し倒しで勝利。
迎えた決勝の舞台。「いけ! 大丈夫だ」 観客の声援も最高潮に。一方、仕切りをする土俵上は静寂に包まれた。相手は去年の覇者で今年も西日本で優勝している。緊迫の立ち合い。坪井はまっすぐ懐に飛び込もうとするが、相手にさっと身をかわされた。土俵際まで足がずるっと滑る。勝負あったか。しかし、向き直ってまわしをつかむと一方的に相手を土俵の外へ。
生まれて初めての全国制覇の決まり手は鮮やかな寄り倒しだった。
土の上にも四年
相撲との出会いは幼稚園児のときにテレビで見た大相撲。気付いたらとりこになっていた。「今どきの子では珍しいけれど、砂場で相撲を取っていました」と笑う。本格的に始めたのは中3の秋。やっと見つけた道場に自宅から2時間かけ通い詰めた。
高校や大学を選ぶときにも第一に考えたのは相撲。部員が少ない立大相撲部に入部すると、貴重な経験者としてすぐに活躍を期待される。エースとして団体戦では部に貢献するも、個人の目標である全国制覇にはなかなか及ばなかった。
転機は昨年の全国大会。2年連続75`未満級で3位に終わり、限界を感じる。階級を下げようと決心したことが功を奏した。
一見すると相撲をやっているとは思えない体格の坪井。彼のモットーは「小よく大を制す」 体格差をはねのけることが面白さだと語る。「小さくても努力で勝てることを示したい」
自分の活躍が軽量級の高校生に希望を与え、立大相撲部に興味を持ってもらうことをずっと願ってきた。主将として常に部を案じつつ、自身最大の目標を果たしきった坪井は最強の相撲人だ。 (築田まり絵)
【アメリカンフットボール部】
ルーツ校の夜明け 関東 1部 Aブロック 2位
古豪復活への第一歩だ。新体制下で猛練習に励んできた立大ラッシャーズ。その成果は、開幕4連勝、強豪・早大戦での見事な勝利として表れる。ルーツ校のプライドを感じさせる果敢な戦いぶりで秋季リーグ2位の好成績を収めた。
復活へのSoul
今シーズン、立大ラッシャーズは変革の時を迎えていた。2月から監督とコーチ陣を一新し、万全の布陣でリーグ戦を挑んでいく。新体制の中、ルーツ校の誇りと闘争心を掲げ目指すは「学生日本一」。 目標達成のためにも、選手が主体となり動くことが求められた。春のオープン戦では本来HCが行うプレーコールをQBに任せる一大決心を取り、選手たちの意識の底上げを行った。
自主性のある取り組みを続けるうちに、選手たちの学生日本一への気持ちが強固になっていく。高まる意識の下で立大は次々と勝利を重ね、全勝で迎えた第5節。相手は昨シーズン覇者、法大。
頂点へ立つために避けて通れない相手であり、この一戦に標準を定めていた。第4Qに1TDと1FGを決めブロック内で唯一2桁の得点をもぎ取るも、結果は10―45で敗北。悔しさをかみしめる一方で「残り0秒になるまで本気で全員が戦えた」(小川=文4)。
終始見られた、本気になって相手に食らいつく闘志。その精神を胸に、臨むは早大戦だ。昨年度ブロック2位の実力を持つチームであり一筋縄ではいかない。勝利のためにも「120%の力を出し切る」(坂口=コ3)ことが必要だった。
伝統校のPride
「圧倒します」。 主将の池尾(観4)が意気込んだ通りに、序盤から猛烈に攻めていく。エースRB茂住(異3)は強靭(きょうじん)なフィジカルを武器に相手ディフェンスを突破し、先制のTDを含め2TDを決めた。オフェンスの活躍に応えるようにディフェンスも奮闘。早大に得点の隙を与えず前半を無失点で抑え込んだ。
第3Qに入ると早大に連続でTDを奪われ、流れが相手に傾いていく。その中で、DB松原(現3)によるインターセプトがさく裂。勝利に対する強い思いが引き寄せた会心のプレーは立大に再び流れを呼び寄せた。
試合終了まで眼前の相手に全力でぶつかっていき、早大に対し15点差をつけての快勝。26年ぶりの勝利を収め、立大ラッシャーズ長年の歴史に新たな足跡を残した。
最終節の日体大戦でも相手を圧倒。ついにリーグ戦2位という快挙を成し遂げる。だが、「来年こそは学生日本一に」。
最終戦後、多くのサポーターが見守る中で池尾は宣言した。見据える先は甲子園ボウル制覇。4年生が体現してきたルーツ校の誇りは後輩たちに引き継がれる。学生フットボールの頂点を目指し、彼らはこれからも猛進し続ける。 (塩田将平)
"革新の体現者"
今年度主将に就任した池尾。コーチ陣との見解の相違や、理想の試合運びをする難しさから主将としてのあり方に悩み、フットボールも嫌いになりかけた。だが、日本一への強い思いと支えてくれる仲間の存在が彼を突き動かした。
がむしゃらなプレーと絶え間なくかけ続ける声。その姿にチームも感化され、みんながついてくる精神的な支柱と同期も高く評価するまでに成長した。
「ラッシャーズは家族。フットボールは俺にとって全て。」そうはにかむ池尾の背中はこの1年で一回りも二回りも大きくなった。
【拳法部】
積年の思い宿敵撃破! 玉木 全日本学生 30年ぶり ベスト 8
立教大学拳法部の主将が、30年ぶりの偉業を成し遂げた! 第29回全日本学生拳法個人選手権大会において、玉木直哉(現4)がベスト8入り。高校から7年間続けた競技人生を満足いく結果で締めくくった。
対峙
「勝ってやる」。 その思いが玉木を突き動かした。4年目にして初めてつかんだ快挙。ターニングポイントは、早大の主将・西野との戦いに競り勝ったことだった。
数日前から出ていた今大会の対戦表。試合前日は眠れないほど緊張していたが、勝利への執念で打ち勝つことができた。
西野と玉木は高校時代の同期。インターハイで頂点に輝き、当時からその名を全国にとどろかせていた実力者だ。そんな彼との大学入学後の対戦は、この春引き分けで終わったたったの1回。それでもビデオを手がかりに、昔から知り尽くしている強敵の特徴を分析して大会に乗り込んだ。
1回戦は得意の左フックと返し蹴りで勝利を収めると、続いて待ち焦がれた西野との対戦を迎える。ここで玉木は、じわりじわりと距離を詰めて積極的に組みにいく作戦を取った。相手の持ち味である突きや蹴りの打撃を封じることで、自分のペースに持ち込んだ。
緊迫した3分間に終止符を打ったのは玉木だった。残り10秒で素早く組んで倒すと、面突きを決めてついに1本を奪う。そしてそのままラストまで逃げ切った。宿敵を倒した喜びが、心の奥底からこみあげた。
原点
大金星を挙げた興奮が覚めやらない中、気持ちを切り替えてベスト8まで一気に駆け上がった玉木。栄光の原点は、大学入学時までさかのぼる。
4年前の春、拳法の名門校・清風高(大阪)からアスリート選抜で立大に入学する。高校からの経験者は同期内で自分だけ。当初は「少しなめていた」。 しかし練習初日に4年生の先輩に全くかなわず、悔しさをかみしめた。真剣に稽古に打ち込む日々が始まった。
去年の同大会では、胸筋断裂で無念の1回戦敗退。今年は最後のチャンスをものにするべく、さらなる練習を積んだ。ウエートトレーニングに本腰を入れ、出稽古にも積極的に通うように。少ない部員数を補い、練習内容を充実させた。
大学で競技を始める部員がほとんどの拳法部。経験者にとっては当たり前のことが理解してもらえず、もどかしさが募ることもあった。だが上級生になるにつれて自分の役割を自覚。相手の立場に立って周りを見渡すように努め、不器用ながらも部を引っ張ってきた。
最後まで自分を強くするための労力を惜しまなかった玉木。それに応える最高の結果が、拳法人生の終幕を華々しく飾った。 (永野伽那子)
"女拳士再び"
男子選手が試合会場で目立つ中、立大にはひときわ輝くヒロインの存在があった。女子のエースとして部をけん引してきた木金(観4)だ。練習相手の不足というハンディに加え、西日本のレベルに圧倒されたこともあった。しかし多くのけがにも打ち勝ち、昨年同大の強豪選手を破ったことが自身の成長を何よりも実感させる。逆境を乗り越えた彼女の放つ拳に、もう迷いはない。
【ボート部】
逆境はねのけ大きく“舞進” 全日本女子 シングルスカル 松本 5位
ボート部の日本一を決める全日本選手権。その大舞台で、立大の松本(観3)が魅せた。女子シングルスカルで5位入賞。新生ボート部を鼓舞する、最高の結果となった。
チャレンジャー
出場者の大半が実力者ばかりの今大会。そして大学入学後、初めてとなる個人競技での出漕(そう)だ。松本にとって厳しい船出となった。
初日は予選敗退となるも、敗者復活戦では順当に勝利。分岐点となったのは準決勝だった。目標の決勝進出は2位以上が条件。しかし予選で負けた堀田(大垣共立銀行)と再び対戦する。序盤から差をつけようと飛び出すが、後半で疲れが出てしまい3位。悔しい結果となるも順位決定戦へ向け気持ちを切り替えた。「もうやりきるしかない。死ぬ気で1位を目指す」。
強い思いで臨んだ最終日。準決勝の反省を生かしてスタートを短くし、力を加減していく。勝負の鍵となったのは中盤での漕(こ)ぎ。得意の粘り強さを発揮し首位を譲らない。しかしゴール直前、2位に僅差まで迫られる。その時「立教、ラスト?」 大声で叫ぶ仲間の声援が松本を後押しする。それに応えるようにゴールまで一気に漕ぎ抜けると、堂々の1位でレースを締めくくった。
「本当にこの結果はすごくうれしい」。 全日本総合5位は確実に彼女の自信へとつながる。しかしここまでの船旅は苦難の連続であった。
勝ち得たもの
不安だらけだった。今まで団体戦で出場してきた松本。しかし、常に寄り添ってきた同期の島津(コ3)がけがで欠場。今大会はシングルスカルでの出場を決意した。練習期間はたったの3週間、そこで全力を出すかどうかは自分次第。孤独との戦いだった。
それを乗り越えられたのは信頼する仲間の支えがあったから。アドバイスをくれるコーチの栗山(12年度卒)の存在や、必死に応援してくれる仲間がいる。彼女にとって力の源となった。
そして掴(つか)んだ今回の結果。今年度インカレ3位の久保(明大)に勝利したことや、さらには社会人とも互角以上に戦えることを確認できた。仲間からの称賛の声を聞くたびに喜びが込み上げてくる。一つ一つが松本にとっての自信となっていった。
「決勝まで行ける力は十分にある」と熊木監督(95年度卒)が言うように、確実な成長を遂げきている松本。シングルスカルに限らず、どの種目においてもそのポテンシャルを発揮できるはずだ。
そして来年はラストイヤーを迎える。課題の持久力を冬の間に養い、春には蕾を開花させる。真のエースとなって水面上で最高の輝きを放つ、そのために。(船越ゆかり)
"変化の時"
「インカレ決勝進出」。
それはこれまで立大が目標としてきたものだ。
そのために重要なのは基礎を固める冬のトレーニング。特に新主将・樋口(観3)が重要視しているのはチーム力の向上だ。従来の練習方法を一変し、男女、学年問わず練習することで意識の改革を図っている。「クルー以前に俺たちは立大ボート部」だから。
時には激しく意見がぶつかるが、納得するまで話し合う。樋口は部で一つのチームになること、同じ信念を持つことを目指しているのだ。全てはインカレ決勝進出のため。そして誓う。来春には「強い立教」に生まれ変わることを。