立教スポーツ第201号

<4月1日更新>
   

    
【スケート部フィギュア部門】  
甦った皇帝
中村 V
国体成年男子
 

 日本フィギュアスケート史に新たな名前が刻まれた! 国内外で活躍する有力が選手ひしめく第69回国民体育大会冬季大会で、中村健人(営4)が2位に大差をつけての優勝。苦難を乗り越えた末の華麗な演技は、観客の心を強く引きつけた。

覚醒
 会場の空気を変える圧巻の演技だった。重厚なピアノの余韻の中、中村はほっとした表情を見せる。そこには今季の不振をはねのけた達成感がこもっていた。  
  今年はフィギュアスケートに全てを注ぐため、大学を休学。ジャンプだけでなく、ステップやスピンにも力を入れて総合力に磨きをかけた。しかしそれを結果につなげられず、苦しい時期が続く。優勝を期待されていたインカレでも、本来の実力を発揮できず3位。「調子は良かったのに、どうして」と中村は思わぬ結果を嘆いた。
  振るわない成績の連続は焦りを生む。スケートがつまらない。何をしても上手くいかないのではないか。そんな思いに悩まされた。
  降りかかる苦難に耐えながらも、コーチと共に打開策を模索していく。目指したのは、限界への挑戦よりもミスのない滑り。練習通りの力を発揮しようという意識が芽生えた。演技に対する考え方が変わったことで心に余裕が生まれた。
  そうして迎えた国体は、中村が出場する今季最後の大舞台。「結果よりも自分ができることを」。揺るぎない信念を胸に、勝負を分かつ銀盤のステージに足を踏み入れる。
  1日目のショートプログラム。成功率の高いルッツジャンプを冒頭に入れたことが功を奏す。鮮やかに決めて勢いに乗り、要素を次々と成功させていく。長い長い辛抱がついに実を結んだ。歓声に包まれながら演技が終了。普段はクールな中村が、感極まりない力強いガッツポーズを見せた。

君臨
 フリースケーティングで使われる曲は、中村が自身と重なると語る「皇帝」。氷に乗ってからゆっくり時間を使い、自分のプログラムに意識を集中させる。ポーズをとるとすぐに音楽の世界に入り込んでいった。
  力強い和音と共に演技が始まる。最初の技はトリプルアクセルのコンビネーションジャンプ。美しい着氷で流れを作った。技巧を凝らしたステップも細やかに刻む。曲調が物憂げに変化していく中、自身が耐え抜いた試練を思わせるかのようにしっとりと滑った。ミスをしても最小限にとどめる。そしてクライマックスに近づくにつれ、中村の足取りも次第に軽やかになっていく。
  曲の盛り上がりが最高潮に達する。音楽が雄大に響き渡る中、中村の顔には笑みが浮かんだ。最後は安定感のあるスピンで観客の心を引き込みながらのフィニッシュ。過酷だった1年間を乗り越え、自らの復活を曲に合わせて見事に体現してみせた。
  結果は、シーズンベストを大幅に更新する226.65という高得点での優勝。「経験したことのない辛さだったが、長い目で見れば成長の多い一年だったと思う」と、中村はこれまでの道のりを振り返る。今季味わった多くの苦難は間違いなく彼を強くさせた。
  表彰台に立つ中村の表情は晴れ晴れしい笑顔に満ちあふれていた。「大きな大会で成長を見せることができた自分を誇りに思う」。会場から賞賛の拍手が降り注ぐ中、勝利の美酒に酔いしれる皇帝が気高くたたずんでいた。(渡邊菜緒)

 





【自転車競技部】
絶対王者へギアアップ! 高木 全日本学生RCS 総合 3位


  内に秘めたる熱い思いをペダルに込めた! 全日本学生ロードレース・カップ・シリーズ(以下RCS)にて、高木三千成(みちなり=理2)が堂々の3位。地道な努力が結実し、新たな目標に向けて確かな手応えを感じた。

 

掴んだ自信

 全国から強豪が集うRCS。年間全13戦で獲得したポイントの合計点で頂点を争われる。険しい山道から市街地まで多彩なコースが選手たちを待ち受ける、苦戦必至のシリーズだ。
  ロードレースは非常に奥が深い。風、気温、路面状態。全ての要素が結果に影響するため、臨機応変な走りが鍵を握る。高木は昨年の経験を生かし、レース状況を冷静に分析。長期戦に必要な精神力も場数を踏むことで培っていった。
  ターニングポイントとなった第6戦は総距離164`の過酷なコース。高木は昨年完走できなかった悔しさからレース本番を想定し、練習を積み重ねてきた。
  その努力が功を奏し、レースは序盤から好位置をマーク。リタイアする選手が続出する中、粘りの走りでトップ争いに食い込む。最後の上りでアタックを仕掛けた高木は先頭集団を振り切り、スパートをかけた。
  ゴールを間近にプロ選手・福島(NIPPO)との一騎打ちに持ち込むも、相手のスプリント力に圧倒され、敗北。それでも一流選手と張り合えたことは、彼の持ち味である積極的に攻める姿勢に自信をつける。

常勝へ
このまま勢いに乗るかと思われたが、シーズン中盤の大事な時期にまさかの故障。思うように練習できない日々が続く。「体は元気なのに…」。自転車に懸ける思いが人一倍強い分、もどかしさが一層募った。
  それでも悩んでいる暇はない。その日、その時に持てる力を出し切ろうと決めた結果、尻上がりに調子は回復。終盤の行田ラウンドでは安定したレース運びでポイントを伸ばし、最終戦での逆転優勝に望みをかけた。
  しかし、レースは雪の影響で異例の中止。順位を上げるチャンスを逃がし、3位という悔しさの残る幕切れとなった。
  この1年、つらくて苦しくて、何度も諦めそうになった。それでも応援してくれる人、一緒に走る選手の存在があったからこそ、高木はシーズンを笑顔で終えられた。
  彼の次なる目標はRCS年間王者だ。今シーズンは登坂力や持久力に磨きをかけたものの、苦手とするスプリントを克服できず、涙をのむことが多かった。「年間を通して勝ち続けないと」。どんなレースでも勝つことができるオールラウンダーに近づいたとき、表彰台の頂点は確かなものとなる。(平野美裕)

酷道を越えて
同大会を総合4位で終えた森田(文3)。主将として挑んだシーズンだったが、結果は満足のいくものではなかった。
  それでも悩んでいる暇はない。その日、その時に持てる力を出し切ろうと決めた結果、尻上がりに調子は回復。終盤の行田ラウンドでは安定したレース運びでポイントを伸ばし、最終戦での逆転優勝に望みをかけた。
  第1戦では得意のヒルクライムを制し、優勝。快調なスタートを切ったが、その後彼を待っていたのは度重なる敗北。一番の目標だったインカレでも完走できずに苦汁をなめた。
  彼の競技人生競技はこれで終わりでは決してない。過去には多くの大会で入賞した実力者。後輩の高木も尊敬する一人として名を挙げるほど。
  部を支えた彼も今春で引退の時を迎える。全身全霊をかけ、最後のレースへ――。苦しんだ経験は、無駄にはならない。

 




【ラグビー部】
濃紺の覇者、再出発! 対抗戦 Aグループ 昇格


  二度とあんな思いはしない――。昨年の誓いを胸に臨んだ入れ替え戦。古豪・日体大を打ち崩し、74ー17と大差での勝利。Aグループの舞台へと返り咲いた。

 

結実

 「一本筋があるチームができた」。 主将・木村(法4)はBグループを勝ち抜いてきた自らのチームをそう振り返った。  
  リーグ戦は他校を寄せ付けずに全勝で終える。昇格まであと一勝。最後に立ちはだかるのは日体大だ。今まで負け続けてきた因縁の相手だが、選手たちに臆する雰囲気は一切見られなかった。  
  運命の入れ替え戦、立大は上々の立ち上がりを見せる。キックカウンターからの先制トライ。それを皮切りに得点を重ねる。自信を裏付けるかのように果敢な攻めを展開した。そのまま流れをつかんだかのように思われたが、日体大も意地を見せる。重量フォワードの攻撃を前に立大は徐々に追い詰められていく。前半終了時、点差は2点にまで縮められていた。  
  日体大の追い上げムードに不穏な空気が漂う立大応援席。だが観客の不安をよそに、自らの地力を信じるフィフティーンに揺らぎはなかった。  
   まさに圧巻。後半は立大の独壇場だった。9本のトライで点差を突き離すと試合を完全に支配。日体大の反撃を許すことなく勝利を収めた。歓喜の涙を流す選手たち。今季積み重ねてきたものが実った瞬間だった。

 

根幹
 大団円で締めくくった木村組。だが昇格という最高の結果に至るまでには、昨春からの大胆なチーム改革があった。  
  変革の先駆けとして、監督をはじめとする首脳陣を一新。同時に、新時代の立大ラグビーが掲げられた。それは広くグラウンドを使い、攻撃を仕掛け続ける「アタッキングラグビー」だ。  
  これはまさに今季を象徴する言葉となる。今までディフェンスのチームと呼ばれてきた立大。そこに大きな転機をもたらした。そしてこのスタイルには、今回の入れ替え戦だけでなく、さらに先に見据えるものがある。  
  「上で勝ちきる力」。 過去には昇格こそすれどAグループ定着は果たせなかった。チームとして高みに上るための命題とも言える。全ては未来への布石。アタックの意識を徹底するべく、守るためのキックを封印することもあった。まだ見ぬ新境地を開くために。   
  変革の意志は確実にチームに浸透している。迷いのあるプレーが減り、アタックはより磨きがかかったものに。その成長が昇格を現実のものとした。さらなる飛躍を遂げる立大。常勝チームへの展望には、一片の曇りもない。   (加藤崇兵)

 



 

 


 
 






Copyright (C) 立教スポーツ編集部, All Rights Reserved.