【ボート部】
夏インカレへ 全力疾漕 松本 全日本軽量級 女子シングルスカル 4位
ボート界のエースが集う全日本軽量級選手権で松本愛理(えり=観4)が4位入賞。学生トップの座に登りつめ、確かな実力を見せた。厳しい船旅を経て大きく成長した彼女。次なる舞台へ向け力強く岸を蹴った。
船と友に
昨年の全日本選手権で5位入賞を果たし、自信をつけた松本。しかし、今回は新たな挑戦を迫られた。それは新艇でシングルスカルに出場すること。大会までの約1カ月、彼女は焦る気持ちを抑え、じっくり船と向き合った。
「予選通過さえ厳しいんじゃ…」。 新艇は今までの船とは勝手が違い、バランスを取ることも難しい。どれだけ練習してもスピードに乗れず、言うことを聞いてくれない船に悪戦苦闘の日々が続く。不安な気持ちをかき消そうと、とにかく練習を繰り返した。
そして迎えた今大会。準決勝では、全日本で敗北を喫した青山(関西アーバン銀行)との再戦。松本は序盤から積極的に仕掛け、先頭へ躍り出る。しかし、得意としている中盤でミスを連発。その度に後続との差が縮まるのが分かった。それでもなんとかリードを守りきり、格上相手に6秒差をつけ見事勝利。昨年の雪辱を果たし、不安な気持ちはすっかり消え去った。
決勝戦の相手は、日本代表を含む社会人の3選手。「チャレンジャーの気持ちで」。 気負うことなくレースに挑むが、相手はやはり手ごわかった。前との差に屈せず最後まで漕(こ)ぎきるも、結果は4位。メダルまであと一歩及ばなかった。「あの時もう少し攻めておけば――」。 悔しい思いがこみ上げた。
仲間と共に
シングルでの出場は本意ではなかった。それでも、日々自分自身と向き合う中で学んだことは多い。体力面で課題が残り、勝負所で全力を出しきれない。今まで気付かなかった、自分の甘さを思い知った。しかし、社会人と対等にレースができたことは、最後の夏に臨む彼女の大きな強みとなるはずだ。
2度目の学生トップに輝いた松本。しかし、その胸の内には秘めた思いがある。「もう一度クルーボートに乗りたい」。シングルでの孤独な戦いを通して、その思いは一層膨らんだ。みんなで声を掛け合い、喜びを分かち合う。仲間の存在を感じられるクルーボートが一番好きだと改めて実感した。
立大ボート部最大の目標である、インカレ決勝進出。しかし、松本はさらに上を目指している。「優勝したい」。シングルで感じた悔しさを、仲間とのクォドルプルにぶつける。リベンジを誓った。
頂点を狙うためには、艇を共にする後輩たちの協力が欠かせない。「自分の経験を伝えていけたら」と松本も後輩の指導に意欲的だ。それぞれが磨き上げてきた持ち味を集結させ、気持ちを一つにオールを漕ぐ。ラストレースに向け、すでに熱い戦いは始まっている。夏の大舞台で、最高の仲間と、最高の結果をつかむために。(平野美裕)