立大のエースが再び世界への挑戦を獲得した! 3位以内でユニバーアード出場が内定する第18回日本学生女子ハーフマラソン選手権大会において、出水田眞紀(いずみだ=コ2)が3位。積極的にレースを作る走りで勝負を決め、入学前から抱いていた目標である国際大会への出場権をつかんだ。
夢見た景色 誰もが驚く結果だった。「3位に入れてすごくうれしい」。 出水田は約21`にもわたる距離を、目標より1分半ほど早いタイムで完走。序盤からハイペースな展開となったが、強豪選手との激走を制した。
輝かしい結果とは対照的に、今大会は不安とともに開幕した。彼女にとってこれが初めてのハーフマラソン。その上、2月末に出場した福岡クロカンから中2週間、満足に練習ができない日々が続いた。完走への自信は十分ではなかった。
号砲が鳴ってからも暗雲は晴れない。引きずられるかのように、30人ほどの大集団の後方からスタート。さらに今年は出場選手の実力が高い。集団は5`を過ぎても崩れず、序盤から有利な位置で走れなかった。
不安が消え、大きな変化が訪れたのは?`地点を過ぎてからだ。集団が縦に伸びて崩れ出し、出水田は5人で構成される先頭集団の一角へと躍り出る。「焦らずにうまく自分の場所を確保できた」。 ユニバーシアード出場権獲得への望みが見えてきた瞬間だった。
希望を現実にするために出水田はさらにペースを上げる。手ごわい集団に対し揺さぶりをかけた。「ただ付いていくだけでなく、積極的なレースをしたい」。 彼女の強固な意思が前向きな走りを生み、他の選手を苦しめた。
目標の舞台に手が届くようになっても、限界まで記録を求め続けた。前を走る選手に離されても必死に食らいつく。「これが最後のタイムにもつながった」。 持ちうるすべての気力を使い切り学生3位でゴール。彼女が得たものは、輝かしいタイムと誰よりも望んだユニバーシアードへの出場権。それは長い間夢見た栄誉だった。
代表の誇り 「1年で世界ジュニア、2年でユニバーシアード出場」。 自分の未来を心に思い描く者は多々あれど、それを実現できる者はごく少数だ。昨年の世界ジュニアに続いて、出水田はまたも目標を実現させた。
これまで多くの大会で輝かしい記録を残した彼女にとっても、この結果は特別な響きを持つ。2年に1度開催され"学生のオリンピック"とも称される国際大会。この大会に内定されることは彼女にとって、入学前から抱いていた大きな目標であった。
夢を叶え、日本代表のスーツに袖を通して頬を緩ませた出水田。本紙の一面を飾った際は、他人に見せることをためらうほど照れていた。競技中とは違う柔らかい表情も、彼女の魅力の一つである。
一方で気持ちをコントロールし、大舞台においても物おじしない強さも併せ持つ。その強さを培ってきたのは多くの遠征だ。国内外の選手と交流し、視野を広げてきた。「レベルの高い選手たちと共に走れるのはうれしい」。 それは彼女が成長する原動力となる。
出水田のモットーは、見ていて楽しい走りをすることだ。そうした姿勢こそが望み通りの結果を生むと彼女は考える。そのために、レースを引っ張り、主導権を握ることができる選手を目指している。
ユニバーシアードにおいても、その思いは変わらない。「楽しい走り」の先にあるのは、ハーフマラソン団体の部での優勝。各選手の順位に応じた得点の合計で競うこの競技で日本は毎回メダルを獲得している。「日本チームみんなでレースを作っていきたい」。 彼女の視線のかなたには、新たな未来が無限の広がりを見せている。(吉田健人)
【自転車競技部】 ペダルで駆けた思い 高木 全日本学生RCS 総合3位
立大自転車競技部が誇るロードレーサー高木三千成(みちなり=理4)が、全日本学生ロードレース・カップ・シリーズ(以下RCS)において2年連続で3位を獲得! エースの変わらぬ実力は、今年も確かに証明された。
険道
全国のロードレーサーが1年間戦い抜き、総獲得ポイントで頂点を決めるRCS。昨年3位の高木は雪辱を果たすべく優勝を狙う。強敵たちと戦う刺激は原動力となり彼を奮起させた。
全国各地を飛び回りポイントを重ねていく。シリーズ中盤の第8戦は得意な山岳レース。しかし体調不良から不本意な結果に。自分の甘さが招いた結果を高木は許せなかった。落としたポイントは取り返さなければいけない。抱えきれぬ不安を胸に、2連戦となる第9戦を迎える。
社会人も参戦するレベルの高いレースで冷静に自分のペースをつくることに成功。前日の不調は見る影もない。スパートが決まらず2位となるも、久しぶりの表彰台は大きな自信となった。その後の試合では安定したレースで3位を死守。優勝への望みをつなげた。
小雨に煙る神宮最終戦。今までの努力は難易度の高いコースへの恐れもなくした。勢いを武器に中間スプリント地点を1位で通過。悲願の優勝に期待がかかった。激しい頂上争いはさらに熱を増し終盤へ。しかし悲劇は起こる。前方選手の落車に巻き込まれた高木は転倒。ゴール目前、王者への道は絶たれた。
至道 「1年間楽しかった」。 目標を果たすことのできなかった高木。しかし彼は意外にも晴れやかな表情で言葉を口にした。
昨シーズン後、彼は自らの走りと改めて向き合い取り組みを一新する。基本となる体づくりも、食生活から見直した。より高みを目指して、朝早くから社会人選手とも練習。妥協が許されないレベルの高い環境や精神面で相談に乗ってくれる選手の存在は大きな支えとなった。
不断の努力は花開く。世界のトップ選手たちがしのぎを削る、憧れの2014ツール・ド・フランスさいたまクリテリウムの出場権も獲得した。RCSでは目標を果たせず、涙をのんだ高木。しかし一方で確実に成長した1年でもあった。彼は自転車競技を極められた充実感に満ちていた。
常に至高を追い求め、走り続けてきた高木にも引退が刻一刻と迫っている。学業との両立が練習に厳しい制約をつくる中、彼は昨年を超える、高い目標を掲げた。「インカレで必ず10位以内に入る」。 何よりも好きな自転車競技にこれからも一意専心していく。最高の走りにたどり着くまで、彼が戦線から降りることはない。(伊藤太一)
【器械体操部】 舞い降りた新鋭 桑村 新体操 東日本インカレ 個人総合 V
立大器械体操部の期待の新星・桑村美里(社1)が電撃デビュー! 昨年度インハイ4位の実力を持つ彼女が圧の演技で優勝を勝ち取った。東日本インカレでその力を見せつけ、インカレへの出場権を獲得した。
ヒロイン誕生
つい数カ月前まで高校生だった桑村。東日本インカレは「立大」という看板を背負って臨む初の大会である。自分の演技がどう評価されるのか、不安はあった。
今大会は2日間で4種目の合計点数を競う。1日目はフープとボール。それぞれの種目で曲調と衣装を変え、明るさと強さで演技に表情を持たせる。一番の課題であったボールは滑らかに、流れるような身のこなしで演じきった。初日終了の時点で堂々の単独1位。「完璧に近い演技を」と翌日に向け気持ちを高める。
2日目は高校から磨き上げてきた種目、リボンとクラブだ。小柄な桑村が6mのリボンを回しながら図形を描くことは決して容易ではない。だが、これまでの経験を生かし、しっとりと優美な大人の自分を表現。「一番良い演技だった」。観客の視線をくぎ付けにした彼女は満足の表情を浮かべる。強豪選手でも得点を伸ばすことが難しい中で唯一の全種目15点台をマーク。種目別を制し、完全優勝を成し遂げた。
入学後初の大会ながら、他を寄せ付けない圧巻の演技を披露した彼女。そんな輝かしい功績の裏には、勝利への強い思いがあった。
憧れた姿
初めは遊び半分だった新体操。だが、所属するクラブの上級生が舞う姿に憧れを抱く。「あんな風になりたい」。彼女の心は動かされた。信頼するコーチとの出会いを契機に、新体操への思いは強くなる。ついにインハイ4位の結果を残す選手へと成長した。
しかし、順調な競技人生を歩む彼女の前に壁が立ちはだかる。今大会の3週間前に行われた、ユニバーシアードの出場権を争う代表決定戦。今年度からボールの演技構成を一新し、幾度となく練習を重ねた。そんな自信を持って臨んだ種目で痛恨のミス。インカレ覇者の三上(東女体大)に惜しくも代表の座を奪われてしまった。
この時味わった悔しさが、彼女に今大会優勝をより強く意識させることになった。目標達成に向けひたむきに練習に励む。その努力が実を結び、大会連覇のかかる三上に、見事雪辱を果たした。
夏に迫るインカレ。自信をつけた桑村は、華の大舞台で再び大きく舞う。頭のてっぺんから爪先まで全身に思いを込めて――。その姿は多くの人の目を奪うことだろう。そして今度は彼女が夢を与える番。かつて、彼女の心を魅了した選手のように。(荒木地真奈)
|