「112安打」。これは大城が4年間で積み上げた数字だ。90年の東京六大学リーグ史上、通算100安打を達成した者は彼を含めて31名しかいない。
3年秋までは破竹の勢いで94本を放った。しかし、今春100安打を目前に3試合無安打と不振に陥る。記録への重圧がかかる中、100安打目を左翼席への本塁打で飾った。
そこからは記録への挑戦だった。当時の立大記録は63年前に篠原一豊氏(52年度卒)が残した111安打。大城は学生生活の最後にその壁を見事に打ち破り、立大史上最高のヒットメーカーとして神宮の地を後にした。
甲子園春夏連覇。立大最多安打記録更新。これらの功績を引っ提げて大城はプロ野球界へと飛び込む。新たな舞台でも快音を響かせてくれることだろう。
【洋弓部】
史上最大の番狂わせ 大貫 全日本選手権 銀
衝撃の逆転劇で全日本2位の座を射抜いた! 日本アーチェリー界を代表する強者が集う今大会で、大貫渉(済3)が準優勝。これまで大舞台で実力を発揮できずにいた彼。格上選手を次々に打ち破り、成長の証しを存分に示した。
起死回生
どん底からのスタートだった。ナショナルチームの選考会を兼ねて行われた予選ラウンド。トータル660点以上、かつ上位3位以内が条件だ。代表入りの自信を持って臨んだものの、結果はまさかの29位。気持ちが先走り、修正点さえ見出せぬまま予選を通過した。
決勝ラウンドは苦手なトーナメント戦。直近のインカレでは1回戦で格下選手に敗れ、もろさを見せた。同じ失敗を繰り返さないため、インターバルで練習を重ねて気持ちを切り替える。「今までの自分を取り戻す」。そう意気込んで、大貫は勝負の時を待った。
快進撃はここから始まる。初戦の相手は前回大会優勝者の河田(広島・佐伯高)。自分の全てを出さなければ勝てない敵を前に、予選と打って変わりリラックスした射を見せる。互いに譲らぬ一進一退の攻防の末、見事難敵を撃破した。
波に乗った大貫は危なげない試合運びで、順調に勝ち進む。準決勝は学生最強の呼び声高い鬼山(近大)との対戦。得点が伸びず、窮地に立たされるも相手のミスに救われる。勝利の女神を味方に付け、ついに日本一を決める戦いへ。
頂上決戦
全日本決勝。それは、大貫にとって未知の舞台だ。対するは、ロンドン五輪銀メダリストの古川(近大職員)。日本アーチェリー界のエースとの決戦が幕を開けた。
経験したことのない緊張感が会場を包む。「自分はうまい」。そう自らに言い聞かせ矢を放つ。攻めの射で第1セットを先取。そのまま優位に試合を運び、絶対王者をあと一歩まで追い詰める。
「勝ったと思った」。一瞬の気の緩みから、日本一の栄冠は遠のく。健闘むなしく、逆転負けを喫した。
準優勝の結果に大貫は充実の表情を浮かべた。「まさかの全日本2位、素直に嬉しい」。飾らない言葉で、自身の喜びと達成感を表した。
古川との戦いを経て、大貫はオリンピアンとの差を実感した。「自分はまだまだ小さい」。ここぞの場面の集中力。敗因であると同時に、今後の飛躍の鍵となる。
今大会で唯一逃したもの。それはナショナルチームの参加資格だ。次は室内アーチェリーで世界を狙う。学生での代表入りはこれが最後のチャンス。胸に輝く銀のメダルは未来を明るく照らし出す。 (柏本晴也)
【馬術部】
至上のグランドフィナーレ 石栗 史上初 全日本学生 V
創部史上初の大偉業! 石栗里美(済4)が全日本学生馬術選手権で頂点をつかんだ。圧倒的な実力で、積年の思いを果たした彼女。4年間の集大成を最高の形で飾った。
謙虚に
「本当に良かった」。試合後、石栗は顔をほころばせた。入学時から求め続けた頂点。戦後初の偉業には多くの期待を背負う自身との戦いがあった。
連覇が懸かった今夏の関東学生選手権。優勝をつかんだのは石栗の背中を追っていた後輩・浦野(済3)だった。敗因はプレッシャーのあまり見栄を張り自分の納得いく演技ができなかったこと。馬術歴10年にして己の未熟さを実感した。
しかし落ち込んでばかりはいられない。全日本へ向けて彼女は心機一転、どんな馬も乗りこなせるように練習を重ねた。格好つけず謙虚に。ただひたすら馬と愚直に向き合った。
そして迎えた今大会、舞台は北海道。普段と異なる広大な景色が彼女の気持ちを和ませた。1回戦では気性の荒い馬を乗りこなし、2位以下に大差をつけ順調に突破。しかし、続く2回戦で早くも山場が訪れる。前の選手がそつなくコースを回る中石栗の番で馬に疲れが見え始めていた。「とにかく集中」。ここ一番の緊張感の中、慎重に経路を踏む。馬の不調に屈せず人馬一体となり、見事この苦境を乗り切った。
時は満ちた
準決勝からはそれまでの馬場馬術に加え、障害飛越も行われる。前日までの勢いをそのままに、馬と息を合わせる丁寧な乗馬で首位へ。ついに念願の大舞台へ駒を進めた。
準決勝の倍の走行が求められる決勝戦。連戦の疲労で精神力が奪われる上、冷たい雨で体力も限界まで削られていた。それでも信念は突き通す。「やれることはやる。できないことはできない」。馬も自分も楽しむ。今できる最善の演技を見せるだけ。ノーミスでゴールしたその瞬間、客席から歓声が湧き上がった。大きく成長した彼女の姿がそこにはあった。
4年間を振り返るとたくさんの感謝があった。支えてくれた両親、馬術部、他大の選手。誰より「お前の番だ」と背中を押してくれた監督。共に全国女王の座を追い求めながら、いつも熱く指導してくれた。
「ライバルは自分」。等身大の演技で自身に打ち勝ち、大学4年間に終止符を打った石栗。しかし、卒業してからも舞台を変え馬術に関わっていくつもりだ。立大に新たな歴史を刻んだ女王は自分を信じ、これからも駆けてゆく。 (西村南海子)
【スケート部スピード部門】
新鋭、氷の道を駆け上がる! 渡邉 日本学生1000M1500M 二冠
ニューエースの誕生だ!学生トップの座を争うインカレの舞台で、渡邉瑠(済1)が躍動。千五百b、千bの両種目を見事優勝で飾り、その名をとどろかせた。
有言実行
「自分でもびっくりというか本当にうれしい」。優勝を目指して臨んだインカレで、千五百bと千b共に制覇。完璧な目標の達成に驚きを隠せなかった。
2週間前に行われた全日本距離別では緊張から思うようなレースができず、悔しい思いをした。今大会では力を最大限に発揮するため、強い気持ちを持って2日間の戦いに挑んだ。
大会1日目、渡邉は得意の千五百bに出場。アップ不足による不調から、予選では満足のいくレースができない。しかし、試合を重ねることで調子を取り戻し、準決勝を通過した。
積極的に先頭に立ち、レースを引っ張ることを得意とする渡邉。決勝でも、序盤からハイペースで集団に重圧をかける。中盤でさらに加速し、その勢いで前方選手を内側から抜き去る。残り3周でトップに立つと、後続の追い上げを振り切り、1位でフィニッシュ。「本来の自分のレースができた」と本人も納得の優勝を飾った。
2日目は千b準々決勝のレースから始まる。前日に行われた予選から好調をキープし、準々決勝と準決勝を通過。落ち着いた滑りで決勝へと駒を進めた。
大一番
ここでも渡邉は冷静だった。決勝メンバーに同じ先行逃げ切り型の選手が多いことを考え、「後ろから追い上げるレースをしよう」。選んだのは、普段とは違う戦法。勝ちへの執念が生んだ決断だった。静かに闘志を燃やし、リンクへと向かう。
試合が始まると、レースは予想通り序盤からハイペースで展開する。渡邉は終盤のスパートに向けて力を温存し、後方で控える。ラスト2周で一気に加速を始め、外側から選手を追い抜き2位に浮上。首位に立つ齋藤慧(神大)の後ろにぴたりと付く。チャンスを待つ中、ついにその時がやって来た。
最後の直線。齋藤が一瞬外側に膨らみ、インコースが空く。「今だ!」。わずかな隙をものにする。最終コーナー手前で内側から抜き去り、逆転。今大会2度目の優勝を決め、氷の上で喜びを爆発させた。
インカレ2種目制覇を成し遂げた渡邉。だが、あくまでもここは一つの通過点でしかない。目指すのは、全国や世界で通用する選手。今大会の経験を糧に新たな高みを見据える。まだ見ぬ栄光を求めて。彼の物語は始まったばかりだ。(上田颯人)
【水上スキ―・モーターボート部】
再び響いた勝ち歌 インカレ 男子総合 連覇
立大が日本一に再び輝いた!秋田の地で行われたインカレ。3種目の合計得点によって団体戦が競われる。立大勢は新記録を連発し、昨年に続く快挙を果たした。
突き進む
部員たちが一斉に水の中へ飛び込んでいく。それは日本一をつかんだ者しか味わえない歓喜の時。水しぶきが舞い上がる中、インカレ連覇を果たした彼らは、はじける笑顔を見せた。
3日間にわたる大会はトリックから幕が上がった。1番手の弘末(社4)が自己ベストの得点でチームを勢いづける。その弘末をライバルと呼ぶ浦田(済4)が続いて登場。「完走したイメージしかなかった」。 学生で唯一彼にしかできない大技を決め、自身が持っていた学生記録を更新。トップに立ち、幸先の良い滑り出しを見せる。
朝日が照りつける中、2日目スラロームが始まる。いよいよ、主将・長友(営4)の出番。目標を大きく上回り、立教新記録の滑りを見せる。総合1位の座を死守し、最終日に臨んだ。
残すはジャンプのみ。前日に準優勝で、大会を終えた女子の悔しさを背負っての戦いだった。そして最終ジャンパー笠原(コ4)。 今夏、日本記録保持者に直接指導を仰ぎ、実力と自信をつけてきた。その結果は自己ベストを大きく上回る大ジャンプ。21年ぶりのインカレ記録更新に歓声が湧き起った。この瞬間全種目で1位となり、昨年に続く完全優勝を成し遂げた。
支えられて
チームメートが滑り終え戻ってくるたび、第一応援歌を歌い健闘を称え合う。その中に、感極まり涙を流す長友の姿があった。「優しすぎる主将」(笠原)。 涙もろく、人柄のいい彼の性格を物語っていた。
歴代最多の部員数となった立大。長友は「全員で勝ちにいく」という意思を持ち続け、一人一人のことを誰よりも考えてきた。だからこそ「彼のためにみんなが頑張ろうという気持ちになった」(高田=コ4)。 彼の人間性にチームは感化されていった。
一番近くで支えてくれたのは、今まで個人で練習してきた彼にとって、「最初で最後の同期」たち。つらいときも、心強い言葉を掛けてくれた。不安しかなかった彼を後押した頼もしい存在だった。
「色々な人たちに支えられ強くなった4年間」(長友)。 支えてくれた全ての人たちに優勝という形で恩返しを。誰からも愛された主将は、感謝を胸にチームを日本一へと導いた。
主力だった4年生が引退したが、来年のインカレに向け立大は歩みを止めることはない。今年、惜しくも届かなかったアベック優勝のために。彼らが目指すものはただ一つ。男女で強い立教へ――。(田代菜実)
あと一歩届かず準優勝
連覇を果たした男子の一方で、惜しくも準優勝に終わった女子。トリックで高得点を出すも他の種目で本来の実力を発揮し切れず、彼女たちの目には悔し涙が浮かんでいた。
試合後「もう少し、実力を出せたら」(木村=文4)と唇をかみしめた。それでも切磋琢磨(せっさたくま)し合える多くの仲間、指導してくれるOB・OGの存在が彼女たちを大きく成長させた。今回の経験を通して、彼女たちは勝利以上に大事な何かを得た。