立教スポーツ第210号

<12月3日更新>
   

    
【野球部】  
6年ぶり! 待望のプロ野球戦手
球界を駈ける猛牛となれ!!
大城 オリックス ドラ3
 

 新たな野球人生を走り出す! 2015年プロ野球ドラフト会議において、大城滉二(コ4)がオリックス・バファローズから堂々の3位指名。立大からは6年ぶり、内野手としては27年ぶりの快挙だ。彼の輝ける立大野球部での4年間は、確かにプロ野球界へとつながっていた。

追球の足跡
  「プロなんて全然考えてなかったです」。 ただ純粋に自分の野球を追求するために、立教大学野球部の門を叩いた。甲子園優勝メンバーの実力を買われ、1年春から出場機会を獲得。秋にはベストナインに選出されるなど高校時代の名声にたがわぬ大活躍。その名を瞬く間に大学球界へ知らしめる、鮮烈なルーキーイヤーとなった。
  転機が訪れたのは、その翌年。自身初となる侍ジャパン大学代表に招集され、ドラフト候補生を含む大学トップクラスの選手たちとプレーを共にした。2年生にして経験した学生最高峰の舞台。その中で目の当たりにした本気でプロを目指す彼らの姿が、大城の心を動かした。
  当時、2年間でリーグ通算60安打。大学通算100安打の大台を狙える位置にいた自らの実力と、彼らを照らし合わせ、「自分もプロを目指したい」と決意。縁遠いと感じていた世界が、彼の目標へと変わった。
  それでも、「自然体」で淡々と結果を残し続けるスタイルは変わらない。3年目のシーズンが終わる頃には、5季連続の打率3割を達成。自身2度目のベストナインに選出されるなど、充実の1年を送った。プロ入り確実か――。周囲の期待も一層高まっていった。
  しかし、最後の1年は苦難の年となった。今春に自身初の打率2割台を経験し、ラストシーズンの秋も前半戦でわずか6安打。さらにドラフトが近づくにつれ、さすがの大城も重圧にのまれてしまう。初めて感じる「眠れない」程の緊張感は、彼にとってそれだけプロへの思いが強くなっていたことの表れだった。

球道の勲章
  会議当日、寮内の会見室には多くの報道陣が詰めかけた。大城はもちろん、同席した部員も緊張の面持ち。中継画面を見つめながら、栄光と苦悩いずれも味わった大学4年間が去来する。自分の野球人生はどのような評価を受けるのか、祈るような思いで指名を待つ。そして会議開始から約2時間、ついに待ち焦がれた時が訪れた。
  「大城滉二、立教大学」。 オリックス・バファローズの3巡目。「目標」に手が届いた瞬間だった。歓喜に沸くチームメートの中で、一つ息をつき胸をなで下ろす大城の姿。この日、新たなプロ野球選手が誕生した。
  「本当にうれしく思っています。ホッとした気持ちと同時に正直驚いている気持ち。この結果も沖縄の家族や友達、一緒に戦ってきたチームメート、監督のおかげだと思っています。今日からはぐっすり眠れそうです」。
  4年間で磨き上げた打撃センス、堅実な守備、抜群の走塁技術。走攻守、3拍子そろった即戦力としての指名は、大城という野球人が確かに認められた証しだ。「野球をやってきた中で、一番成長できた4年間でした」。 
  2日後の東大1回戦。重圧から解き放たれた彼の、第1打席。華麗に左前へ放った打球は、立大記録更新となる通算112本目の安打。待望のプロ野球選手は、“立大一”の選手としてその名を残した。「長く活躍できる選手になりたい」と抱負を語った大城。これからはプロとして、新たな挑戦の日々が始まる。   (唐澤大)



立大新記録への道のり
  「112安打」。これは大城が4年間で積み上げた数字だ。90年の東京六大学リーグ史上、通算100安打を達成した者は彼を含めて31名しかいない。
  3年秋までは破竹の勢いで94本を放った。しかし、今春100安打を目前に3試合無安打と不振に陥る。記録への重圧がかかる中、100安打目を左翼席への本塁打で飾った。
  そこからは記録への挑戦だった。当時の立大記録は63年前に篠原一豊氏(52年度卒)が残した111安打。大城は学生生活の最後にその壁を見事に打ち破り、立大史上最高のヒットメーカーとして神宮の地を後にした。
  甲子園春夏連覇。立大最多安打記録更新。これらの功績を引っ提げて大城はプロ野球界へと飛び込む。新たな舞台でも快音を響かせてくれることだろう。                   





 

【洋弓部】
史上最大の番狂わせ 大貫 全日本選手権 銀


  衝撃の逆転劇で全日本2位の座を射抜いた! 日本アーチェリー界を代表する強者が集う今大会で、大貫渉(済3)が準優勝。これまで大舞台で実力を発揮できずにいた彼。格上選手を次々に打ち破り、成長の証しを存分に示した。

起死回生
  どん底からのスタートだった。ナショナルチームの選考会を兼ねて行われた予選ラウンド。トータル660点以上、かつ上位3位以内が条件だ。代表入りの自信を持って臨んだものの、結果はまさかの29位。気持ちが先走り、修正点さえ見出せぬまま予選を通過した。  
  決勝ラウンドは苦手なトーナメント戦。直近のインカレでは1回戦で格下選手に敗れ、もろさを見せた。同じ失敗を繰り返さないため、インターバルで練習を重ねて気持ちを切り替える。「今までの自分を取り戻す」。そう意気込んで、大貫は勝負の時を待った。
  快進撃はここから始まる。初戦の相手は前回大会優勝者の河田(広島・佐伯高)。自分の全てを出さなければ勝てない敵を前に、予選と打って変わりリラックスした射を見せる。互いに譲らぬ一進一退の攻防の末、見事難敵を撃破した。
  波に乗った大貫は危なげない試合運びで、順調に勝ち進む。準決勝は学生最強の呼び声高い鬼山(近大)との対戦。得点が伸びず、窮地に立たされるも相手のミスに救われる。勝利の女神を味方に付け、ついに日本一を決める戦いへ。

頂上決戦
  全日本決勝。それは、大貫にとって未知の舞台だ。対するは、ロンドン五輪銀メダリストの古川(近大職員)。日本アーチェリー界のエースとの決戦が幕を開けた。
  経験したことのない緊張感が会場を包む。「自分はうまい」。そう自らに言い聞かせ矢を放つ。攻めの射で第1セットを先取。そのまま優位に試合を運び、絶対王者をあと一歩まで追い詰める。
  「勝ったと思った」。一瞬の気の緩みから、日本一の栄冠は遠のく。健闘むなしく、逆転負けを喫した。
  準優勝の結果に大貫は充実の表情を浮かべた。「まさかの全日本2位、素直に嬉しい」。飾らない言葉で、自身の喜びと達成感を表した。
  古川との戦いを経て、大貫はオリンピアンとの差を実感した。「自分はまだまだ小さい」。ここぞの場面の集中力。敗因であると同時に、今後の飛躍の鍵となる。
  今大会で唯一逃したもの。それはナショナルチームの参加資格だ。次は室内アーチェリーで世界を狙う。学生での代表入りはこれが最後のチャンス。胸に輝く銀のメダルは未来を明るく照らし出す。   (柏本晴也)

 




【馬術部】
至上のグランドフィナーレ 石栗 史上初 全日本学生 V


  創部史上初の大偉業! 石栗里美(済4)が全日本学生馬術選手権で頂点をつかんだ。圧倒的な実力で、積年の思いを果たした彼女。4年間の集大成を最高の形で飾った。

 

謙虚に

  「本当に良かった」。試合後、石栗は顔をほころばせた。入学時から求め続けた頂点。戦後初の偉業には多くの期待を背負う自身との戦いがあった。
  連覇が懸かった今夏の関東学生選手権。優勝をつかんだのは石栗の背中を追っていた後輩・浦野(済3)だった。敗因はプレッシャーのあまり見栄を張り自分の納得いく演技ができなかったこと。馬術歴10年にして己の未熟さを実感した。
  しかし落ち込んでばかりはいられない。全日本へ向けて彼女は心機一転、どんな馬も乗りこなせるように練習を重ねた。格好つけず謙虚に。ただひたすら馬と愚直に向き合った。
  そして迎えた今大会、舞台は北海道。普段と異なる広大な景色が彼女の気持ちを和ませた。1回戦では気性の荒い馬を乗りこなし、2位以下に大差をつけ順調に突破。しかし、続く2回戦で早くも山場が訪れる。前の選手がそつなくコースを回る中石栗の番で馬に疲れが見え始めていた。「とにかく集中」。ここ一番の緊張感の中、慎重に経路を踏む。馬の不調に屈せず人馬一体となり、見事この苦境を乗り切った。


時は満ちた
 準決勝からはそれまでの馬場馬術に加え、障害飛越も行われる。前日までの勢いをそのままに、馬と息を合わせる丁寧な乗馬で首位へ。ついに念願の大舞台へ駒を進めた。  
  準決勝の倍の走行が求められる決勝戦。連戦の疲労で精神力が奪われる上、冷たい雨で体力も限界まで削られていた。それでも信念は突き通す。「やれることはやる。できないことはできない」。馬も自分も楽しむ。今できる最善の演技を見せるだけ。ノーミスでゴールしたその瞬間、客席から歓声が湧き上がった。大きく成長した彼女の姿がそこにはあった。
  4年間を振り返るとたくさんの感謝があった。支えてくれた両親、馬術部、他大の選手。誰より「お前の番だ」と背中を押してくれた監督。共に全国女王の座を追い求めながら、いつも熱く指導してくれた。
  「ライバルは自分」。等身大の演技で自身に打ち勝ち、大学4年間に終止符を打った石栗。しかし、卒業してからも舞台を変え馬術に関わっていくつもりだ。立大に新たな歴史を刻んだ女王は自分を信じ、これからも駆けてゆく。 (西村南海子)  

 




【スケート部スピード部門】
新鋭、氷の道を駆け上がる! 渡邉 日本学生1000M1500M 二冠


  ニューエースの誕生だ!学生トップの座を争うインカレの舞台で、渡邉瑠(済1)が躍動。千五百b、千bの両種目を見事優勝で飾り、その名をとどろかせた。

 

有言実行

  「自分でもびっくりというか本当にうれしい」。優勝を目指して臨んだインカレで、千五百bと千b共に制覇。完璧な目標の達成に驚きを隠せなかった。  
  2週間前に行われた全日本距離別では緊張から思うようなレースができず、悔しい思いをした。今大会では力を最大限に発揮するため、強い気持ちを持って2日間の戦いに挑んだ。  
  大会1日目、渡邉は得意の千五百bに出場。アップ不足による不調から、予選では満足のいくレースができない。しかし、試合を重ねることで調子を取り戻し、準決勝を通過した。  
  積極的に先頭に立ち、レースを引っ張ることを得意とする渡邉。決勝でも、序盤からハイペースで集団に重圧をかける。中盤でさらに加速し、その勢いで前方選手を内側から抜き去る。残り3周でトップに立つと、後続の追い上げを振り切り、1位でフィニッシュ。「本来の自分のレースができた」と本人も納得の優勝を飾った。  
  2日目は千b準々決勝のレースから始まる。前日に行われた予選から好調をキープし、準々決勝と準決勝を通過。落ち着いた滑りで決勝へと駒を進めた。

 

大一番

  ここでも渡邉は冷静だった。決勝メンバーに同じ先行逃げ切り型の選手が多いことを考え、「後ろから追い上げるレースをしよう」。選んだのは、普段とは違う戦法。勝ちへの執念が生んだ決断だった。静かに闘志を燃やし、リンクへと向かう。   
  試合が始まると、レースは予想通り序盤からハイペースで展開する。渡邉は終盤のスパートに向けて力を温存し、後方で控える。ラスト2周で一気に加速を始め、外側から選手を追い抜き2位に浮上。首位に立つ齋藤慧(神大)の後ろにぴたりと付く。チャンスを待つ中、ついにその時がやって来た。
  最後の直線。齋藤が一瞬外側に膨らみ、インコースが空く。「今だ!」。わずかな隙をものにする。最終コーナー手前で内側から抜き去り、逆転。今大会2度目の優勝を決め、氷の上で喜びを爆発させた。  
  インカレ2種目制覇を成し遂げた渡邉。だが、あくまでもここは一つの通過点でしかない。目指すのは、全国や世界で通用する選手。今大会の経験を糧に新たな高みを見据える。まだ見ぬ栄光を求めて。彼の物語は始まったばかりだ。(上田颯人)  

 




【水上スキ―・モーターボート部】
再び響いた勝ち歌 インカレ 男子総合 連覇


  立大が日本一に再び輝いた!秋田の地で行われたインカレ。3種目の合計得点によって団体戦が競われる。立大勢は新記録を連発し、昨年に続く快挙を果たした。

 

突き進む

  部員たちが一斉に水の中へ飛び込んでいく。それは日本一をつかんだ者しか味わえない歓喜の時。水しぶきが舞い上がる中、インカレ連覇を果たした彼らは、はじける笑顔を見せた。   
  3日間にわたる大会はトリックから幕が上がった。1番手の弘末(社4)が自己ベストの得点でチームを勢いづける。その弘末をライバルと呼ぶ浦田(済4)が続いて登場。「完走したイメージしかなかった」。 学生で唯一彼にしかできない大技を決め、自身が持っていた学生記録を更新。トップに立ち、幸先の良い滑り出しを見せる。
  朝日が照りつける中、2日目スラロームが始まる。いよいよ、主将・長友(営4)の出番。目標を大きく上回り、立教新記録の滑りを見せる。総合1位の座を死守し、最終日に臨んだ。
  残すはジャンプのみ。前日に準優勝で、大会を終えた女子の悔しさを背負っての戦いだった。そして最終ジャンパー笠原(コ4)。 今夏、日本記録保持者に直接指導を仰ぎ、実力と自信をつけてきた。その結果は自己ベストを大きく上回る大ジャンプ。21年ぶりのインカレ記録更新に歓声が湧き起った。この瞬間全種目で1位となり、昨年に続く完全優勝を成し遂げた。  

 

支えられて
  チームメートが滑り終え戻ってくるたび、第一応援歌を歌い健闘を称え合う。その中に、感極まり涙を流す長友の姿があった。「優しすぎる主将」(笠原)。 涙もろく、人柄のいい彼の性格を物語っていた。
  歴代最多の部員数となった立大。長友は「全員で勝ちにいく」という意思を持ち続け、一人一人のことを誰よりも考えてきた。だからこそ「彼のためにみんなが頑張ろうという気持ちになった」(高田=コ4)。 彼の人間性にチームは感化されていった。
  一番近くで支えてくれたのは、今まで個人で練習してきた彼にとって、「最初で最後の同期」たち。つらいときも、心強い言葉を掛けてくれた。不安しかなかった彼を後押した頼もしい存在だった。
  「色々な人たちに支えられ強くなった4年間」(長友)。 支えてくれた全ての人たちに優勝という形で恩返しを。誰からも愛された主将は、感謝を胸にチームを日本一へと導いた。
  主力だった4年生が引退したが、来年のインカレに向け立大は歩みを止めることはない。今年、惜しくも届かなかったアベック優勝のために。彼らが目指すものはただ一つ。男女で強い立教へ――。(田代菜実) 



あと一歩届かず準優勝
  連覇を果たした男子の一方で、惜しくも準優勝に終わった女子。トリックで高得点を出すも他の種目で本来の実力を発揮し切れず、彼女たちの目には悔し涙が浮かんでいた。
  試合後「もう少し、実力を出せたら」(木村=文4)と唇をかみしめた。それでも切磋琢磨(せっさたくま)し合える多くの仲間、指導してくれるOB・OGの存在が彼女たちを大きく成長させた。今回の経験を通して、彼女たちは勝利以上に大事な何かを得た。

 



 

 


 
 






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