立教スポーツ第212号

<6月2日更新>
   

    
【洋弓部】  
まだ見ぬ景色へアーチを描け!
四度目の正直!!念願のステージへ
大貫 世界学生出場権 獲得
 

 立大洋弓部のエース・大貫(済4)が創部史上初の勲章を手にした!数々の国内大会で結果を残すも一度も着ることができなかった日本代表のユニホーム。長年世界大会に出ることを目指してきた彼は人知れず努力を続けてきた。競技生活12年目にしてついに世界へ飛び立つ!

苦闘
  自分だけが世界を経験していない。共にしのぎを削ったライバルたちは皆世界に羽ばたいていった。「自分と彼らは何が違うのだろう」。いつしか彼は自分自身に劣等感を抱いていた。
  「日本代表になる」。大貫の中に芽生えた、一つの夢。大学レベルで彼の実力は圧倒的だ。だからこそ、世界大会出場もそう遠くないと誰もが思っていた。
  日本代表になる方法は二つ。一つはナショナルチームに入り代表候補となること。もう一つは選考会で上位に入り出場権を獲得することだ。2年次に出場した世界学生選考会では4位とあと一歩及ばず好機を逃す。もどかしさでアーチェリーから逃げ出したくなった。そのとき指導者として常に大貫を見守ってきた父の放った言葉が胸に突き刺さる。「そんな中途半端ならやめちまえ」。
  父の言葉に奮起した大貫は、3年次に全日本選手権で準優勝。ナショナルチーム入りこそ逃すものの、大躍進を遂げる。このまま日本のトップに手が届くと思った。しかし続く世界室内選考会ではまさかの9位。またしてもチャンスをつかみきれなかった。
  闘争心が湧かない。これまで大貫は自分が当てれば勝てると考えてきた。しかしその考え方では結果が伴わず、苦悩の日々が続く。彼にとって最大の敵は、自分だった。
  気付けば大貫も4年生となり人生の岐路に立った。卒業後も競技を続けられるのか、もしかしたら今大会が最後の試合なのではないか。様々な思いが心に渦巻く。父の勧めで初めて弓を持ったのは11歳のとき。不安をはねのけ、今度こそ日本代表になると決意した。

敢闘
  勝負にこだわる。今までのスタイルに限界を感じた大貫は、基本に戻って練習を始めた。試合を意識し集中して打つことで、課題であったメンタル面の弱さも克服。確かな自信を胸に、試合を迎えた。
  2日間にわたり行われた今大会は、事前選考により過去1年間の成績上位7人が出場できる。大貫は7位でボーダー通過。他の6人は全員日本代表経験者だった。だが格上の選手たちの中でも緊張はしない。「失うものはない」と競技生活の全てをぶつけた。
   試合が始まると、自分の調子の良さに驚いた。1日目を終えた時点で大差をつけての1位。2日目も勢いは衰えず、心に余裕を持ち全力でアーチェリーを楽しんだ。
  終わってみれば他選手を寄せ付けず自己ベストで優勝。練習の成果がついに発揮され、得点は2年前から172点も上がっていた。ここに至るまで幾度となく挫折を経験してきた大貫がやっと自分に打ち勝つことができた瞬間だった。  

  「おめでとう」。一度も褒められたことのなかった父からのその言葉が何よりうれしかった。思い返せば何度もアーチェリーをやめたくなったことがある。それでもそばにはいつも、父がいた。「父の前で負けられない」。二人三脚で歩んだこの12年間で、初めて恩返しができた気がした。
  ようやく開いた世界への扉。強豪相手にもメダルを狙う姿勢を貫く。そこには以前と打って変わり、闘争心にあふれる大貫の姿があった。重圧にも負けない強さ。大貫は最大の武器を携え、日の丸を背負い戦う。次は立大のエースとしてでなく、日本のエースとして。(梅原希実)

 





【陸上競技部】
目指すは母の先 出水田 世界大学クロカン 銅


  出水田が世界を相手にまたも偉業を成し遂げた!イタリアで行われた世界大学クロスカントリー選手権大会に出水田眞紀(いずみだ=コ3)が出場。予選会を1位で通過し日本代表として見事個人銅メダル、団体金メダルを手にした。

 

遠のく光

  これまで数多くのクロスカントリーを制してきた出水田。彼女の強みは、「積極的な走り」だ。今大会でもその持ち味を生かし、一筋縄ではいかない厳しいレースに挑んだ。  
  クロスカントリーは競技場ではなく自然の中で行われる種目だ。開催地によって環境が大きく異なる。今大会ではぬかるんだ土、急斜面を蛇行する芝生がコースになった。一周1`半を4周。計6`の長丁場だ。
  「優勝してこい」。母から背中を押され、出水田はスタートを切る。「1位で代表に選ばれたからには、トップを走らないと意味がない」と語った通り、出水田は序盤から先頭を走る。他国の選手と3人でレースをけん引し、強気な姿勢を見せた。
  しかし中盤からレースが厳しくなってくる。前半の疲れが出てしまった。3周目で後ろを走っていた清水(東農大)が迫る。先頭集団は4人となった。
  最後の4周目。出水田はとうとう4番手まで下がってしまう。集団から10秒以上も離され一人で走っていた。「もう個人でのメダルは無理かもしれない」。そんな弱気な言葉が出水田の頭をよぎった。

手にした銅
  残り500b。メダルが遠のき、気持ちが落ちてきた出水田に最後のチャンスが訪れた。前の集団を走っていたイギリス人選手がスピードダウン。最後の直線が勝負になった。脇目もふらず一心不乱に追う。ぬかるんだ土に足をとられながらも最後の力を振り絞る。ゴール直前で順位が入れ替わり、フィニッシュ。個人銅メダルを手にした。
  優勝を目標にしていた出水田にとって、3位は悔しい結果だ。しかし「積極的な走り」を世界の舞台でできたこと。それは彼女にとって大きな糧となった。
  出水田の陸上競技における一番の目標は4年後に近づいている東京五輪への出場だ。今年開催されるリオデジャネイロ五輪にも挑戦したいと意気込んでいる。
  出水田が五輪を目指したきっかけは母だ。「あと4秒だった」。少しのところで母はソウル五輪出場が叶わなかった。中学で陸上競技を始める前から出水田はそのことを聞いていた。
  「いつの日か母を超えたい」。母が行けなかった五輪に行くこと。それを成し遂げた時こそ、出水田は母を超えることができる。その夢に向かって彼女は走り続けている。(小花優衣)

 




【ソフトテニス部女子】
光り輝く新時代到来!! 史上初 王座進出


  快挙を成し遂げた!全国やアジアの強豪が集う王座の切符をかけた、年に一度のチャンス。窮地に追い込まれた立大だったが、真の力を発揮し1部2位の座に輝く。日々のたゆまぬ努力により、夢が現実となった。

 

劇的

  目を見張る快進撃をこれでもかと見せつけた。春の白子の風は、神風となり選手を後押し。ついに立大は未到の地に踏み込む。  
  勝負の春季リーグ戦が開幕した。初戦は圧勝したが続く明大戦では波乱の展開に。昨年度秋季リーグ全勝の小林(コ2)・中田(文2)ペアが敗れ、そのままチームは勝利を逃す。数年前は歯が立たなかった東女体大は倒したが、思わぬ相手につけられた黒星は選手たちの闘志を燃やした。  
  続く2日目。1部新参、慶大には完勝する。迎えた最終戦。日本代表を擁する早大には、これまで勝ち星をあげたことはない。明大に敗北を喫した以上、目標の「史上初の王座進出」を果たすためには「史上初の早大撃破」が必須だった。  
  強敵相手にも小林・中田ペアは臆さない。果敢に攻め、得点を連取する。2年目の素晴らしい連携でストレート勝利。続く中山(コ3)は奮闘むなしく惜敗する。勝敗は3番手の2人に託された。安定した加藤幸(文2)のストローク、狙いすました泉田(コ2)のボレーが光る。フルセットの末、劇的勝利を収めた。  
  喜びを爆発させ、抱き合う部員。試合中は冷静な彼女たちが感情をあらわにする。代々の先輩が成し得なかった二つの史上初を、一気に手にした瞬間だった。

 

変貌

  試合直後、大黒柱の中山は涙をこぼしていた。思い返せば昨秋のリーグ戦。立大初の2位に歓喜していたチームとは裏腹に、自身の成績は1勝4敗。納得できず、悔しさだけが募った。  
  チームに貢献できずふがいなさが残った。勝利のため、強化すべきはプレーよりメンタルだと気付く。普段の練習から自らを追い込み精神面の強化を図った。
  目に見えた収穫はなく、成長した確信もなかった。それでも最終戦までは敵無し。そして最大の関門、早大戦を迎えた。昨年度インカレシングルス覇者の平久保を相手に、一歩も退かぬ攻防を見せる。ポイント間に一呼吸置き、ペースを守る。チームのためにどんな打球にも食らいついていった。結果フルセットで苦杯をなめたものの、負けずとも劣らない激戦だった。  
  「今まで格上だと思っていた相手は遠くない存在だった」。リーグ戦全体で4勝1敗と躍進する。彼女は気付かないうちに、しかし確実に進化を遂げていた。  
  練習が成果となって出た立大史に残る一戦。難敵にも物おじせず立ち向かう姿は、チームを先導した。絶対王者を破った立大だが、未だ全勝の経験はない。それはさらなる成長の余地。ついにたどり着いた、まだ見ぬ精鋭と戦う舞台に心躍らせる。  (田中慶子)  

 



 

 


 
 






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