立教スポーツ第213号

<7月7日更新>
   

    
【洋弓部】  
JAPANの誇りを胸に、再び世界へ
自然を切り裂く魂の一射
大貫 全日本フィールド 銅
 

 数々の成果を 収めてきた大貫渉(済 4)が、世界への切符を再びつかんだ。第45回全日本フィールドアーチェリー選手権大会で見事銅メダルを獲得。普段取り組んでいない競技にも関わらず、成績を残せたのは彼の適応力が素晴らしい証し。日本での実績を引っ提げ、大貫がアイルランドの地でその名を とどろかす。

高いハードル
  自分だけが世界を経験していない。共にしのぎを削ったライバルたちは皆世界に羽ばたいていった。「自分と彼らは何が違うのだろう」。いつしか彼は自分自身に劣等感を抱いていた。
  「どうしても日本代表として戦ってみたい」。 昨年末に大貫は、いかにして日の丸を背負うかを熟考した。そして大学ラストイヤーに大きな目標を二つ掲げる。そのうちの一つが、世界学生選手権獲得、もう一つが9月に開催される世界フィールドアーチェリー選手権への出場権獲得だ。
   フィールドアーチェリーとは、普段大貫が取り組んでいるものとは違い、自然に設置された的に向かって矢を放つ競技だ。多様な地形からさまざまな角度に照準を定めるため、技術力と判断力が求められるのが大きな特徴となる。
  今大会から世界に派遣されるのはただ一人。大貫はこの非常に狭き門にプレッシャーを感じながらも、「ベストを尽くせば大丈夫」と開き直り大会を迎えた。出場権獲得が懸かった予選ラウンド、一緒にラウンドを回っているのは、前回大会の覇者や代表経験者。「この人たちに勝てば1位になれる」と強く自分に言い聞かせ、闘争心を燃やす。出だしは良くなかったが徐々に調子を上げ、スコアを伸ばしていく。2位に大差をつけて予選1位通過を決めた。
   予選ラウンド終了後、大貫は本部に呼ばれ代表になる意思の有無を問われる。彼は力強くうなずきながら「はい」と答えた。この瞬間、心の中で喜びを爆発させた。念願の代表入りを果たしたのである。
  メダル獲得を目指した2日目。大貫は順調に準決勝まで駒を進める。準決勝は延長戦の末敗北。惜しい結果となったが、続く3位決定戦。相手が格下ということもあり7点差をつけて見事勝利。銅メダルを勝ち取った。

止まらぬ歩み
  勝負にこだわる。今までのスタイルに限界を感じた大貫は、基本に戻って練習を始めた。試合を意識し集中して打つことで、課題であったメンタル面の弱さも克服。確かな自信を胸に、試合を迎えた。
  大貫は国内大会において、好成績を残すのがもはや当たり前の存在である。今大会でもメダルを獲得し、波に乗る男。周囲にも彼のさらなる活躍を期待する声は大きい。そんな彼がついに憧れていた海外、モンゴルで行なわれた世界学生選手権に出場したが、ほろ苦いデビューとなった。
   大会前、なじみのない環境での戦いに大きな重圧を感じる。それでも大会が始まると、試合に集中する中でプレッシャーは消えていった。メダル獲得を目指し、異国の地で奮闘。しかし個人戦2回戦敗退と成績は振るわなかった。
  大会後、大貫はこの結果に対して「取りこぼしが目立った。こんなもんじゃない」と振り返る。彼の心の中に悔しさは残った。だが落ち込んでいる様子は全く見られない。むしろ自分の実力が、十分に世界で通用することに自信をのぞかせる。「次も日本代表のユニホームを着て戦ってみたい」とリベンジを誓った。
  一方、大貫にとって初めての海外。食事など試合以外の面でコンディションを整えるのが難しいことを知る。また外国人選手が、堂々と振る舞っている姿から自分の小ささを痛感することになった。この出来事は大貫にとって、今後強敵と戦っていく上で大きな収穫となっていく。
  世界を経験し視野が広がった大貫。そんな彼に野望が生まれた、東京五輪への出場だ。本人は「まだ夢の段階」と笑っていた。しかしその偉業をかなえるべく今後も大貫は真剣にアーチェリーに取り組んでいくだろう。4年後彼が、大観声の中表彰台の頂に立つために。  (桧山潤一朗)  

 





【ソフトテニス部男子】
”軟球入魂”強い立教が帰ってきた!! 48年ぶり 関東2部 V


  栄光の1部優勝から60年。黄金期は去り、一時は10部降格の屈辱まで味わった。その長く険しい復活ロードもついに大詰めだ! 関東学生ソフトテニス春季リーグ戦で悲願の2部優勝。6つの大学による総当たり戦を4勝1敗で制し、1968年の2部降格後初の快挙を達成した。

 

”絆”で託し

    
  リーグ戦は、ダブルス4ペアと3本目にシングルスを挟んだ計5本の団体戦。3本を先取した方の勝利となる。立大は後衛のWエース石川(現2)と佐藤(コ2)を1、2本に配置。確実に先手を取り、3本目を残り全員で奪いにいく。
  初戦で慶大を下し、迎え撃つは優勝候補の東経大。この一戦で、両エースの相乗効果が発揮される。
  1本目、石川は敵の大将ペアと対決する。相手後衛は左利き。同じく左腕の佐藤と校内戦で常に戦い「対策は万全だった」。その独特の球筋にも対応し、格上を打ち破る。続く佐藤は、相手の角度ある速球にも最後まで打ち負けない。校内戦で石川の豪打に慣れたことが大きかった。2人が流れを作り5本全てで勝利。優勝が現実味を帯びる。
  山場を越えた立大はその後も快進撃を続ける。3勝1敗で最終戦へ。専大との天王山が幕を開けた。
  まずは石川と佐藤がビッグプレーを連発。両雄は、入学前から約束していた。「2人で立大を1部に上げるぞ」。夢に大きく近づく貴重な2本を先取する。悲願へ王手をかけ、3本目のシングルス。登場したのはかつてのエースだった。

”漢”が決めた
  
  山田真輝(文3)。1年春のリーグ戦で5戦4勝と鮮烈なデビューを飾る。プレーは迫力満点。まさにスーパールーキーだった。しかし彼に突如悪夢が襲う。
  2年の春、練習中でのこと。突然、ラケットが思い切り振れなくなる。昨日まで当たり前だった球の打ち方が分からなくなった。
  不調の正体はイップスと呼ばれる心の病。勝ち続けることへの漠然とした不安が感覚を狂わせた。良かった頃の自分に戻りたい。でも体がついてこない。「試合にも出たくなかった」。どん底の山田に転機が訪れたのは今年の3月。チームの次期主将に選ばれる。調子が悪くても、今できる精一杯で戦おうと誓った。
  この試合でもイップスは癒えていない。本来の強い打球もない。それでも「キャプテンらしい姿を見せないと」。ただ必死に目の前のボールを追った。そこにあのスーパールーキー山田はいない。だが、次期主将として泥臭く勝ちにいく新しい山田の姿があった。
  決着の瞬間。今までの苦労を知る仲間から大歓声が沸く。「言葉で表せないほど嬉しい」。軟球に懸ける男たちが、とびっきりの笑顔を見せた。(栗原一徳)

 




【馬術部】
訪れた芽吹きの瞬間 武居 関東学生女子選手権 3位


  立大馬術部に今年もプリンセスが誕生!武居杏奈(コ4)が第60回関東学生馬術女子選手権大会において見事3位に輝いた。最終学年にして初めてつかんだチャンスで、新たな自分に大変身。仲間からの応援を後押しに主役への階段を一気に駆け上った!

 

仲間のために

    
  武居には、忘れられない思い出がある。昨年の全日本学生賞典。先輩が高得点で走り終え、後を託されたのが自分だった。額に汗をにじませながら馬場へ向かう。大好きな先輩の最後。自分がやらなくては。ひたすら言い聞かせ必死に駆け抜けた先に、思い描いていた歓喜の瞬間が待ち受けていた。  
  団体戦の魅力にひかれ、立大馬術部に入部した武居。苦楽を共有できるのが醍醐味(だいごみ)だ。先輩と喜びを分かち合いたい思いから、最高の走りを成した昨年の全学。武居の中で仲間の存在が大きくなった大会だった。  
  彼女にとって、チームメイトはよきライバル、そしてよき仲間。共に今大会に出場する同期の浦野(法4)や岡部(文4)と三人で勝とうと誓い合った。自分も結果を残したい。それ以上に立大のみんなと喜びを味わいたいと心から願っていた。  
  初戦は武居の得意分野である障害競技。攻めの気持ちでタイムを縮めることに専念し、ミスをせず好成績を収めた。気持ちに余裕ができた彼女は、2回戦でも安定感のある演技を見せ、36人中見事5位で切り抜ける。他の二人も無事に通過し、挑むは鬼門の3回戦だ。ここでの結果が、彼女の大会への思いを大きく変えた。

 

自分のために

  試合直後、大黒柱の中山は涙をこぼしていた。思い返せば昨秋のリーグ戦。立大初の2位に歓喜していたチームとは裏腹に、自身の成績は1勝4敗。納得できず、悔しさだけが募った。  
  自身も苦手と語る3回戦は、トーナメント式。他大の馬を相手の選手より、上手に乗りこなさなくてはならない。極力ミスはしないよう、一歩一歩丁寧に歩む。彼女の鋭いまなざしが、試合の厳しさを物語っていた。
  出番を終えひたすら吉報を待つ。結果は武居の勝利。差はわずか0.3点。緊張でこわばる彼女の顔に、安堵(あんど)の色がよみがえる。準々決勝へ、残るは8人。しかし、そこに浦野と岡部の名前はなかった。  
  昨年の優勝者である浦野を差し置いて、自分が勝ち進んだのは、運が良かっただけではないか。内気な武居の背中を押したのは敗退した二人だった。「私の分も勝って」。 仲間の言葉を胸に武居は一人、歩き始めた。
  準々決勝。対する相手は3回戦で浦野を下した選手だった。お互いを高めあってきた大切な仲間。だからこそ自分の実力でその背中を超えたい。強気な走りで準決勝へと駆け抜けた。
  最終的に敗退してしまったものの、銅の勲章を手に微笑む武居はまるでシンデレラ。今大会を経た彼女は、確実に一人の選手として大きく成長を遂げていた。表彰台に立ったのは他の誰でもない、武居自身だ。これからは人のためでなく、自分のために。新たな主人公の物語が今幕を開けた。  (秀村聡美)  

 



 

 


 
 






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