11月7日、上重主将(コ3)を中心に新チームが始動した。「優勝」が嘱望(しょくぼう)されていたものの、残念な結果に終わってしまった秋季リーグ戦。この悔しさをしっかり心に留めて、選手たちは練習に励んでいる。
5位という戦績だけにとらわれてしまうと見えてこない野球部秋物語を、わたしはやはり伝える義務があるような気がしてならない。どうやら栄冠をつかむためにはまだ足りなかったものがあるようだ。ある人はそれを「実力」というかもしれない。またある人は「運」というかもしれない。
それがなんであるかという議論をわたしはここでしたいのではない。当たり前だが、5位という結果はどうやっても変わらない。しかしこの成績は、いつか来るであろう栄冠を手にするまでのひとつの通過点。そう、野球部のひとつの物語は彼らが栄光をつかむその時、終止符が打たれるのだ。
立教大学硬式野球部を愛する人々がその栄光の時、選手ともに笑えるように、そして泣けるように・・・。そう思ってわたしは硬式野球部秋季リーグ戦の軌跡をクローズアップした。
わたしの野球部インタビューノートには、2001年9月11日と日付の入った智徳寮での齋藤監督、今村主将(観4)、上重投手、多田野投手(観3)、和田内野手(コ3)のリーグ戦前インタビューの記録がある。とても全部をここに記すことはできないが、一部を抜粋して載せたいと思う。
<齋藤監督>
開口一番「(話が)長くなるけどいい?」とわたしたちに聞いてきた齋藤監督。とても気さくな方で、お話も面白い! この日も「いつの間にこんなに時間が?」とびっくりするくらい時がたつのが早かった。
【夏のキャンプ、オープン戦を振り返って】
キャンプはとても充実していてよかったと思う。多田野は過密スケジュールによるひじ痛のため走り込み中心、上重は投げ込みを中心に取り組んだ。打者は絶対的に基礎練習が足りないので、そこに時間を取った。盗塁・送りバント・進塁打、このどれか一つでもできていれば春優勝できていただろう。とにかくボーンヘッド(凡ミス)を無くすための練習をしてきた。
【監督の秋季リーグ戦構想】
調子というのはだいたい2週間周期。だから、初戦で二人の投手が良い状態であれば、次の早大戦もある程度目途がたつ。そして、空き週(と東大戦)で二人を休ませて、慶大戦に向けてモチベーションを上げていけたらと思っている。
ただ、上重は本調子には遠い。多田野は日米大学野球で長いイニングを投げてしまったからこううまくはいかないと思う。とはいえ、二人ともリーグ経験者なので開幕への持っていきかたなどはわかっているだろう。
【今村主将のケガの影響について】
とにかく痛い。何も今じゃなくても・・・と思ってしまう。(今村は)攻撃、守備、チーム全てのかなめだからね。慶大戦までは代打での出場になってしまうだろう。
【第3のピッチャーについて】
小林(経3)は覚えたてのチェンジアップがよく決まっている。それによって緩急がついて直球も生きてきているし。できればフォークも覚えてもらいたい。
鶴井(経2)も成長著しい。オープン戦でだいぶ投げているし、いけると思う。
このところ速水(経3)の体のバランスが悪く、フォームを崩してしまっている。春くらい腕が振れていればいいんだが。
<今村主将>
【ケガについて】
関西遠征で、ひざのじん帯を損傷してしまった。日常生活には支障はなく、今日も練習に参加した。けれど、捕手としての出場は慶大戦からだと思う。ケガをしたからといってプレーが中途半端になってしまうのはイヤだし、自分がほかのポジションに入って誰かを移動させるようなことはしたくない。
【秋季リーグ戦にむけて】
優勝を常に頭において練習してきたので、小さなミスが減ってきたと思う。東大戦で二人の柱(上重と多田野)をいかに休ませられるかがポイント。
<上重投手>
【今の体調は?】
7月の終わりに盲腸を切ったので夏の練習に出遅れてしまった。キャンプは体調がよくなかったので、体力作りから始め、体の状態を整える意味でも(そこまで)きつい練習はしなかった。
(完全試合をした)昨秋はリーグ戦が始まる前から「やれるな」という感じがあった。完全試合のプレッシャーはまだ多少あるが、気にしないようにしている。万全では決してないが、多田野と二人でがんばっていければと思っている。
【今村捕手不在について】
確かに痛いけど、これは与えられた試練だと思って割り切るしかないと思う。
―捕手との相性ってあるんですか?
気にするタイプの投手と気にしないタイプの投手がいると思うが、自分は気にしない方。
<多田野投手>
【ひじの状態は?】
なんとかいけると思う。
投げ込みができなかった分、暑い時期にたくさん走り込みができた。下半身は安定していると思う。
【今村さんのケガについて】
来年はいないのだから、ポジティブに考えたい。
【秋に向けて】
オープン戦で長いイニング投げなかったのははっきりいって不安だが、走り込みをしてきたという自信はある。あと1カ月くらい調整の時間があればというのが正直なところだが、とりあえず明大戦をモノにして波に乗れたらと思っている。
<和田内野手>
【夏の成果は?】
フルスイングが出来るようになったことかな。
【秋に向けて】
春と変わらず、プレッシャーはない。打点王の意識とかは全くないが、走者が出たら返すのが自分の仕事。他にも四番ができる人(松倉良)がいるので、取られないようにしないと。
「優勝」をつかむこと、ただそれだけを目指して暑い夏を乗り越えた選手たち。あと一歩力及ばず目の前で胴上げを見た彼らの悔しさは確実に力になっている、そうわたしは思った。
<第U章>に続く・・・
(久野)