硬式テニス部(男子)

〜魅力溢れる男達〜

 最近、私はテニスジャンキー(中毒)になってしまったのだろうか。テレビでテニスをやっていると自然とリモコンを押す手が止まったり、本屋でテニスの本を立ち読みしていてふと気づけばレジに並んでいたりする。夏合宿のテニス大会で初めてラケットを握った野球馬鹿の自分が、こうなることを果たして半年前に予想できただろうか――。全ては硬式テニス部との出会いまで遡る。

 10月8日から関東大学テニス選手権大会(秋季リーグ戦)が始まった。1部校などの強豪も数多く参加しており、その数128チーム。4部の本学はここ数年、予選リーグで敗退していた。リーグ内のヒエラルキーは確立されたかに見えた。だが今季は違った。順調な滑り出しを見せ4連勝。見事に決勝トーナメント進出をものにする。その原動力となったのが、主将・宇賀神(法3)、安定感抜群の四家(経3)、非凡な才能を持つ橘(観2)である。
 しかし、思うにこの快進撃の最大の要因はチームワーク。彼らは常に声を出し続ける。自分の試合が終わると休む間もなく他の試合を応援しに行く。
 宇賀神は結束力についてこう述懐する。
 「プレーしている選手を楽しくやらせたいからです。勝ってほしいから、声が自然と出るんです。」チームワークは形のないものだが、彼らからは鮮明に見ることができた。
 そして、ポイントを奪うごとに雄叫びをあげる姿は見るものを魅了させる。この魂の叫びが、硬式テニス部の最大の特徴であり最高の見せ場なのだ。
 そんな鬼武者達もコートの外では一変して明るく律儀な人間になる。彼らが見せる愛くるしい素顔は何とも言い難い。
 私は彼らから醸し出される熱く、時に和やかな空気にいつしか酔いしれていた。

 私の脳裏に焼き付いた試合。それは11月18日に神奈川県伊勢原で行われた2部の強豪、専修大学との一戦。リーグ戦の勢いに乗った本学は果敢に攻めていった。ダブルスは大接戦。四家、生島(経3)の歯車がかみ合い絶妙なハーモニーを奏でる。ついには相手を翻弄し、ゲームを制した。こうなると否応なしにもう一つのダブルス、宇賀神・橘の闘志に火がつく。山に囲まれ寒いはずのコートが、突如沸騰し修羅場と化す。一進一退のシーソーゲームに、私は思わず取材を忘れ凝視する。
 ただ勝ちたい――。勝利への執念はボールに込められた。
 本学の底力に相手も焦りを見せ始める。ついにセットカウント5−4をむかえたのだ。こうなると勢いは止まらない。試合のイニシアチブを取った本学は上質のプレーが随所に冴え渡る。橘の放つ渾身のサービスが決めてとなり、見事に勝利をおさめた。
 「本当に勝つとは思わなかった」
言葉とは裏腹に選手全員に満面の笑みが浮かぶ。
 私はテニスの真骨頂を見たような気がした。

 11月24日の千葉大戦を終えて秋季リーグ戦は幕を下ろした。本学は12位という堂々たる成績を残した。しかし彼らは唇を噛みしめる。事実、本学より上の部(1〜3部)には、1勝3敗という動かぬ証拠がある。壁は高い。
 とは言うものの、今回の結果は来季へ向けて必ず糧になるはずだ。この秋だけでも彼らは日々成長を遂げてきた。「常勝軍団」を目指す彼らのポテンシャルに終わりはない。
 そう、彼らこそ紛れもない「上昇軍団」なのである。

 硬式テニス部の取材を全て終えた帰り、私は先輩達と今季のリーグを振り返ってみた。
「本当良かったよな」
「どの試合も遠くまで取材した甲斐がありましたね」
「なんだかテニスがやりたくなってきたよ」
話は決して尽きなかった。いつしか硬式テニス班は、ただの硬式テニスファンになっていた。
 そして私は確信した――。
 ――これは二日酔いでは治まらないテニスジャンキーになってしまったことを。
 (田代)