ハンドボール部

「守護神」

 4月21日、その日の浅井(法4)の姿を見て、驚かないものはいなかったであろう。本学ハンドボール部に入部してから三年間、不動の守護神としてゴールマウスを守りつづけてきた彼が、CP(コートプレイヤー)としてコートに降り立ったのだから――。

 ここ数年、常に人数不足に悩まされながらも、3部昇格を目指し奮闘してきた本学ハンドボール部。しかし今季はエースであった萩原(文4)が留学してしまったことで、4部残留すら危ぶまれる状態だった。その予想通り、初戦の産能大戦は完敗に終わってしまう。続く第2戦になんとしても勝ちたいという思い、勝利への餓えが、彼の決断を生んだのだろう。

 唯一の新入部員であった丹野(観1)がGKをこなせるという幸運はあった。それでも、ハンドボール歴10年の全てをGKとして過ごしてきた浅井にとって、自分の「巣」であるゴールを離れ、不慣れなCPとして試合に臨むことは大きな賭けであったに違いない。

 しかし、その重圧や他チームの選手から浴びせられる好奇の視線に負けることなく、浅井は堂々たるプレーを見せる。ポストプレイヤーとして常に攻撃の最前線に立った浅井は、より強いキャプテンシーを発揮するとともに、自らも勝利を呼び込む2得点を挙げる。そして、2連敗をはさんだ第5戦にも浅井は再びCPとして登場。相手プレイヤーに徹底したマンツーマンでのマークを続け、杏林大のペースを狂わせることに成功するなど、守備でも多大な貢献を見せる。攻撃に至っては前回を上回る3得点を挙げ、元のポジションがGKであることを忘れさせるような活躍だった。

 CPとして出場した二戦ともに勝利につながるプレーを体現した浅井だが、「チームの形としては不本意」とやはり本職であるGKへのこだわりを見せる。しかし一方で「今としてはベストの形」と、あくまでもチームの勝利を第一にすえたコメントからは、主将として、そしてチームでただ一人の4年生としての責任感が伝わってくる。チームの目標は4部残留だが、戦力的にまだ厳しい試合が続くことは間違いない。だが、こだわりを持つポジションを捨ててでも勝利にこだわる浅井の姿が、チームへ勝利の意思をもたらすこともまた、間違いないだろう。

 「守護神」――その名は単にゴールを守るだけでは得られない。チームを守るものにのみ与えられる称号なのである。
                                                       
(篠宮)