スポーツの世界。それはときに残酷な一面を見せる。「勝敗しか残らない」。本学空手部主将・森崎(社4)はこう洩らした。
残暑の厳しい8月末、東京を舞台に二日間かけて行われた第38回和道会全国空手道競技大会。例年になく練習しているという今夏の成果を発揮したいところであった。初日の個人戦で初戦を勝利で飾った男子選手は6人。しかし、2勝目を挙げた選手はなく、2日目の団体戦での雪辱が期待された。
そして団体戦。2回戦に進んだ本学だったが、先鋒・小山(文4)の勝利にも中堅以降が続かず2勝3敗で敗退を喫してしまう。
試合後、森崎はしばらく涙が止まらなかった。二日間を通して、個人戦、団体戦ともに彼自身一つも勝ち星を挙げることができなかったのだ。主将としてチームを勝利に導けない悔しさ、一個人として勝てない悔しさが交錯していたのだろう。監督は森崎を「オールマイティー」と高く評する。加えて主将という立場から、団体戦では強い相手と当たり、目に見える結果にならないことが多い。その彼の悔しさをさらに掻きたてるのは後輩の存在か。
「後輩自体はいい」という森崎の言葉どおり、若手の成長は著しい。初日の原(
法2)の負傷を受けて、団体戦のメンバーに選ばれたのは丸山(経2)だった。初戦、彼に与えられた役割は副将である。2勝1敗で回ってきた副将戦は相手が3ポイント先取という苦しいもの。だが、その後の追い上げに目を見張った。「原の代わりは重荷だったが負けちゃいけない」と丸山は、団体戦のプレッシャーにも負けず見事な逆転劇を披露した。
「プロセスは残らない。勝敗しか見てもらえない」と森崎は言う。練習で強くても試合で負けたら意味がない。精神的な問題だという。「勝ちたい」――。声を絞り出すようにして、出た言葉。非常に重い一言だった。主将の勝利でチームが勢いづくことを信じて、あくまでも自身の勝ちにこだわる。目指すは10月の関東大会。それまで主将は1人の空手家として己を鍛え上げていく。
(水上)
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