10月5日、晴れ。2部秋季リーグ戦を1勝4敗で終え、迎えた3部との入れ替え戦。 昨年、入れ替え戦で勝利し、何とか2部に踏みとどまってから1年、本学は再び境地に立っていた。
選手たちは2部にすがりつく思いで試合に臨んだが、結果は3部の慶大を相手に0−7で惨敗。完全に実力の差だった。
そして、この大会で4年生3人は引退を迎えた。主将で本学のエースでもある吉井(法4)、主務の中條(法4)、リーグ戦に強い寺岡(経4)である。
2部の座を守りきれなかった悔し涙で顔がぐしゃぐしゃになりながらも、大学最後の戦いを終えた彼女たちの姿に、どこか誇らしさがあるのを取材班は見た。
今回は、この3人への感謝の意も込めて、3人の記者がそれぞれ一人ずつ取り上げ、思いを綴っていく。
第1章 寺岡佑希子

リーグといえば、寺岡。
ファイナルといえば、寺岡。
・・・ガッツといえば、石松ではなく寺岡。
リーグ戦の寺岡はとにかく勝負強い。今季も5戦4勝とその強さを証明した。そして5戦中3戦がファイナルまでもつれ、すべて勝利を手中に収めている。その強さの理由について聞くと…。
「個人戦とは違って、リーグの1球はみんなの1球なので…」。
その精神に思わず心の中で感嘆の声をあげてしまった。
写真=「よしこい!」寺岡のガッツポーズ
思えばいつもキーマンだった寺岡。昨年の入れ替え戦は、寺岡の1勝(ダブルス2戦、シングルス5戦で4勝以上で勝利)が勝利の条件だった。さらに今年は、寺岡の1勝がなければ勝利は望めない状態となっていた。重圧はもちろんあったが、もっと頑張らねばとそれを力に変えることができたという。応援されればされるだけ、寺岡はボールに魂を宿しチームの窮地を救った。
寺岡のプレースタイルは決して派手とは言えない。スマッシュを打ったりせずに、ボールを追い続け繋ぐテニスだ。虎視眈々と相手のミスを待ちポイントをとる。そんな寺岡も高校時代は打つテニスをしていたという。だが大学では身長159pでプレーヤーとしては体格が劣るためパワーでは勝てない。勝てるテニスを追及するならば、そのスタイルを変える必要があった。プレースタイルを変えることには葛藤があったというが、「リーグの1球はみんなの1球」この思いが寺岡の背中を押したのだ。
ファイナルに強いというのも、寺岡のボールへのこだわりからうなずける。寺岡は「ボールにはすべてがつまっている気がする」と言った。仲間との時間も、辛い練習も、勝利の喜びも…。ボールを追いかけることは、今までの自分を裏切らないということ。ファイナルにもつれ、自分も相手も体力、精神ともに極限状態にありながら、寺岡が勝てる理由はボールへの愛情の強さ以外の何物でもない。
最後に寺岡の好きな言葉を紹介したい。それは「ガッツ」だという。「自分ってガッツって感じしませんか(笑)」と少々照れながら言った。振り返ると試合を重ねるごとに、ポイントを決めたあとに発する「よしこい!」の掛け声が力強くなっていったことを思い出した。ガッツで引っ張るチームのキーマンとして成長していく姿がとても頼もしかった。
寺岡のテニスはわたしの胸をいつも熱くした。今思うとボールにくらいつく姿が「ひたむき」だったからではないかと思う。このしらけた現代で、ひたむきなんて少々かっこ悪いと思う方もいるかもしれない。しかしそんなことはない。寺岡がテニスで見せてくれた。ひたむきとは何よりも美しく、そして強いものなのだ。
(2003年11月15日・江幡)
――第2章は部を影で支えた中條奈保子を特集します