準硬式野球部


  「春季練習〜自分を見つめ直して」

 

「惜しいなぁ、あと一歩で勝てるんだが…」。

そんなもどかしい思いを何度も感じた昨年の東京六大学準硬式野球秋季リーグ戦。準硬式野球部は無念の5位に終わった。
 反省は山ほどあった。決定力不足、チームの連携、精神的な切り替え…。挙げればきりがない。しかし、今選手たちはこれらの反省に真正面から取り組んでいる。それは春に向けての練習に如実に表れていた。

 まず基本となる走り込みの量を昨年の2倍に増やし、体作りを徹底。また全体練習を濃いメニューで効率良く行うことで、自主トレーニングの時間を増やし、選手たちそれぞれの自主性を伸ばすよう心掛けた。
 こうした練習メニューを組むのは今年主将となった川内(文3)。彼はチームの実情を「得点力があるわけではないし、かといって守備で勝てるというものでもない」と語る。だからこそもう一度基礎からしっかりとたたき上げ、レベルの底上げを図っていく考えだ。

 確かに昨年は自分たちの野球をしきれずに負けてしまう試合が見受けられた。相手を崩していく前に、まず自分たちが崩れないこと。そのためには、自らに厳しくなることが必要だった。
 川内が主将になったことで変化した部分を2年生に尋ねてみた。すると「川内さんが主将になって練習はきつくなりました。でもその分、チームの意識は高くなったと思います」との答え。
どうやら後輩も確実にチームの変化を感じ取っているようだ。

 また、川内はチームワークを重視し、自分自身意識して、同期だけでなく後輩にも積極的に話しかけ、コミュニケーションの充実を図っている。昨年秋の敗因の一つにある連携ミス。それを相手に突かれて無駄に失点してしまったことへの反省だ。
 チームワークを高めることは単に連携を強めるだけではなく、選手個人がチームの勝利にこだわることへとつながっていく。選手それぞれが一つの目標に向かって進むところに、個々の能力だけでは決して出すことのできない大きな力が生まれる。

 春の巻き返しに向けて、副将の成田(経3)は言う。
 「このチームは特別打つ選手も、足の速い選手もいない。だからバントで(走者を)きっちりと送り、確実に攻めていかなければならない。また勝負に勝つためには良い意味でずるくならないと。自分たちのミスから(試合の)流れを(相手に)もっていかれないようにしたい。やるべきことをきっちりとやっていけば、結果はついてくると思う」。
 ありのままを語ったその言葉からは、勝負へのこだわりがひしひしと伝わってきた。
 そうチャンスが多いわけではない。少ないチャンスを生かして勝つためには、成田の言葉通り「良い意味でのずるさ」が必要なのかもしれない。

 川内や成田の言葉からは、自分を見つめ直し、その中から一歩一歩前進していこうとする準硬式野球部の姿がうかがえた。

 練習が終わり選手たちが引き上げて行くなか、グラウンドに残ってキャッチボールを続ける2人の姿があった。チームのエースである上原(経2)と女房役の猿田(法2)である。黙々と投げる上原に対して猿田が時折声を掛けていく。昨年は素晴らしい活躍を見せたこのバッテリーだが彼らの心におごりはない。優勝に向けて練習あるのみだ。

 ひたむきに練習する彼らの姿に、私は心を打たれた。そして春の活躍を祈らずにはいられなかった。  

                               (2004年2月28日・大野)