2005年4月9日待ちにまった東京六大学春季リーグ戦が開幕した。我が立大の開幕戦の相手は優勝候補の呼び声が高い早大。緊張感が神宮球場を包み込む中、スターティングメンバーの発表が行われた。本学は3年生ながら四番に座る大西(観3)を除いて全ての選手が4年生というメンバーであった。それもそのはず、今の4年生は入学当初から期待され2年生のころからリーグ戦でデビューを果たしこれまで戦ってきた選手ばかりであるからだ。言わば今年はここ数年の本学の集大成となる年と言っても過言ではない。春季リーグ戦での彼らの目標は優勝である。もちろん、戦力、経験を考慮してもその目標が手の届く範囲にあることに疑いはない。立大史上最強と言われる投手陣、ベストナインを二度受賞している捕手の高橋(泰)(コ4)、それに経験豊かな野手陣を見ても死角は見当たらない。しかし開幕前、わたしには優勝するには足りないものがあると思えてならなかった。それは昨秋のリーグ戦に遡ることだが、そこまでの歩みを含めて何が足りないと思うのかを言いたい。
現在、主力となって出場している4年生の選手たちは2年生時から何らかの形でリーグ戦に出場していた選手達ばかりである。彼らが2年生の頃のリーグ戦の成績は散々たるものだった。春と秋のリーグを通して挙げた勝ち点は僅かに2つ。東大以外のチームからは一つも勝ち点を挙げることはできなかった。負けることしか知らなかった彼らだが、3年の春季リーグ戦では勝ち星を重ねた。優勝戦線に最後まで絡み結果は3位。投手の小林(コ4)は開幕戦の慶大戦で初勝利を挙げると実に5つの勝ち星を重ねエースの地位を確立した。春のリーグ戦の彼らは無我夢中に勝利を追い求めているように思えた。そして迎えた秋季リーグ戦。本学の前評判は慶大に次ぐ優勝候補の2番手。しかし接戦となった試合で悉く敗れ春季リーグ戦を下回る5位という結果に終わった。
春と秋ではいったい何が違ったのだろうか。なぜ勝てなかったのだろうか。それは野球のプレーの部分で負けているのではなく、気持ちの面で勝てていなかったのではないか。春は目の前の試合に一心不乱に挑んでいた彼らだが、秋はどこか集中力に欠けるという試合が続いた。春とは違い秋は勝つことを意識し始めていた。春にどのくらいのことをすれば勝てるのかがわかり、その気持ちが過信、慢心になってしまったのだと思う。このくらいやれば勝てるという怠慢な気持ちが何か本気になりきれていない締りのない顔つきとして表れていた。わたしには選手たちの「絶対に死んでも勝つんだ」という気持ちが伝わってこなかった。気迫というか心の奥に潜む闘争心というものを感じ取ることができなかった。これが秋季リーグ戦の勝負どころで悉く競り負けた理由ではないかとわたしは勝手に思う。そう、つまり「勝利への飢え」が足りないのではないかと思えてならなかったのだ。
そして、長い冬のトレーニングを越え、4月9日からの開幕カード。本学は優勝候補の早大と対戦。結果的に本学は早大に一勝二敗と負け越し勝ち点を落としてしまった。しかし、わたしは立大の新たな野球をこの三戦で垣間見ることができた。開幕戦となった1回戦では緊張もあっただろうががっかりする内容ではあった。早大の勢いに飲み込まれ、自分たちの力を全く出せていなかった。試合展開だけではなく球場全体が早大の雰囲気で、気持ちの面で完全に負けてしまっていた。
しかし、翌日の2回戦。選手たちの顔つきが一変。何としてもこの試合は落とせないという強い意志が表情ににじみ出ており、初回に先制した二点を先発の大川(経4)が気迫の投球で最後まで守りきり2−0で勝敗を五分に戻した。初完封でチームに勝利をもたらした大川は「気持ちを込めて投げれば抑えられることがわかった」と自身の投球を振り返った。私はこの試合はただの勝ちではないと信じたい。今までには感じることができなかった選手の勝ちたいという気持ち、勝利への飢えを肌で感じることができたからだ。この気持ちは昨春のリーグ戦で勝利へ向かって無我夢中でプレーしていた気持ちとは確実に違うと思う。彼らは秋に野球の本当の怖さ、厳しさを知って今の気持ちに到達したはずだからだ。新星・立大が誕生した試合であると思ってもよい選手の奮闘振りであった。
続く3回戦。敗れはしたが、選手の意識の変化を感じることができる試合内容だった。
開幕カードで勝ち点は取れなかったものの、この三戦での気持ちの持ち方での変化が今後のリーグ戦で勝利という結果として出てくることを期待したい。また彼らならきっとできるはずである。開幕カードで勝ち点を落とし、優勝に向け厳しい状況ではあるが2回戦で見せた、勝利への飢えを心に持って頑張ってもらいたい。
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