春季リーグ戦2011

―松本幸一郎・苦悩のシーズン―


 高校時代は名門・横浜高(神奈川)で1年生ながらレギュラーとして甲子園に出場し、鳴り物入りで立大へ。そして昨春から「1番・ショート」で活躍してきた松本。今シーズン前から「3番・松本、4番・岡崎は動かせない」と監督からも絶大な信頼を寄せられる彼だが、今季は苦悩のシーズンだった。



試合 打数 安打 本塁打 打点 四死球 打率
14 52 15 .288


  日頃のインタビューから彼はまず個人のことよりチームのことを振り返る。今回もやはりチームのことからだった。

 「ここまで練習したのに勝てないのかという雰囲気がチーム内にありました」。慶大戦では勝ちゲームを続けて落とし、明大との初戦では相手のエース・野村に完敗を喫した当時をこう振り返る。しかし、その後チームは「過去2年とは比べものにならないほどの練習量」が実を結び明大2回戦から、8勝1敗1分の快進撃で、23季ぶりの優勝まであと一歩に迫った。

 対照的に松本自身は、苦しいシーズンを送っていた。今季は出塁することに主眼が置かれる1番から、出塁だけでなく打点も求められる3番に打順が変更。「1番の西藤勇人がよく出塁してくれたのに還せないことが多かった」とリーグ3位タイの9打点を挙げながらも、松本の中では走者を還せなかったときの悔しさの方が上回っていた。また、打率も開幕カードの慶大戦では順調にヒットを放ち、まずまずのスタートを切ったものの、その後は持ち前の巧打が影を潜め、2割台前半まで落ち込む。チームのことを考えプレーする松本にとって、貢献できない苦しみが、いつしか悩みになっていた。  

それでも法大との2、3回戦では劣勢をはねのけるきっかけとなった二塁打を放ち、チームに貢献。さらには最終カードの東大戦で猛打賞を記録するなど、結果的には打率も2割8分台まで引き上げ、昨春以来2度目となるベストナインを受賞した。「落ちるところまで落ちようと思えば落ちれたが、そこで気持ちが折れず、終盤に粘れたことは良かった」と収穫を口にした。

 松本が加入して以来、他大にずば抜けた力を持ったチームがあったこともあり、優勝争いに絡むことなくシーズンを終えていた。ただ、今年は実力が抜きん出ているところはなく、優勝が狙える位置にいる。松本自身も「今までは下級生で遠慮していた部分があったが、今年は4年生と話し合う機会が増えている」とチームに変化を与えようとしている。

 そしてインタビューの最後に来季の抱負を色紙に記してもらった。私に「チーム、個人どちらの目標か」を聞いた上で、彼が迷わず書き込んだのは"完全優勝"。主にチームのことについて語ることの多い、彼らしい一筆だった。



次回は小室正人(済3)選手です。

(7月5日・太田真敬)


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