剣道部

全日本に向けて



  4時半を回ったEアリーナからはつらつとした声が響くとき、新座体育館に一種の緊張と興奮が漂う。剣道部の練習が始まった合図だ。

  この日の男子は15人強が集まり練習を開始。準備体操、素振りから基本打ちまで、一本一本を丁寧にこなす姿が印象的だった。量より質、自主性を大切に考えて練習を行うのが大学の剣道。立大の特徴であるダイナミックで正統派な剣道も、誰に指導されるでもなく、先輩の背中を見ながら個々人が受け継いできたものなのだ。


  中でもやはり一番気持ちが入った練習をしているのが、4年生。引退まで2週間を切ったこの日の練習でも、もっとも気合をだし、後輩を指導し、「全力で行うこと」「一人の力が全体を変えること」を説いていた。技の練習では自らの剣を同期と確認しあう。



  「みんな熱心に集中させればやる。明るく仲いい部活。声を掛け合うことで一人ひとりの意識を高めていきたいですね、上に上がっていくために。」(主将・小川)

  今年の剣道部の特徴は例年以上に下級生の人数が多いことだ。1・2年生全体を合わせると28人にのぼり、上級生よりも10人強多い。そして全体に活気があふれている。実力があり闊達(かったつ)な下級生が新しい風を部に送り込み、上級生が伝統を守り、雰囲気を締めながらも影響されていく。もちろん約50人の大所帯をまとめるのはそう簡単なことではないが、今年の剣道部はいい意味で異色であり、それが良い方向に向いているように思う。

  練習中は気迫に満ちた空気も、終われば先輩後輩の垣根を越えてじゃれあう。個性の調和が今年の立大の特徴であり、数々の好成績を生み出してきた要因だろう。


  「練習量は大会に向けて徐々に落としては行っても、気持ちだけは高まっていますね。まだまだいけるかな、と。」(小川)


  彼らの力はいつも未知数だ。全員の気持ちがひとつとなった時、予想以上の成果を生み出す。全日本の舞台に立つ彼らはどんなものを見せてくれるのだろうか。今から楽しみだ。

◆選手紹介【 @学部学科、学年 A出身高校 B全日本へ向けて】

小川 修三  誠実な頼れるキャプテン
@理学部物理学科 4年
A香川県立高松西高等学校
B「(引退が)やっと来たな、やりきったなと。4年間部活に打ち込んできたので、思い残すことなく引退したい。自分は不器用で、器用な技は打てない。大技になってしまうけれど、気持ちで勝ちたいです。目標はベスト16、8入り。去年以上の成績を出します。」





臼倉 遼  慕われる副主将
@現代心理学部心理学科 4年
A埼玉県私立川越東高等学校
B「練習も一回一回集中してやってきたので、引退があっという間。全日本はいろんな人が見に来てくれる。卒業した先輩や、両親や就職先の人も。ただ全日本に出られるだけでなく、そのような人たちの恩返しになればと思います。一本を取れるだけでなく、剣の道を志すような剣道がしたい。」





松本 直也  立大の元気印
@文学部史学科 2年
A埼玉県春日部高等学校
B「付き面と引き面が得意。あの子の心に届く面を打った。全日本でも己を信じるのみです。」







斎藤 勝将  謙虚な努力家
@コミュニティ福祉学部スポーツウェルネス学科 2年
A埼玉県松山高等学校
B「華がないけど泥臭く試合をする。四年生があと少しで引退し、このチームで試合ができるのも最後なので、先輩に花を持たせられるようにしたい。入賞目指して頑張ります。」





鬼倉 利尚  学年のスター
@社会学部社会学科 2年
A埼玉県私立立教新座高等学校
B「持ち味はスピード。体の出で勝ちたい。好きな言葉は流星浮木、明鏡止水(おじいちゃんから教わった)。チームにどれだけ貢献できるかが大事。出た試合全部勝ちます。」







権藤 成雅  風格漂う個性派
@法学部法学科 2年
A兵庫県私立育英高等学校
B「(自分の剣道のいいこところは)相手を引き出して切るところ。キャプテンが素晴らしいこの部活、先輩のおかげで部活が成り立っているので、感謝の気持ちを忘れずに。全日本に向けて、一日一日、一回一回の稽古を大切に行っていきたい。」





谷口 賢人  堅実な勝負師
@文学部史学科 2年
A福岡県私立東福岡高等学校
B勢いのあるメンが特徴。立ち上がりの一本や相打ちをものにする度胸がある。関東予選では負け試合なしと、きっちりと副将の仕事を果たした。全日本でもその強気の攻めを見せてほしい。







伊東 巧磨  冷静な実力者
@文学部文学科日本文学専修 1年
A宮崎県高千穂高等学校
B「やさしい先輩方に囲まれています。(特に松本先輩にお世話になっています。)全日本まで練習頑張ろうかな、と。唯一の一年生として先輩方に迷惑をかけられない。頑張って全勝しようと思います。」









(10月22日・石田明日香)


Copyright (C) 立教スポーツ編集部, All Rights Reserved.