山岳部
果てしない自然への挑戦 「目的をどう達成するか。己にどう打ち勝つか」。この言葉は、山岳の魅力と最大のテーマである。
立教大学山岳部は、現在男子6人、女子2人の計8人で活動している。全体で2回、個人の自主トレーニングを合わせて週3回の練習の他に、登山を中心とした年8回の合宿が主な活動だ。 現在山岳部が計画しているのは、夏休みに実に約20日もの期間を使っての三ツ峠へのロッククライミング。夏合宿は年間の合宿のうち一番期間が長いため、その分過酷さは増す。山岳部が合宿前に必ず行う勉強会では、登山予定の山で起きた過去の事故事例の話し合いを行う。下級生が資料を作成し、どうして事故が起こったのか、その原因を部員で結論が出るまで議論するのだ。中には死亡事例もある。登山での事故の大半は準備不足が原因にある。万全の体制で山に挑むため、危機管理の共有は欠かせない。さらに、ルートの確認、コンパスと地図を使って方向を見定める訓練、そして変わりやすい山の天候のために天気図も読めるようにならなくてはいけない。 山岳部が挑戦しているのは自然だ。彼らにとって、失敗は死に直結する。雪山は−20℃の世界。高山病とも戦わなくてはいけない。何十キロもの荷物を担いでの長期間での登山は、人相が変わるほど体重が落ちる。「とにかく、普通の学生では体験できないことが出来る」。主将・三井(経3)は力強く言う。「今手を話したら死ぬ。そんな状況がたくさんある。こんなに大変な思いをして何やってんだろうな、とか思うけど、登頂した時にわかる。生きてて良かったって本当に実感できる」。そんな贅沢な体験は、まさしく山岳部でしか味わえないだろう。 また海外遠征も行っている部にとって、世界各地の雄大な自然に触れられるのも魅力のひとつ。言葉では表現できないような感動を味わうのが多いためか、マスコミ関係の仕事に就くOBも多いそうだ。 もちろん個々の体力トレーニングも欠かせないが、ウイリアムズホール裏では実践的な全体練習を行っている。ロープワークというロープを身体に装着する、近くのものに取り付けるという一連の動作を確認する練習や、ロッククライミング練習場では命綱を身体に装着し、色ごとに難易度の違う足場のルートを登っていく。上岡(社4)は、「最初はやっぱり怖い。でも、だんだん恐怖から楽しくなってくる。困難な山ほど、身体が覚えてくる」と語る。練習とはいえ落下すると大けがにつながるため、部員たちは集中力を高めて臨む。中でも部の中心的な存在である三井は、部員に対して時には厳しく指導することも。命に関わるというリスクの大きさが伝わってくる。しかし常に真剣に取り組むからこそ、その中から楽しさが生み出されるのだ。 そして学年の垣根がなく、アットホームなのが山岳部の特徴。「全員で一体となって登ることが楽しい。でも、全員がライバルでもある」と女子部員の玉村(社3)は笑顔で語ってくれた。今年は杉田(法1)が入部し、一緒になって頂上を目指す仲間が増えた。合宿前に行うことで忘れてはならない食料の買い出しでは、現地で調理する当番とメニューもあらかじめ決めて、全員で大学近くのスーパーに買いにいく。登山中でもつまめるようなお菓子類なども必要だ。食べ物を選ぶ様子は楽しげなので一見ハイキングにでも行くような雰囲気だが、登山中の貴重な栄養補給源となる。 三井と鈴木(理2)は、インドの未踏峰への登頂を今後の大きな目標としている。日本山岳協会にも所属していることもあり、活躍の幅はさらに広がりそうだ。 「行動あるのみ。とりあえず行こう」。三井の言葉は、部員全員の力強い意志でもある。自然への挑戦は、その気持ちから踏み出されるのだろう。登頂の瞬間、全員で笑顔になるために。 (7月31日 田島麻央)
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