濃紺のプライド・伝統校の矜持
〜松本直久監督インタビュー〜 ――昨年の対抗戦を振り返ってください 良かったところは4年生が引っ張ってくれたことです。非常にバランスの良いチームでした。いろんな人から春の早大戦(●7−24)を褒めて頂いたことが自信につながったと思います。ベストゲームは22−0と無得点に抑えて勝利した慶大との定期戦(○22−0)。トライの取り方も良かったですね。けが人が多くなって雰囲気が悪くなったり、明学大戦で点を取られ過ぎたり、相手の気迫に押された部分もありましたが、それでもバランス良く出来たと思います。入れ替え戦は勝たざるを得ない試合だったし、入れ替え戦の独特の雰囲気というのもわかりますが、去年の立大ならもっと取れたと思うし、もっと自由にやって欲しかったですね。勝つべくして勝たなくてはいけないゲームとしては、ベストゲームではなかったと思います。勝ちにこだわった試合で、結果を残せたという意味は大きいですが… ――Bグループで戦えたことはチームにどんな影響を与えましたか Aグループで戦う今年の4年生は、去年の4年生を超えていかなければなりません。あれだけ良い素材がいた4年生がBグループだったということは、チームとして大きな責任を負うことになります。その前に、チームの強みであったり弱みであったり立教ラグビーの現在地を見つめ直す意味でも、去年はすごく大切な一年間だったと思うし、自分たちの次のステージに上がる準備の年として、価値のあった一年間だったと思います。 スタッフ就任一年目の年、ということを考えると信頼構築の意味でも必要な一年だったと感じています。 ――去年のチームとの違いは何ですか 去年と全く違いますね。去年は川崎前監督から変わったばかりで、やっぱり福田(済4=東福岡)、浅川(観4=尾道)はじめみんな最初は加藤HCに対しては、良い言い方でいうと挑戦的だったというか、"僕ら自分でやります"的な、向かってくるものがすごくあって、それを途中でいい意味でチームとして一つに出来ました。それは4年生が、言ったからにはやるという、骨があったからで、最後に4年生が引っ張ってくれました。福田組は自分たちで何とかしてやるっていう気概がありました。今年が無いわけではなくて。今年は今年ですごい一生縣命です。迫田(法3=桐蔭学園)も宣原(コ3=常翔啓光学園)もこうしたいですああしたいですって言ってくるし、去年一年の関係性を経て、まったく違う形で次のステップに行っています。挑戦的ではないですよ。一緒に作り上げるという認識は持っていると思います。 ――主将・迫田に求めることは 福田の真似をすることはなくて、迫田には迫田の色を出してほしいです。背中で引っ張るって言っていたけど、言葉やコミュニケーションは大事だから、あいつの自分の言葉なのかなぁ。自分の意思をしっかりチームに伝えて欲しいです。プレーで引っ張るタイプなので、もう一皮むけて、自分の言葉でチームを引っ張ってくれる主将になって欲しいですね。立場が人を育てますから。福田には福田の語録があって、「楽しもうや!」とか「皆で思いっきりやろうや!」とか独特の博多弁でいつも言っていたという、あれは福田の"色"だから。迫田も自分のチームをまとめるフレーズだとか表現とか持ってほしいです。不安はないです。単位を取って欲しいくらい(笑)プレーヤーとしてはもちろん信頼していますし、しっかりやってくれると思うから、迫田色を出してもらって構わないです。逆にもっと出してほしいですね。 やんちゃな宣原とちょっと大人な大槻(営3=清真学園)でバランスが取れているし、今度の4年生は洋平(中村・文3=國學院久我山)もそうだし宣原もそうだしラグビーが大好きですから。質問もよくするし自分の意見を持っている子が多いから、それは楽しみです。だからバイスキャプテンは二人とも自分の考えを持っているし良いと思います。 ――日本一という目標を掲げていく上で、春やっていくことはありますか まずは体作り。徹底しないと。トレーナーとザバスと杉浦先生でやりますが、4〜5`は筋肉で増やさないと、早いラグビーをするって言っても、ベースの体がないとボールは絶対出ませんから。須川コーチに来てもらったのはスクラムにこだわってセットプレーは負けないという前提があります。去年加藤コーチがずっとやり続けたブレイクダウン、スティックドリル、ラックのゴールデンメーター、接点のスペースを取るということは継続するのですが、スクラムセットプレイで9割は球を出さないといけません。大前提は体です。コンディショニング班もいまやっていますが、そこは意識改革して強い体を作るところからやっていきます。 ――班活動の連携について コンディショニング班とストレングス班が連携して栄養もしっかり取らせます。1日6食食べさせます。体作りには重点置いていきますよ。広報とマネジメントの連携とかもですね。アナライシス班とストラテジー班もですね。縦割り組織ではなくて横で4年生を中心にしっかり繋がっていく。みんなわかっています。 ――最後は一つの目標にいくための手段として分業しているのですか そうです。毎月一回は僕らも入って全体会議をやりますし、共有していきます。コミュニケーションですよ。広報は良いことです。学生から湧き上がりました。去年、明学大戦のチケットを校内で売ろうとしても意外と一般学生は冷たくて3枚しか売れなかったとか、一部のホームページを見に来て下さるようなサポーター、OB、御父兄にはニーズがあるのですが、今年は有料試合も多いし、立教ラグビーの存在感を示すには一般のファンの方に知ってもらうことが必要だろうとうことになりました。Facebookでアカウント作ったり、「立教スポーツ」編集部に協力してもらって新聞を作ったり、学生も加わってやろうとか、校内にポスター貼ろうとか、どれも良いことだと思いますよ。自分たちで言ってきましたから。 ――完全に自分たちから言ってきたのですか そうですね。広報班を作れ!なんて僕は一言も言ってないのですが、広報に力入れたいと。チケット売って集客もしたいし、もっともっと立教のラグビーをわかってもらいたいという純粋な思いで副田(社3=立教新座)とか宇納(済3=帝京)とか言ってきましたから。良いことです。それでアドバイス下さいと言ってきて。僕もそっちの仕事だから、ぜひやろうよって言いました。Facebookとかやっています。 ――新しいコンセプト「SPACE」について 川崎監督の頃からやってきた、「フォローラグビー」という言葉も残せと言ったのですが、やっぱりラグビーというのは、湧き出てくる人数で勝たなきゃいけないし、大きい相手には一人じゃなくて二人でいかなきゃいけない。アタックだってとにかくすぐに起き上がって、ディフェンスだってタックルしたらすぐ起き上がって数で勝負、フォローという意味も大きいです。その上でシンキングです。今日も話し合った通り、スペースを取れる日本一のチームになろうって。これもコーチ陣が考えに考えぬいて提案しているわけですから。継続です。土台を作った上でその上に積み重ねていく。それで立教オリジナルのラグビーを作っていこうと。去年は接点、ブレイクダウン、スティックドリルばかりやって、何でスクラムを教えてくれないのですかという声も出ました。他のOBからもスクラムを教えてないじゃないかとか、ラインアウトがダメじゃないかとか、言われたけど、こだわっているところがぶれたらだめです。あれもこれも一回では絶対に出来ないですよ。そこにこだわった上で体を作って、セットプレー。去年の走力と接点の強さがあって初めてフォローもできるし、スピードのラグビーもできる。スクラムがあるから、接点があるから、そこで勝っているから次のステップにもいけるという考え方ですから。一個ずつやっていかないといけません。一年にあれもやれこれもやれ、体もでかくして、ラインアウトもキックオフも完璧にしろ!なんて言うのは無理です。外野は少々うるさかったですけど、無視しましたね。無視しないとぶれてしまうから。いろんなことに手を出すと。(浅く広くミーハーになるより一つ一つやっていきました。) そう、一つ一つしっかり土台から立教のラグビーを作ろうとしました。フォロー、シンキング、スペースと積み重ねてきた結果です。継続です。 ――監督として臨む初のAグループ、プレッシャーはありますか プレッシャーというか責任は感じますね。今までは川崎を呼んだのも僕だし、加藤を呼んだのも僕だし、どちらかというとまさにGMというか、フロント側で自分はマネジメントをやろうと思ってきました。ですが今年から、OB会からも現場をしっかり見るような監督として立たないと対外的にも内部的にも明確じゃないということで、監督といってもGMの役割もやるし、マネージングの役割もします。渉外的・対外的なこと、やっていることはそう変わらないのだけど、より現場にコミットしなければいけないし、近いし、責任も重いと思います。対抗戦Aグループで戦うということは、やはり大変なこと。大きな責任を感じます。 ――春の交流戦という新たな試み、チームへの影響はありますか もう決まってしまったことだし、上手くスケジュールを利用していきたいと思っています。リーグ戦の5〜8位の学校とやるのかな。法大、日大、拓大、中大ですか。良い腕試しになると思います。現在地を知るという意味では今までリーグ戦各校とは滅多に試合をすることはありませんでしたから。 ラグビーのスタイルも質も違うと思うけど、そういうとこに対して、うちのこれから目指していく、作り上げていこうとするラグビーがどう通じるのか。現在地を見ることは意味があることだと思います。 ――実戦練習の場として大事なのですね そうです。準公式戦だから。1stジャージ着てやる試合。意味はあると思いますよ。 ――目標はありますか。 まだ特に決めていません。何勝しろとか、勝たなきゃいけないというのはあまり無くて、極端に言えば自分たちの今の場所を認識出来るような、しっかり自分たちのラグビーを出しきって、それがどこまで通用するのかっていうのを認識してほしいです。春のうちは失敗して当たり前だから。それを課したい、自分たちのことを客観的に認識する試合にしてほしいです。 ――指導で意識したいことは 土、日に来るのですが、基本は全体をみることです。選手一人一人に目を配りたいと思っています。60人(部員)に出来るだけ声をかけたいし、コンディション、調子悪いのか、気持ちがラグビーに向いているのか、いないのか。いろいろあると思うので、そういうところも含めてですね。やっぱりコーチ陣は加藤をはじめ、その時々を完全燃焼させるメニューを組んで妥協を許さないでやる。それをもちろんサポートするのですが、もう一歩上の立場から、そういう状況の選手たちがどういう気持ちでどうラグビーに取り組んでいるのかなというところ、そこに一人一人目を配って見ていきたいと思っています。それが立教の良さだし、何十人もいるとそれが難しくなるけど、60人前後だとこいつらなに考えているのかなとか、怪我で悩んでいるなとか、ラグビーに気持ち入ってないなとか、そういうのが見られます。チーム全体を見ていきたいし、伸び悩んでいる選手とか怪我で悩んでいる選手が成長して戻って来られるようなチームにしたいなと。とにかく現場をみたいですね。 ――現場の人間だけど、少し俯瞰して選手を振り返らせる、気付かせる役割ということですか。 逆に現場のコーチが熱いのでね。年も近いですし。結構がーっとなると思う。去年もなったし。そこをやっぱり俯瞰して。大人から見る。違う視点が必要です。 ――新入部員に対して 立教新座の日鼻(くさはな)とか先週も茗渓学園の子が見学に来ました。だいたいアスリート組は指導しました。決まっている子はだいたい会っています。今ね、外野からはFW2人(桐蔭学園と茗渓学園)、BKが桐蔭学園のWTBと尾道のSH。立教新座から日鼻と須藤。今のところ6人くらいですか。一般受験でたくさん受けているから、頑張ってほしいです。 ――去年のスカウティングはどんな感じでやったのですか。 花園に行って声を掛けたり。明日も熊谷の関東新人戦を見に行きます。直接選手に声かける高校と、先生を窓口に情報もらう子と両方ですね。親から言ってくるとこもあります。入れたいって言って。だいたいそういうとこは親が入れたいだけで入らないのだけどね(笑) 自由選抜とかダメだった子、浪人している子にも説明会やって、今年は知っているだけで5、6人は受けています。 ――では今年は期待できますか うん、志摩(営2=立教新座)も頑張ってくれていますし。今決まっている6人にプラスあと10人くらいで17〜18人、出来れば20人。60人の大台に乗せたいですね。ABCチーム。今の人数じゃスクラム練習が全然出来ないし、3チームあればだいぶ変わってきます。 ――改めてAグループとはどんな場所でしょうか 舞台としては大学でラグビーやる人間にとっては最高ですよ。秩父宮で早大、帝京大とやれるのだから。そこに勝つ可能性あるわけだし、注目されるし、大学スポーツの中では駅伝、六大学野球に次ぐ伝統もある。ただその裏には弱肉強食の厳しい世界があって。去年の成蹊大戦(●12−26)も戦い方をいろいろ言われたけど、抜いちゃダメですよ。最初の9月からベストゲームをやらないと痛い目にあうから中途半端な気持ちじゃ臨めない。覚悟がいりますよ。今後の人生でこんな経験はそうできないからね、幸せですよ。 ――最後に意気込みをお願いします 2000年から13年やっていて、去年も集大成と言ったのだけど、やっぱり三度昇格したチームはほかに無いのですよ。A、Bに分かれてから、這いつくばって三度昇格してきた。悪い言い方をすれば、古いOBからは、「毎回行ったり来たりエレベーターだ」って怒られます。でも三回上がったチームは無いですよ。その誇りを胸にね、今年さらにその次に行かないと。2002年に上がったときも、2007年に上がったときも、やはりAグループの洗礼を受けて最後は結果出せないで降格してしまったので、今度こそは三度目の正直で。次の壁を突破したいと思っていますので、御声援宜しくお願いします。 貴重なお時間を割いてご協力いただいた松本直久氏に厚く御礼申し上げます。 ありがとうございました。 (3月6日・ラグビー部担当) |