陸上競技部
岡田久美子の"いま"
―「今しかできない経験。全力で!!」―


インタビュー中の岡田

  「岡田」。立教スポーツを読んでくれている人には最も馴染みのある名字ではないだろうか。これまで新聞掲載は実に7回。立教スポーツ掲載率は88%(岡田が入学してから発行した8回中)といったところだ。関カレ・インカレで優勝し、学生記録を更新。国体2年連続2位など輝かしい実績を残している岡田久美子(社2=熊谷女子)。2月の選手権で3位に終わり、目標であったロンドン五輪出場とはならなかったが、挑戦はこれからも続く。彼女は何を思っているのか、"いま"に迫る――

  日頃から選手権でロンドン五輪内定をしたいと語っていた岡田。落ち込んでいるのではないか…そう筆者は思っていた。だが大会終了2週間後のインタビュー取材ではいつも通りハキハキとした口調でこう振り返ってくれた。「(敗戦は)悔しい。でも私はこれで終わりではないし、来年は世界陸上もある。少しリフレッシュしてまた頑張っていきたいですね」。実に頼もしい言葉であった。

  選手権20`競歩で3位。それだけでも素晴らしいが、20`をたった3回目の挑戦で自己ベストを更新(1時間34分27秒)し、学生であることを踏まえると偉業度が増す。だが「(学生というのは)言い訳にしたくない」と否定する。社会人との差は学生の大きなテーマだ。今回2位と躍進した井上(天満屋)は同歳の社会人。一昨年、昨年の国体でも合間見え、圧勝している相手に敗戦を喫した('11年岡田2位、井上4位、'10年岡田2位=ジュニア日本新記録、井上4位)。その理由を経験と練習量の差だと分析する。井上は社会人であるがゆえ海外の大会で経験を積み、毎日20`以上の練習量を積んできた。

元旦競歩時の岡田
  岡田も今大会に合わせて距離を踏んできていたことは確かだった。「正月太りを回避するため(笑)」と冗談を含ませながら挑んだ元旦競歩(10`)。調整と位置付けていたとはいえ、めまいを発症させ、8位と不本意な結果に終わったことで、どん底に突き落とされた。「自分じゃないみたいで焦っていたし、周りからのプレッシャーで息詰まることもあった」。それでも立て直した。週に80`を踏み、さらに食事に制限をかけた。両親をはじめ神戸まで応援に駆けつけてくれた同じ学科の友人や陸上競技部の仲間などが励ましもまた力になったという。「準備は納得の形だった」と笑顔を見せるように、体のコンディションだけでなく、心身ともにベストな状態で臨むことができたのだ。

選手権時の岡田
  「人生で最悪の結果だった」と昨年8月のユニバーシアードで総合16位と惨敗した時もだった。大会後は禁止していた甘いものやファーストフードに手を出し、ここでもどん底に突き落とされていた。それでも翌月のインカレでは2連覇での優勝、10月の国体でも2位に入る活躍を見せた。当時、ズタボロになった彼女を救ったのは長年指導している熊谷女子のコーチだった。「(コーチに)言われたんです。ユニバーシアードでの日本チームのスローガンがstart hereなんですけど、そこの頭にReをつけてみろって。"Restart here"だよ。また原点に戻ってやり直せばいいじゃないか」。課題の体幹強化や持久力アップを目的とした走る練習をこなし、復活を遂げたのだった。

  「競技人生の中で、今までで一番辛かった」と振り返るように、大きな変化の年となった大学二年目。苦しい時期もあったがそれを乗り越えたゆえ、岡田は一流アスリートに必要不可欠である"強い精神力"と"高い修正能力"を身につけた。10`と20`の違い、という問いには、「もう全然。後半の疲労度も違うし、メンタルが弱いと厳しい」と一言。ジュニアからシニアへの転換期だった今年。10`では結果を残すことができたが、20`では壁にぶち当たった。「確実に成長している実感はある。徐々に上がっていければ良い。長いスパンで競歩人生を過ごしていきたいから」。あとは経験値と練習量。ロンドン五輪出場とはならなかったが、4年後、8年後の日本にはきっと、いや必ずや岡田の力が必要になるだろう。「今しかできない経験。全力で!! 」、そう意気込む彼女は今この瞬間もどこかで歩いていることだろう。

(3月21日・石井文敏) )





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