スケート部スピード部門 全日本選手権 展望 ―神戸の地で見せつけろ―
10月の距離別で選考された伊藤(トヨタ)、清水(中京大職)、酒井(岐阜ク)、吉田(慶大)、坂下(神大)、斉藤(神大)。以上6名の女子日本代表はW杯第1戦〜4戦を戦った。酒井は1000bにおいて4戦すべてで表彰台に入り、第1・3戦では優勝を飾った。伊藤も1000bで2度の表彰台。団体の3000bリレーでは第3戦でイタリアに次ぐ2位。世界に日本の力を示したのだった。
再びリンクの上で熱い火花が散ることであろう。1週間後に迫った、全日本選手権大会だ。W杯を含めた世界戦への選考会であるため、日本のトップ選手36名が集まる。立大からは菊池(営3)・河合(文3)が出場する。距離別・インカレ(10月)・東日本(11月)を踏まえて見えたものとは―― ◎菊池悠希(営3=長野・小諸商高)
アスリート生命をかけている大学3年目、その目標を現実にするため、最後のチャンスにかける。それが、全日本選手権だ。涙した距離別での敗戦後からは選手権だけを見据えてきた。「次(選手権)は体調や調子を合わせて万全の体で臨み、W杯に行きたいです」。そう意気込む彼女は、コンディションは悪くなかったものの、100%の状態で挑めなかった距離別を悔やんでいるようだった。 「選手権でW杯に行けるように頑張りたい」 技術に関しては加速力を課題にあげた、「パシュートは一周目の入りが大事」。距離別の試合を振り返ってみると、9.9秒で入っていた。結果は上位10名中下から2番目。課題としては明らかだった。そのため現在所属する柏原チームでは1周を全力で滑るスピード練習など負荷のかかる練習に取り組んでいるという。自主トレでもロープや屈伸練習で下半身強化をしている。 選手権の選考会でもあった東日本で総合3位。バンクーバー五輪代表・桜井(早大)、強化選手・北吹(法大)に次ぐ快走劇を見せた。「結果は良くも悪くなかったけど、内容は濃かったかな」と手応えを感じさせる表情でそう振り返った。待ちすぎてしまい、前に出られなかった距離別の反省を生かし、レース序盤から先頭に出て集団を動かした。また1000b準決勝では残り1周の最終コーナーでインから交わし、1位でフィニッシュ。一瞬のスキを見逃さない技術の高さを証明した。 W杯へのチャンスは最後かもしれない、だから今大会にかける思いは強い。実家・長野の方では片目のだるまに願い事をかけて、その願いが叶ったときにはもう片方の目を描いて焼却する習わしがあるという。彼女のピアスは片耳しか開いていない。「W杯に行けたらもう片方のピアスを開けます」、その願いは果たして…。
早大には縁深い選手がいる。菊池悠希の妹・萌水(社1)だ。彼女は昨年10月の長野県選手権で3000b=5.04,486というタイムを記録し、日本記録を樹立した。 今シーズンは距離別で総合10位。東日本では500bで今季初の表彰台に入り、総合でも4位入賞と実力を発揮した。それでも姉・悠希は助言を呈す。「スピードも体力もあるのに抜こうとするタイミングがずれている」。まだ成長段階の彼女には大学の先輩・桜井や姉という大きな存在がいる。ジュニアからシニアへの転換期にある、彼女の滑りも見逃せない! ◎河合奏聖(文3=北海道・標茶高)
迎えた東日本では苦しい戦いを強いられた。500b・1000bとも終盤にインからかわされ敗退。「自分のブロックが甘かった」と課題としてあげてきた"駆け引き"にまたしてもやられてしまった。 「ひとつひとつ頑張っていきたい」 教育学科に通うため、実習も入ってきて練習にいけない日が増えてきていることもあるという。それでも彼女を突き動かすものは何なのか…。そう考えていると彼女が以前このようなことを笑顔で言っていたことを思い出した。 ――スピードスケートは生涯スポーツです スピードスケートが好きという思いが苦しい日常でも頑張れる活力となるのだろう。 「とりあえず選手権の出場権を獲得できたのでよしとします」と東日本では総合9位と健闘した彼女。さらなる高みへ、課題点を修正し、スタートラインに立つ。 ◇ ◇ ◇ 白状しよう。私は入部当初は取材だから訪れていた。だが京都で行われた全日本選抜の取材で変わった。菊池選手が優勝を果たし、選手の最高の瞬間に立ち会える幸せ感を味わった。まずは感謝したい、ありがとうございます。そして約2年間彼女たちを追い続けてきて、純粋に「彼女たちを応援したい」という気持ちが今ある。また追い続けているうちに、スピードスケートの魅力にはまっていった。一瞬の駆け引き、あのスピード感は何ともたまらない。 2人ともに共通するのは大学3年生であるということ。将来を考えるとタイムリミットも迫っている。選手自身も「選手権までは就活など何も考えずにやっていきたい」(菊池)、「1つ1つの大会をしっかりこなしていきたい」(河合)と今後を左右する大事な一戦なのだ。将来のことはまだわからないが、全日本選手権にぶつける確固たる決意はほかでもない。 いよいよ始まる今年最後の大会!悔いは残さないでほしい。神戸の地で、最高の滑りを期待したい! (12月18日・石井文敏) |