立大ボート部にとって飛躍の1年となった2014年。インカレ(全日本大学選手権)では男子舵手付きペア、男子舵手なしフォアが共に準優勝。全日本選手権では立大ボート部史上初となるメダルも獲得した。この急成長の裏側にあったのは、部内の徹底改革と目標に本気で向かう姿勢。その中心にはいつも旧主将・樋口拓哉(観4)の存在があった。
ボートとの出会い
「大学4年間で自分を変えたい」。高校までアメリカンフットボール部に所属してきた樋口。しかし、その頃は冴(さ)えない存在だった。そんな自分を変えようと、右も左も分からないまま飛び込んだのがボート部。高校からの親友・船渡(異4)とともに入部を決意した。 「日本一になる」。強い想いを持って入部した彼らであったが、それはどこか乾いた言葉。現実からは遠く、単なる夢に過ぎなかった。 徹底した部内改革
まず樋口が注目したのは、シーズンオフ中の練習メニュー。シーズンオフが比較的長いボート競技では、冬場の練習がカギを握る。個人の実力を上げ、他大学との差を埋めるための貴重な時間となるのだ。しかし、それまでの立大はほとんどの練習が個々に任せきり。その時間をもっと有意義に使おうと、夏シーズンを戦い抜く上で必要な基礎体力を向上させるメニューを実践した。また、レースがない冬場でもモチベーションを維持するためにチームを3つに分けて互いに競わせた。練習メニューだけではない。この他にも、外部から経験豊富なコーチを呼び、今の立大ボート部に何が必要なのかアドバイスをもらうなどして、着実に体制を整えていった。 今まで自由に練習してきた分、ある程度の強制は仕方ないと感じていた。しかし、部員からの反発は思ったより強く、樋口は戸惑い、そして悩んだ。「生半可な気持ちじゃ改革はできないから最初は厳しいことを言ったりして…。結構自由だった立教だけど、ルールで縛って前より不自由になったから、すごく反発もあった。でも俺は強くなるためには必要だって思ってたから」。 確信に変わった瞬間
寒さの厳しい冬を越え、ついに3月下旬樋口ら4年生のラストイヤーが幕を開けた。 新しい練習メニューは果たして良かったのか。本当に結果が出るのか――。個々がさまざまな想いを抱えて臨んだインカレ。そこで彼らは見事準優勝という輝かしい結果を手にした。
「もう一個結果が欲しかったけど、きっかけはしっかり作れたかな」。最後の1年を戦い抜いた樋口は安堵(あんど)の表情を浮かべた。「今年を境に強い立教へ生まれ変わる」。この目標を達成できたことが何よりも嬉しかった。 支えた存在
そして何よりの支えとなったのは、主務としても活躍した同期の船渡だった。「1年の頃から日本一になりてぇな、あの表彰台に上りてぇなって、そういう夢は共有できていて。主将と主務で揉めたりもしたけど、発言の原点は日本一になりたいっていうのがお互いにあったから。何の根拠もないけど、馬鹿みたいに絶対日本一になるって言い続けられる仲間だったから。だからやっぱり一緒にやれて良かったなって」。 本気で同じ目標に向かえる仲間がいたこと。それが樋口の背中を後押しし、つらい日々も乗り越えられる原動力となった。 夢を託して
樋口を知る仲間たちは口をそろえて言う。彼は"貫ける人"だと。自分がやると決めたことは徹底的にやる。 彼が思い描いた"強い立教"はすぐそこにあるのかもしれない。しかし、まだ部の改革は始まったばかり。「樋口さんたちが作ってくれた土台を絶対崩さない。何が何でも続けさせて、プラス自分たちで何かできれば」と新主将・菱木は意気込む。"強い立教"の基盤をさらに強固なものへ――。ボート部にとって勝負の1年がまもなく始まろうとしている。 樋口ら4年生がかなえられなかった日本一の夢。その想いを、大好きな後輩たちへ託す。彼らなら必ずかなえてくれる。そう、信じて。 END
4年生の皆様、ご卒業おめでとうございます!
皆さんの熱く燃えるボート魂に惹きつけられ、 気付けば私たちは立大ボート部の虜になっていました。 試合で目にした涙や笑顔、そのとき感じた感動を多くの人に 伝えたいという一心で皆さんの背中を追い続けてきました。 いつも温かく私たちを受け入れてくださり、 熱くボートについて語ってくださった皆さんを 一番近くで取材することができ、本当に嬉しく思います。 2年間お世話になり、ありがとうございました。 新境地でのご活躍を心よりお祈りしております。 (3月25日/編集・インタビュー:佐々倉杏佳、平野美裕) |