「男女とも関東ベスト4、全日本ベスト8」。今年度の立大空手部が定めた目標だ。しかし、関東では男子がベスト16、女子がベスト8で散るという結果に終わってしまった。次こそは目標達成へ。全日本への思いは強い。特に4年生は今大会で引退となるため、気合いは並々ならない。今年1年間、チームを率いてきた4年生の足跡を振り返るとともに、全日本への思いに迫った。

主将・宮武明宏(コ4)
今年度、主将を務めている宮武。下級生の頃から主力としてチームを支える一方で、ムードメーカーとして部を盛り上げてきた。鬼気迫る表情で熱戦を繰り広げ、応援の際は誰よりも声を出してアドバイスを送る、まさに「闘将」だ。

  全日本に向けて
「年の最初に決めた目標が男女とも関東ベスト4、全日本ベスト8というものなので、それは変わらずベスト8目指してみんなで一丸となって頑張っていきたいと思います。主将としては、その意識っていうのはしっかり繋いでいかないといけないと思いますし、今、すごく意識高くやれているのでそれを継続するというのとともに、もっと高い意識で。やっぱり(相手に)押されてたりする場面が見えるので、あと一本取れないというのはそこだと思います。そういったところを中心にもっとこれから成長していくと思うのでよろしくお願いします。」

副将・染谷研生(文4)
   周囲が白熱する中でも冷静さを保つ染谷の存在は、チームに安心感をもたらしている。宮武同様、下級生の頃から主力として活躍してきた。「宮武が雰囲気を作りやすいようにするのが自分の役割」と、主将を支えつつチームをけん引している。

  全日本に向けて
  「僕の15年間と1か月ですけど、空手道の人生がそこで幕を閉じるので、まず後悔しないように空手をやるっていうのが1つ。あと空気がガラッと変わるぐらい全日本は実力が違うので、1回戦からレベルの高い相手が来たりしますから、完全に1回戦から食ってくぐらいの気持ちでいかないと。そこは自分しかり後輩にちゃんとイメージさせて、それを練習から積み上げていくという形でコツコツと。僕の体の半身、いや5分の3ぐらいは空手でできていますし、筋肉とか体つき、あと精神的なところも含めて空手が自分のことを育ててくれたので。空手には感謝してます。」

女子主将・茂木ゆりか(観4)

  関東大学空手道選手権大会では20秒足らずで6点を獲得するなど、頼もしい強さを見せた茂木。「勝つところは勝たないと、というプレッシャーもあるけれど、自分たちが後輩たちを引っ張って行かなきゃという自覚が生まれた」とここ1年、その強さは際立っている。

  全日本に向けて
  「まずはチームとしても力が上がってきていると感じるので、自分自身もチームに負けない気持ちと、あとはチームの中でも全体でしっかり課題意識というのを持っていきたいと思いました。やっぱり目標も大事なんですけど、自分たちの力を出し切るっていうことが1番だと思うので。今回の試合もそういう気持ちで臨んだ部分はあって。良くも悪くもあったんですけど良い形で前にみんなで出れたなと思ったので、全日本も自分たちのやるべきことをしっかり出し切っていきたいと思っています。」

主務・塚本睦(文4)
  下級生の頃から立大女子空手部を支えてきた塚本だが、今年度は主務としての役割も担う。「OBさんとの関わりや、試合のエントリーを自分がちゃんとしないとやっぱり回らない」と競技面のみならず、裏方としても縁の下の力持ちとして活躍している。

  全日本に向けて
  「前期よりはどの相手に対しても競ってくる場面が多くなってきたなと思います。(後ろに)下がって自分ができなくて負けたというわけではないので、その気持ちはこのまま続けていって、あとは技の精度を上げていったり、今足りないものを自分たちが気づいたら言いますし、後輩たちも何かあれば言ってという風に、誰か1人が言うんじゃなくて、みんなが言える環境っていうのを作っていければみんなで1つずつでも上がっていくんじゃないかなと思います。また今の流れを崩さずにそこにプラスαで勢いや決めなど、今課題にしているものが上手くついていけばいいかなというのは思います。」

「楽しくて強くなれるチーム」

  「自分たちの代は珍しく2トップがいて。自分と染谷と。やっぱりそれを生かして2人でチームを作っていくというのがこの代のやり方なのかなと思う」。 2014年12月、立大空手部主将に就任した宮武は、チーム作りについてこのように語った。さらに自分たちの強みを生かしたチーム運営の方針として、「男女の枠を超える」という意識を持っていた。 「同期の仲も良いし、男子だけ女子だけと言うよりかは、男女の枠を超えて男子・女子の幹部でチームを引っ張っていきたい」。 女子主将を務める茂木も「気持ちや雰囲気作りは一緒にしていけているというのは、良いかなと思う」 と、自分たちのチーム作りに向けて足並みを揃えていた。男女の枠を超えたチーム作りで目指すのは、「楽しくて強くなれるチーム」。もともとチームのムードメーカーだった宮武を中心に、かつての主将から今に至るまで引き継がれてきた楽しい雰囲気を継承しつつ、勝てるチームを目指した。


「第一段階としてはクリア」

  4月12日に行われた6大学戦。立大は男子が4位、女子が2位となり、昨年から順位を落としてしまった。しかし、男女とも上位校にあと一歩まで迫るなど、次に繋がる敗戦だった。 この試合で光ったのは、仲間を応援する際の空気感。立大は男女の垣根を超え、チームが一丸となって声を出し続ける。 「応援なども全員がコートに立っている人と同じ気持ちでできた」と振り返った茂木。「楽しくて強くなれるチーム」が順調に出来上がっていた。その要因について宮武は「楽しくやるっていうのが、一番」と分析した。声を出すことで雰囲気を盛り上げ、アドバイスをポジティブに伝える。メニューを作成する際は後輩の意見も聞くように工夫した。その結果、チームは常に沈むことなく前向きな空気に。さらに各々の「もっと強くなろう」という意欲が向上した。この日行われた女子個人の部における脇坂(コ2)の優勝は、まさに新チームの好循環を象徴していた。「みんなが名前を呼んで応援してくれてとても嬉しかった。声を出して応援を盛り上げたり、すごく良いチームになってきたと思う」と脇坂。チームの雰囲気の良さは下の世代にもしっかりと伝わっていた。「第1段階としてはクリア」。このチーム状況を宮武は満足げな表情で語った。

上々のスタートを切った立大空手部だったが、その後は思うように結果に結びつかなかった。昨年と遜色ない力があるはずなのに――。我慢の日々が続く。

「もっとストイックに、でも楽しくやれれば」

  10月12日に関東の舞台に立った部員たち。目標達成の第一歩となる試合に臨んだ。男女ともに強い気持ちで挑んだが、男子がベスト16、女子がベスト8止まり。ベスト4の壁は厚かった。 「ベスト4も全然狙える位置にいたと思う。結果が出ないのは、本当に大変」と宮武。その言葉からも、十分に実力があるはずなのに結果がついてこないというもどかしさが伺える。
春以降、楽しくやるだけではなく集中力を途切れさせないことにも気を配ってきた。時に宮武と染谷が空気を引き締める。「ここは集中して」と言葉に出して伝える。そうして練習中の空気をコントロールし、力をつけてきた。茂木は後輩の戦いぶりについて、「これだけ力がついたんだなと思うとうれしい」と目を細める。塚本も「前期よりはどの相手に対しても競ってくる場面が多くなってきた」と手ごたえを口にした。あとは蓄えてきた力を、全日本ベスト8という形で結実させるだけだ。全日本に向けても、宮武の方針は一貫している。「もっとストイックに、でも楽しくやれれば立教らしい組手ができて勝ちに繋がるかなと思う」。最後まで「楽しくて強くなれるチーム」で戦うことを誓った。

「これから成長していく」

  「空気がガラッと変わるぐらい全日本は全然実力が違う」。下級生の頃からその舞台で戦ってきた染谷は、全日本の厳しさについてこう語った。地区での予選を勝ち抜いた大学が集う全日本は、初戦からハイレベルな戦いが予想される。しかし、大舞台に向けて着々と準備は整ってきている。「チームとしても力が上がってきていると感じる」(茂木)「今、すごく意識高くやれている」(宮武)という言葉からも、パフォーマンス面・意識面ともに充実していることが伺えた。関東でより明確になった課題をしっかりと修正するのはもちろんのこと、学年・男女という垣根を超えて高め合える環境をこのチームは持っている。「もっとこれから成長していくと思うので、よろしくお願いします」。宮武は全日本への抱負を語る際、このように締めくくった。真の「楽しくて勝てるチーム」へ。宮武組の集大成に期待せずにはいられない。

◆試合日程◆
11月23日(祝・月) 全日本大学空手道選手権大会 大阪市中央体育館

(11月20日・インタビュー=荒木地真奈、糸瀬裕子、越智かれん
栗原一徳、平田美奈子/編集=糸瀬裕子)



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