独占インタビュー
〜高みを目指す・笠松悠哉〜
日本一の歓喜から2週間。笠松悠哉選手(コ4=大阪桐蔭)に突撃し、智徳寮で対談インタビューを行った。
春季リーグでは、持ち前の勝負強さを見せつけた彼。立大の4番を背負うその男が、春季の振り返りやチームメイトへの思い、さらには今後についてを熱く語った。
春季を振り返って
―まずはリーグ戦と全日本お疲れ様でした。
疲れましたね…。
―疲れというのは具体的に言うと?
ずっと緊張感やプレッシャーがある中で3か月間モチベーションを維持しなければならなかったし、何より3か月を最後まで経験したっていうのは初めてなので、全日本大学野球選手権でのモチベーションの保ち方っていうのは難しかったなと思います。
―自身の気持ち的にはリーグ戦優勝と全日本優勝のどちらがうれしかったですか?
大学に入って最初の目標として、18年間壁を超えられなかったリーグ優勝というのがチームとしてあって。まさか日本一というところまで届くと思っていなかったので、リーグ戦優勝っていう喜びの方が大きいですかね。やっぱり六大学は一番レベルが高いし、その中で勝って自信がついて、日本一になれたと思うので、リーグ優勝っていうのは大きかったかなって思います。
―ファンが選ぶMVPでは1位に選ばれました。
2年の秋に一回だけ4位になったことがあって、そのとき上位には高山(現阪神)とかがいたんですけど、こんなものがあるんやと(笑)。あんまり気にしてはいなかったんですけど、1位になんか負けているかなっていう気はしていましたね(笑)。でもやっぱりいろんな人が見てくれて投票してくれたって言うのがいちばんうれしかったし、もっと頑張ってまた一位を獲れるようになりたいですね。
―MVPの要因はどういったところにあると思いますか?
投票する人は何か印象に残る試合だったり、いつまでも頭に残るような印象深いプレーに入れてくれると思うんで、やっぱり一番の要因は明大戦での一打だと思いますね。でも守備の面でも前よりもスムーズに入れましたし、そういうところを見てくれる人は見てくれているのかなとも思いました。
―その守備について、レギュラーの中で一番失策が少なかったと思いますが。
一番多くて5つとかだったんですけど、下がっていって今回は2つで。それがいいわけではないし、もっとレベルを高めていこうと思うので、そういう意味ではまだまだ最後のシーズンに向けて、新たな課題があるなと。秋は何とかエラー0で行ければなと思います。
―昨季の落ち込みから今季見事な復活を果たしました。
3年の時は周りが見えずに、先輩がいるからいいやというような気持ちだったんですけど、4年になってから気づくこともあって、気持ちの持ち方やモチベーションなどが変わったんじゃないかと思います。今までは自分が打てなかったらへこむ、守備で失敗したらへこむっていうのを、試合中にまで持ち込んでしまうタイプだったんですけど、そこを4年になって変えられたというか。例えばピッチャーに何でもいいから声をかけたりすることで、自分もリラックスして体をスムーズに動かすことができるとか、そういうことが次の打席での修正につながって、打率にも影響するんだと思いますね。技術ではない、気持ちの持ち方っていうのが一番の変化なんじゃないかな。
―今期の成績、数字でうれしいものはありましたか?
あまり打率にはこだわっていないですし、残せるバッターでもないので…。正直ないですかね(笑)。本塁打ももう少し欲しかったですし、打点がリーグトップというのも、2年の秋に自分は16打点出しているので、ちょっと悔いが残りましたね。ただ慶大戦の3試合に出ていないので、チャンスでランナーを帰せている結果が打点に出ているのかなと思います。打点にはこだわりを持っていますし、いいピッチャーがいる中で1本出して点を取るっていうのが4番の仕事だと思っているので、17打点行きたかったなというのはあるんですけど…。まあ優勝できればいいかという感じですね(笑)。あとはエラーも0にしたいですし、ホームランも増やしたいし、打点も17以上はあげたいなとは思います。
―春季はケガもありましたが。
自分で自分を苦しめたケガだったので、悔しかったけどしょうがないというか。打ちにいった結果なので、悔しかったですけど切り替えて東大戦に向けてやるしかないと思っていました。周りがどう思っているのかはわからないですけど、自分では主力として出ている人間が抜けるということで、申し訳ないと感じながら見ていたので、そういう意味では早く合流して東大戦から頑張ろうと思えたので良かったです。
―六大学や全日本で緊張はありましたか?
もちろんガチガチですよ、特に選手権は。リーグ戦は何回もやっていますけど、優勝が懸かった試合は、すごい神様が見てくれているような気がして、こんなところで自分にもう一回チャンスが回ってくるのかっていう。あんまり神様とかは信じないですけど、すごくうれしかったなって思います。もちろんその時は緊張でしたし、選手権は毎試合緊張していましたけど、そこで変に自分の姿勢を崩すと駄目だと思ったので、延長入って緊迫した場面でも、守備入ったらピッチャーに声かけますし、自分だけの世界に入らず周りをしっかり見て、声かけて自信もって打席に入るっていうのが自分の3か月間通しての心構えだったので、自分自身に対するプレッシャーっていうのはなかったですね。今回はチームが守備で粘っていい流れを作って、中盤や終盤に逆転するっていうケースが多かったと思うんですけど、守備の良いペースがピッチャーを通じてできていたっていうのが、特に選手権では逆転勝利っていう形につながったんじゃないかなと思います。
チームメイトについて
―今年のマウンドは下級生が中心ですが。
中川(コ1=桐光学園)は怖いもの知らずというか、当たって砕けろ的な感じですね。もちろん声はかけますけど、手塚(コ2=福島)と田中誠(コ2=大阪桐蔭)はちょっと投げていますし、大体大丈夫だろうっていう気持ちで見ています。でもやっぱり後輩は後輩なので、声かけてあげるところはやってあげないとなとは思っていますね。別にアンサーしてくれなくても聞こえればいいというか、自分の世界に入ってキャッチャーミットばかり見ているのは駄目だと思うので、自分の声が耳に入ってくれるといいなという感じです。そういう意味ではサードはピッチャーに近いので、傍に寄り添って会話したりはしていますけどね。今回は全日本もリーグ戦も優勝したので、これからはすごい自信で投げるんじゃないですかね。そこに関してあまり細かく言う必要はないのかなと思いますけど、やっぱりピッチャーはどういう場面で投げるかっていうのがわからない大変なポジションなので、そういう意味では声かけてあげるのは大事なのかなと思います。
―後輩はかわいいですか?
そうですね(笑)。自分はあんまり怒らないですし、大学に来てまでガチガチにやっていたら自分の持っているもの出せないと思っているので、後輩にはのびのびやってほしいなという感じです。自分が一年の時は、先輩がいたり自分の気持ちの弱さもあったりして、のびのびやるっていうのができなかったので、そういう意味では嫌だったことを後輩に押し付けたくないですし、今いい選手ばっかりなので、本人のプレーを引き出せるように気楽にやれよって感じです。
―メンバー外の同期の方もいらっしゃいますが。
4年間集まった4年生、特に藤田(営4=県岐阜商)に関しては1年のころから投げていますし、4年になって後輩がマウンドに立って、本人が一番悔しいと思いますね…。自分たちとしても後輩が投げているっていう経験が今まであまりなかったので、一緒にアスリート選抜で入ってきた者として、最後もう一回一緒に神宮で優勝決めるときに戻ってきてほしいなと思います。一緒に頑張ってきた仲間なので、もちろんスタンドで応援してくれている人たちもそうですけど、一番身近というか、一番期待されていた人がけがの影響もあって、一緒にできないっていうのは、正直悔しいですし。一番彼がつらいとは思いますけど、最後は一緒のグラウンドで野球ができればと思っています。
―4年で成績を伸ばした選手も多いですが、それはうれしいですか?
そうですね。去年4年生が多かったのでもっと頑張ろうっていう感じだったんですけど、今回の野手でいうと、リーグ戦では自分と熊谷(コ4=仙台育英)と山根(営4=浦和学院)、大東(社4=長良)が主で、4年の意地というものが見られた試合が多かったので、やっぱりそこは懸けているものが違うなと。「やったろか」って気持ちが強い選手が多かったのかと思いますね。そこがチームにいい影響を与えているというか、4年生がプレー姿を見せれば後輩も勝手についてきますし、そういう意味では同期の活躍はうれしいですね。
今後に向けて
―来季は最終シーズンとなりますが、いかがですか?
今思えばあっという間な4年間だなという感じです。高校3年間より大学4年間の方が速いんじゃないかっていう(笑)。最後になってみないとわからないかもしれないですけど、高校の夏みたいなものだと思うので、悔いのないようにできればいいなと思います。
―上のステージも見据えたシーズンとなりそうですが。
今回の春どうなるかと思っていましたけど、立ち居振る舞いや結果でそれなりの成績は残せたと思うので、秋はこれに満足することなく結果や立ち居振る舞いを意識していきたいですね。春駄目だったら社会人でやろうかとも思っていたんですけど、今回で結果的にも人間的にも成長できたと思っているので、プロの世界に挑戦したいっていう方向で行きたいなと思います。そういう覚悟をもって臨みます。
―ファンへのメッセージをお願いします。
そんなうまいこと言えないですけど(笑)。選手9人とベンチで勝てた試合っていうのはなかなかなかったと思いますし、日本一は59年ぶりで待ち望んでいたファンも多い中、あれだけの声援を送ってくれていたのは本当にすごいことだと思います。あんなにファンがいるんだっていうのも感じましたし、そういう意味ではスタンドも一体となって優勝することができたので、自分たちだけでの優勝ではなく、ファンの声援が大きかったと思っているので、すごく感謝しています。今後もまた応援されるような選手やチームにならないといけないと思うので、秋に向けてそういう一体感を持っていければなと思います。この優勝は改めてファンの声援の賜物だと思っているので、本当に感謝しています。
春には大きな飛躍を遂げた彼。この成績に驕ることなく、さらなる高みへと挑んでいく。大舞台を見据えるその眼は、凛々しい輝きを秘めていた。
(8月25日・久保田美桜)
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