エリック物語 第3章

日本ラストゲームは12月10日?!

ダイドードリンコへ急げ!


  

  20歳前後の大学チームに40歳の留学生が突然入部し、迎え入れるのはそう容易い話ではない。年齢が倍違えば、言語も違う。最初は、コミュニケーションをとることに苦労をしていた。だが、入部して3カ月経った今は、というと。

  「慣れた感じはしている。みんな徐々にではあるが話しかけるようになったのでチームに溶け込んでいる。どんどんこっちも話しかけるようになったので自分たちもプラスの面というか、エリックがいるだけでプラスに感じられる部分があるのでいい影響を与えてくれる存在。人としても素晴らしい人なので、見習うべき点も多いし、チームにプラスの影響を与えてくれる。プレーだけでなく、人生の先輩としても選手に与える影響は大きい」(野尻=法4)。
  「(チームの)雰囲気が明るくなった。積極的に声をかけてもらっているし、自分たちも話しかけてコミュニケーションをとっている」(大宮=コ3)。
10月22日、エリック(中央)の40歳の誕生日を部員が祝った【提供:アイスホッケー部】


  その言葉を象徴するいくつかのシーンがある。試合中、ことあるごとに選手がゴール前のエリック(文4)へと駆け寄り、ハイタッチを交わす。自身がベンチにいるときは、仲間が好プレーを見せると壁を強く叩き、チームを鼓舞する。練習後は選手が持ち回りでエリックを家まで送迎するのが恒例。佐山(済1)は「1時間もエリックに英語で質問攻めにあったよ」と笑っていた。

  自身の半分の年齢の選手とプレーすることに関して、「若い子に囲まれているから自分も若いような気になる。チームの一員としてやるのは久々だから、とても良いメンバーに囲まれて楽しい。(言語の壁も)みんな優しいから頑張って英語で話しかけてくれて、どうにか自分も毎週一言二言の日本語を覚えているので頑張っていきたいです」と話していた。

  豊富な経験は選手にとって教材だ。上床(社2)は「シュートが苦手だったが、エリックとかにいろいろ教えてもらって強いシュートが打てるようになった」と話す。同じGKの中里(法4)は意識しつつも、「自分が悪いプレーをしたときや分からないことは聞くようにしている。熱い心を持っている方で、僕は試合にもし出たら、このチームのために全力で戦うよと言っていたので、すごく勝ちに対する意識があると思います」と“エリック先生”を師事している。また、MG・橘(法1)が「エリックには英語を練習させてもらっています」と話すように、“英会話の先生”としての顔も併せ持つ。
  プロで何を学んだのか問うた時、エリックは「一番参考になって、尊敬しているのはベテランの選手。例えば、上のリーグからきた選手とか、長年やっている選手は試合や練習に対する姿勢が真摯で勉強になった」と話していた。40歳になった今は、自分がその役目を果たしている。
試合後、主将・野尻の背中をそっと支え言葉をかけるエリック


  今季最終戦後、細谷監督はリーグをこう振り返った。
  「1部A、Bと合わせて14チームあるが、未経験者を交えてチームを作っているのは立教だけ。経験値がものをいうスポーツだから、小さいころからスキルを持っている経験値の高い人間を揃えないとなかなか上のリーグでは勝てない。その中でも1勝、入れ替え戦を回避することを目標としていたので、達成できなかったのは悔しい。だが、1試合目から10試合目にいくまでにはだんだん試合内容が良くなった。チームは成長してくれたと思う」。

  開幕前から、チームの前評判は高かったが、エリックの加入で成長の速度が速まったと言って過言ではない。
  長年、大学アイスホッケーを取材するスポーツジャーナリストの白髭隆幸氏は「彼の加入は大きいね。正面からのシュートはほとんど止めるし。立教の守備が良くなったのはGKがほとんど止めてくれているからだと思うよ」と分析していた。
  立大は今週日曜日、負ければ2部降格となる入れ替え戦へ臨む。エリックは12月末のインカレには帯同しない予定のため、入れ替え戦が最後の試合となる可能性が大きい。是非、チームの勝利と現時点でのエリック・スキャンランのラストゲームを見にダイドードリンコアイスアリーナへ足を運んでいただきたい。


〈入れ替え戦 対筑波大〉
12月10日 12時30分〜 ダイドードリンコアイスアリーナ(東伏見駅から徒歩1分)



(12月7日/編集・取材=浅野光青)



   Erick Scanlan (エリック・スキャンラン)
   文学部所属。アメリカ国籍。1977年10月22日生まれ。40歳。ニューヨーク州アストリア市出身。プロでの経歴は、Jacksonville Barracudas(2002〜2003)、Orlando Seals(2003〜2004)、Miami Manatees(2003〜2004)。家族は父と母。180a、82`。趣味は外食とテレビゲーム。日本でのリフレッシュ方法は埼玉県新座市の新座温泉に行くこと。好きな日本食はトンカツ。埼玉県内の寮で一人暮らしをしているため、電車で池袋まで通う。週に5日は登校し、普通の学生と何ら変わらない生活を送っている。帰国するまでにしたいことは、「箱根や大阪、京都、札幌に行くこと。日光でプロの試合を見ること」。


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