レスリング部主将・宮川賢志

独占インタビュー 

引退まで残り2試合、「悔いがないように」


   残り2試合で競技生活の引退を迎える主将・宮川賢志(みやがわ・まさし=法4)が8日、「立教スポーツ」編集部の単独インタビューに応じ、有終の美を誓った。1か月前、8強入りを掲げて臨んだインカレでまさかの初戦敗退。チームでも全敗を喫した。その時の胸中とは。そこから、どのように這い上がったのか。現役のラストスパートへ駆け出すキャプテンの、熱い思いに迫った。
後輩へ指導する宮川(左から2番目)


―インカレ(8月28〜30日)でまさかの初戦敗退。立大選手は1つも勝つことができませんでした
   「立大で1人も勝てなかったのが、本当に悔しかった。自分が練習を仕切って夏休みも頑張ってやってきたけど、結果がついてこなかった。それは自分の責任だと感じる。頑張ったからといって勝てないと言うのは分かっています。でも、やっぱり悔しかった。ただ、それで悔しいのを引きずるわけにもいかない。それを転換して、後輩に引き継いでいけるような体制づくりを2か月間やっています」

―主な敗因は何でしょうか
   「技術というよりは、減量をし過ぎたというのが敗因。71キロ級で出たけど、直前に5s増えて、そこから1日で5s減らしてっていう荒業をしたんだよね。サウナを20回往復したりして、無茶苦茶なことやっていました。それで、試合になったら体が全然動かない。それがよくなかったかな」

―減量を間違えたということでしょうか
   「間違えるどころか、もうめちゃくちゃ。水抜きもして、倒れそうになりながらいつもよりめちゃくちゃな減量をした。ちっともセーブせずに、普通に食べてしまったんだよね。後になって、良い思い出になればいいかな。今は苦い思い出でしかないけど(笑)。インカレでは結果が出なかったけど、夏に一生懸命練習したのが無駄だとは思わない。あれが1年後、2年後、3年後と後輩たちが結果を残してくれば意味があったと思うし、自分も次の試合でやってきたことが出るかもしれない。その意味では、後輩たちに悪い練習だったと思って欲しくない」

―この1か月間はどんな気持ちで過ごしてきましたか
   「インカレ終わってちょっとだけ一息ついて、すぐに同志社戦があったので練習をやりました。特に練習内容を変えたりはしていません。でも、気持ちは大きく変わったと思う。今は、あと2試合で現役が終わってしまうので、思いっきりレスリングができるように練習しています。夏のような追い込みすぎた練習はしていません。楽しくやるだけです」

―気持ちの変化はなぜでしょうか
   「思うように結果は出なかったけど、スポーツに勝ち負けは絶対にある。だったら、どうせなら楽しくやりたいと。だから楽しく。今はただ楽しくやれたらいいです」

―残る2試合とは、全日本グレコ(21、22日)と内閣総理大臣杯(11月11、12日)
   「ドミノ倒しのように来るよね。目標は、ただ一つ一つを大事に勝っていくだけです。かなりレベルの高いところになっていくと思う。各大学の階級で1人しか出ないから、組み合わせによってはすごい相手になるかもしれない。でもチャンスがあるかもしれないから、自分のできる最大限をできるように練習をやっていく。それだけやって悔いがないように試合をしたい」
次期主将・芝(法2)と組み合う


―その2連戦で引退となりますが
   「気持ちを表すのが結構難しくて。自分は10年間レスリングやって、結構キャリアは無駄に長いほうなんだよね。その無駄に長いのが終わるのかと。一瞬でしたね。レスリングが生活の中心だったので、この4年間は毎日授業行って、戦う日々だった。割と4年生になる前は『今日も練習だるいな』と思っていたんですけど、最後になると名残惜しいというか。あーもう終わりかと。最近は練習を嫌だと思うこともないですね。やっぱりそれは最後の力だと思っています」

―最後、ご両親が観に来たりもするのでしょうか
   「福井でやる内閣総理大臣杯に来るみたい。出身が香川なので意外と近いんですよね」

―4年間の思い出といえば何がありますか
   「やっぱりレスリングが1番ですね。東日本のリーグ戦とか『またこの時期が来たか』と。試合前の吐きそうな感じとかね」

―主将として、半年間やってきたことで立教が“変わった”と感じていますか
   「もうすでに感じています。前とは全然違うよ。まず、練習に毎日人が来ることが違う。俺が2年生の時に、キャプテンなんて月に1回しか来なかった。主務は5日に1回。それで1個上の先輩はやる気あったんだよね。その状況からすると毎日練習に来ているのは、初歩的なことなんだけど、変わってきたのかなと思う。全日本グレコとか内閣総理大臣杯とかも出なかったし。エントリーすれば出れるんだけど、試合に出たくない人が多かった(笑)」
宮川は相撲の時もレスリングの技で相手を倒す


―最後の2連戦の意気込みをお願いします
   「練習で精一杯頑張って、悔いのないように。なければ悔いが残るから勝つこと」


   宮川は時にシングレットを脱ぎ捨て、まわしを着ける。人数不足の相撲部のため、何度も助っ人として一肌脱いできた。9月30日に行われた東日本学生相撲リーグではチーム最多の4勝を挙げ、Bクラス6位に貢献した。

―「立教スポーツ」編集部の相撲担当が、宮川さんが強かったと言っていた
   「1番俺が勝ったっていう(笑)。他に控えがいたけど、監督に『宮川は調子いいから行け』と。変に気を張らずに出ることができたのが、うまいこと勝てた要因かな」

―相撲とレスリングの違いとは何でしょうか
   「違いは試合の短さだな。レスリングは6分かかるけど、相撲は3秒で終わる。こんなこと言ったら怒られるけど、集中力はそこだけに持っていけばいい。レスリングみたいにストーリーがないから、その一瞬だけ気合を入れればいいから意外とできちゃう(笑)」

―レスリングの技を出すこともあるのでしょうか
   「レスリングしかしないね。『はっけよい、のこった』で普通はパッと行くんですけど、自分は前より後ろに1回下がって、廻しを取られたら終わりだから、絶対取られないように。引き落とすか横に出してやるかの2つしかない。それで勝てる時がある」

―これまでに何回出場しましたか
   「今回で9回目です。来月、内閣総理大臣杯の1週間前に相撲のインカレに出ます(笑)」

―レスリングに支障が出なければ良いですね…
   「本当にそうなんですよ。もうそこが怖くて。怪我さえしなければいい。でも、向こうに行ったついでに関西の大学でレスリングの出稽古ができたりするんだよね。交通費が出るから(笑)」



取材後記
   今回のインタビューでは、「悔しい」と強い口調で言ったシーンが一番印象に残っている。その思いは、インカレ直後に更新されたレスリング部のブログにも表れていた。


   「フリー、グレコともに誰も一勝できないという結果となってしまいました。このような結果は私が在籍した四年間をみてもはじめてです。この結果は、すべて主将である私の責任であると、深く反省しております。本当に申し訳ありませんでした」


   主将として半年間率いてきた宮川にとって、ショックな試合だった。しかし、その後は前を向き、今は終わりの近い現役生活を楽しみながら過ごしているという。引退まで残り2試合。10年間の気持ちをぶつけ、すべてを出し切ってほしい。そして、私は勝利の瞬間を楽しみにしている。



【現役最後の2連戦】
全日本大学グレコローマン選手権
10月21、22日 神奈川・平塚市総合体育館

内閣総理大臣杯全日本大学選手権
11月11、12日 福井・おおい町総合運動公園体育館
(10月20日・浅野光青)





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