2025年度租税法2(EX412)
期末試験解説 2026年1月26日(月)1時限実施
配点は時間配分の目安であり、問題に関し租税法学上意味のある記述には配点を超える加点の可能性がある。抜粋されてない条文も関係しうる。抜粋されている条文が解答に関係する場合、条項号を記せ。解答に際し数値例を自作することが望ましく、計算結果が間違っていても過程に加点する可能性がある。原則として日本現行法令に依拠するが、震災復興増税・地方税は無いものとし、(1)を除いて付加価値税は考察しないでよいものとし、内国法人に係る法人税率を30%とする。日本とX国の租税法令は同様であるが、X国の法人税率は40%であるとし、両国の通貨単位はともに円であるとする。日本とX国はOECDモデル租税条約と同内容(23条はB:税額控除方式)の条約を締結している。
井芹仁菜(以下、I氏)が所属する音楽バンド(トゲナシトゲアリ。以下、T)は、日本法人たる揚羽春社(以下、A社)の従業員である三浦潮美(以下、M氏)に見初められ、TはA社に所属する契約を締結した。I氏は別の音楽バンド(ダイヤモンドダスト。以下、D)を異常なまでに敵視していた。TはDと対バンで勝負することとなったが、DにTが敗れたため、A社に多額のマイナスが生じた。A社は、X国法人たる紅生姜社(以下、B社。A社と独立の関係にある)の日本支店から借金した。この借金の返済のために、或る年度においてA社は元金1000万円、利子100万円を支払った。この支払いに関し、B社側において経費は所得(gross概念とする)の7割であった。ところで、Dに敗れたTのI氏は、気が動転し、A社の社屋内で暴れ、A社の備品を蹴り壊してしまった。その翌日、M氏がA社備品損壊に気付いた。
(1)(20点)付加価値税がない場合とある場合の需要曲線、供給曲線のグラフを描き(需要曲線の方が傾きが急であるとする。精密に言えば需要の価格弾力性が供給の価格弾力性より低いとする)、付加価値税の負担が生産者と消費者との間でどのように帰着するか図示せよ。
(2)(25点)A社のB社に対する返済についてB社に租税条約7条と11条がどのように適用されるか、そして日本への納税額がどうなるか、説明せよ。
(3)(15点)A社のB社に対する返済についてB社のXへの納税額がどうなるか、説明せよ。
(4)(15点)A社のB社に対する返済についてA社の法人税法上の計算はどうなるか、説明せよ。
(5)(25点)I氏の不法行為に関しA社の法人税法上の計算はどうなるか、犯人がI氏であると分かっている、分かっていない、等、場合分けしつつ説明せよ。
解説
(1) 講義ノート6.4.6.
(2) 教科書306-309頁、318-319頁。租税条約11条4項によりPE帰属利得は7条の管轄となる。従ってB社日本支店が受領する100万円の利子収入から、それに対応する費用を控除した後の、利得に対して、日本の法人税率30%を適用する前提で、日本支店が日本に申告納税をする。
(3) 教科書320頁。外国税額控除を説明する。
(4) 法人税法22条3項の損金の説明をする。B社はA社と独立の関係にあるので、移転価格税制や過少資本税制や過大支払利子税制を考える必要はない。
(5) 教科書175頁、百選7版69事件(損害賠償請求権の益金計上時期――日本美装事件・東京高判平成21年2月18日訟月56巻5号1644頁)の解説を参照。先ず、不法行為による損害は法人税法22条3項3号の損失として損金に計上する。原則として、同時に同額の損害賠償請求権を益金に計上する(損益同時両建説)。しかしこの原則があてはまるのは不法行為の加害者をA社が分かっている場合の話であり、加害者が不明であれば損害賠償請求権を行使しようがないから加害者が分かるまで益金に計上しなくてよいという考え方もありうる(損益維持両建説)。加害者が分かるか否かは通常人を基準にして、損害賠償請求権の権利行使が期待できない客観的状況にあったかどうかという観点から判断する。加害者が分からないままであれば益金のたちようがなく、損失の損金が計上されてそれで終わり。加害者が分かれば、益金に計上する。しかし、加害者が分かって益金を計上しても、結局、損害賠償金を回収できない、ということも生じうる。その場合は、興銀事件・最判平成16年12月24日民集58巻9号2637頁と同様に、全額回収不能であることが客観的に明らかになった時点で回収不能額を損金に算入する。一部回収できて残額が回収できない場合は、残額全額回収不能であることが客観的に明らかになった時点で回収不能額を損金に算入する。
【講評】たぶん受験者が少なすぎて出来ない。
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