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2019.7.1(月)

【学内向け】2019年度スカラシップ採択結果

審査結果

2019年度立教大学映像身体学科学生研究会スカラシップの採択結果は以下の通りです。

【研究部門】
早川由真  〈ニュー・ハリウッド〉期のリチャード・フライシャー作品における映画的身体の存在論

【制作部門】
河邊怜佳  劇映画『求行くとき』

審査経過

2019年度スカラシップには研究部門、制作部門の両部門あわせて3名の応募がありました。

【一次審査】

【研究部門】
一次審査では、1名の応募があり1名が二次審査に進みました。
[一次審査審査員]
大山載吉、仁井田千絵、横山太郎

【制作部門】
一次審査では、2名の応募があり2名が二次審査に進みました。
[一次審査審査員]
砂連尾理、篠崎誠、万田邦敏、山田達也

【二次審査】

【研究部門】
二次審査では、1名を審査した結果、1名が選ばれました。
[二次審査審査員]
大山載吉、横山太郎

【制作部門】
二次審査では、2名を審査した結果、1名が選ばれました。
[二次審査審査員]
砂連尾理、篠崎誠、万田邦敏、山田達也

講評

各審査員からの講評は以下の通りです。

【研究部門】

大山載吉、横山太郎

審査結果

早川由真氏のスカラシップ申請につき、二次審査(面談)をおこなった結果、「可」と判断した。

審査経過

審査委員からは、(1)アメリカ出張が12月になる理由、(2)それをふまえた成果報告を年度内におこなうことができるかどうか、(3)映画的身体の存在論の理論構築において当該調査が必要である理由等について質問したが、いずれについても説得的な回答を得た。また早川氏は、博士論文全体の構想のなかにおける今回の調査の位置づけをわかりやすく説明した。

【制作部門】

砂連尾理

河邊さんの作品は1年時より人間関係の揺らぎを扱ったテーマを一貫して創作している点を高く評価しました。またジェンダー的な視点も踏まえ、今日の社会問題にもきちんと応答していこうとする彼女の姿勢は今回のスカラシップ支援を行うことで作品がより社会に開かれ、分脈を超え多角的な対話を生むことが期待されると判断しました。

篠崎誠

「大人と子供の境界線」を物語的なテーマ(それだけであれば、これまでも多くの映画が作られてきましたが)として取り上げるだけにとどまらず、「人(モノ)と人」「空間と人(モノ)」「時間と空間」など、映像表現固有の表現を意識して、映画を作りたいという河邊さんの問題意識、企画意図は、真摯なものと感じました。また、河邊さんのみならず、撮影や録音など、スタッフとして関わる映像身体学科生たちにとっても、学科の学びだけでは得られない技術的な修練の場になりえると考えました。これまで彼女が手掛けてきた過去の映像作品を見ても、充分実現可能な企画だと思い、本企画を推しました。ただし、面接の際、本人に指摘しましたが、脚本に関しては、相当の覚悟をもって改稿する必要があると思いました。特に「不妊治療」というデリケートな問題を描くことに関しては、SNSなどで通りいっぺん調べて終わりではなく、様々な形でリサーチすべきです。それを直接的に映画で描くかどうかは別に、しっかり調べてください。期待しています。

万田邦敏

父親と二人暮らしの16才の女子高生が父親と衝突して家を出て、バイト先で知り合った37才の主婦の家に成り行きから転がり込む。女子高生はこの主婦に、母親の愛情とも同性としての友情とも知れぬ親近感を抱き、一方、不妊治療をめぐって夫と感情的に齟齬を来している主婦は女子高生の好意を受け入れ、おりしも地方に出張した夫の留守の間に、二人は数日間共同生活を送る。その間の二人の感情の交錯を関係の変化として描くことが応募作品の物語的な主題である。応募者は3年生なのでおそらく21才と思われるが、主人公を片や自分より年下、片や自分より年上に設定し、21才の大学生としての日常から離れた人物の関係を映画の物語(つまりフィクション)として誠実に描写しようとする意欲に感心した。応募者にとっては大人を描くことは挑戦でもあるはずで、その点でもスカラシップ作品に相応しいと思われた。添付されたシナリオはまだまだ弱いが、基本はできているので、今後の直しにも十分耐えられると思われ、完成した映画を見たいという思いに駆られた。以上の理由から河邊怜佳を推した。

山田達也

「大人と子供の境界線」をテーマとし『人(モノ)と人』『空間と人(モノ)』『時間と空間』のそれぞれの関係性を意識して表現していきたいとの説明と、審査資料として提出された今までの作品から、この作品の制作に対する意欲と真摯な態度を感じました。脚本はまだ改訂の必要があると思いますが、制作の過程において河邊さんだけでなく参加する学内のキャスト、スタッフの技術的、精神的なステップアップと新たな表現の発見やその幅の広がりの獲得も期待でき、学科にとっても有益なものになると考えます。そして何よりも、河邊さん自身監督として、先頭に立って問題や困難を乗り切って作りあげていく力もあると思いました。以上からこの映画の制作は映像身体学科スカラシップ作品に値すると判断しました。

最後までこの映画の完成に向け頑張ってください。期待しています。