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励起子生成によるNe固体表面からのエキシマーの脱離


平山孝人,安達俊,浜松諭子,石井聖士,荒川一郎
学習院大学理学部

 低エネルギーの電子および光子を用いて固体中あるいは表面上に励起子を生成すると,周囲との相互作用の結果,粒子の脱離が観測される.この現象は電子遷移誘起脱離(Desorption Induced by Electronic Transitions; DIET)と呼ばれ,固体中および固体表面での電子的エネルギーの動的な散逸過程に直接関連した現象として注目され,研究が行われている.我々は以前から希ガス固体表面を標的として,励起原子の脱離に注目して研究を行ってきた[1].希ガス固体表面からの励起原子の脱離に関しては,今までの研究により,励起原子の広がった波動関数と周囲の原子との反発相互作用を起源とするCavity Ejection (CE) 機構と,分子状励起子の解離によるExcimer Dissociation (ED) 機構の二つの脱離機構が提唱され,実験によりその有効性が確かめられている.希ガス固体表面からの励起二量体(エキシマー)の脱離に関しては,理論的・実験的にいくつかの報告があるが,励起子生成に起因する脱離についてはまだ確認されていない.今回我々は,低エネルギー電子および光子衝撃により固体Ne表面からの励起子生成に起因するエキシマーの脱離を初めて確認した.
 実験は,電子衝撃の実験(Electron Stimulated Desorption; ESD)を学習院大学で,光子衝撃(Photon Stimulated Desorption; PSD)は分子科学研究所UVSOR,ビームラインBL-5Bを用いて行った.脱離したエキシマーは,真空中で脱励起して真空紫外光を放出する.この光をMCP(有効径75mm)と二次元位置敏感検出器 (Quanter Technology, Inc.)を用いたピンホールカメラで二次元像として測定した.ESD実験により得られた発光の空間分布の例を図1に示す(入射電子エネルギー:150eV).標的固体表面はX=0の位置にあり,図の左から電子ビームが入射する.サンプルを回転させ,試料表面からの発光および試料近傍からの発光がピンホールカメラに入射しない条件で測定した.
 系統的な測定の結果,エキシマーの脱離運動エネルギー,脱離時の振動状態分布,エキシマーの脱離機構などの知見を得た.詳細は当日報告する.

参考文献
[1] I. Arakawa, in "Molecular Crystals and Liquid Crystals", (Gorden and Breach Science Publishers, 1998), in press.