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レーザープラズマ真空紫外光源の設計・製作


安達俊,栗山大人,阿部彰雄,平山孝人,荒川一郎
学習院大学理学部

 我々は以前からシンクロトロン放射光を用いて希ガス固体中および表面上の励起子生成に起因する粒子の脱離現象に関する研究を行ってきた.同様の研究を実験室内で行うために,今回レーザープラズマを用いた真空紫外光源を設計し,現在製作中である.レーザープラズマ光源とは,高出力レーザーを金属標的表面に集光して照射し,生成される高密度プラズマからの発光を用いるものである.標的金属の種類やレーザーの強度・密度を適当に選ぶことにより,X線から可視光までの広い範囲の波長の光を得ることが可能であり,出力光の波長分布も,連続光から線スペクトルまで得ることが出来る.

 今回設計したレーザープラズマ真空紫外光源の概略図を図1に示す.装置はプラズマ発生室・分光器室・出射スリット室・後置鏡室からなっていて,全長は約2.7mである.Nd:YAGレーザー(出力30W,パルス幅10nsec,繰り返し周波数50Hz)の光(波長532nm)をレンズで標的金属表面上に集光し,プラズマを生成する.プラズマからの光は真空紫外分光器(Jobin-Yvon社,TGM1400型)により分光される.この分光器には3枚の回折格子が設置されていて,約10eVから300eVまでの真空紫外光を得ることができる.光源(プラズマ)の大きさが小さい(100µm以下)ので,分光器の入射スリットは使用していない.プラズマから発生するdébris(ちり,ごみ等)の回折格子への付着を避けるために前置鏡を用いている.また,表面実験用極高真空槽(10-9Pa)とプラズマ発生室(10-2Pa)との圧力差を得るため,ビームラインにピンホールを設け,差動排気を行う.
 この光源で期待される性能,および予備実験の結果を当日紹介する.