平成25年10月31日 教育再生実行会議
はじめに
世界は、グローバル化が急速に進展し、人や物、情報等が国境を越えて行き交う大競 争の中にあります。日本が将来にわたって国際社会で信頼、尊敬され、存在感を発揮し つつ発展していくためには、世界を舞台に挑戦する主体性と創造性、豊かな人間性を持 った多様な人材が、社会の様々な分野で活躍することが求められます。また、少子・高 齢化の進展に伴い、生産年齢人口が大幅に減少していく中で1、経済成長を持続していく には、イノベーションの創出を活性化させるとともに、人材の質を飛躍的に高めていく 必要があります。
そのためには、教育の在り方が決定的に重要であり、若者の能力を最大限に伸ばして いくことが不可欠です。これからの世界や日本を担う人材の育成に当たっては、夢を持 ち、それを強い志に高め、実現に導く情熱や力、社会に貢献し責任を果たす規範意識や 使命感が必要であり、幅広い教養と日本人としてのアイデンティティ、語学力や交渉力、 多様な人と協働する力を含めたコミュニケーション能力、課題発見・探究・解決能力、 リーダーシップ、優しさや思いやりといった豊かな感性などを培うことが重要です。
このような力は、義務教育の基礎の上に、高等学校、大学の段階で伸ばしていくもの ですが、その間をつなぐ大学入学者選抜が、高等学校や大学の教育に大きな影響を与え ています。すなわち、知識偏重の1点刻みの大学入試や、本来の趣旨と異なり事実上学 力不問の選抜になっている一部の推薦・AO入試により、大学での学びに必要な教養や 知識等が身に付いているかどうかを確認する機能が十分発揮されておらず、i)大学入 試に合格することが目的化し、高等学校段階で本来養うべき多面的・総合的な力の育成 が軽視されている、ii)大学入学者選抜で実際に評価している能力と本来大学が測りた いと考えている能力との間にギャップが生じ、学生にとっても大学入学後の学びにつな がっていない、などの課題が指摘されています。
大学入学者選抜は、本来、高等学校教育を基盤として、各大学のアドミッションポリ シー(入学者受入方針)の下、能力・意欲・適性を見極め、大学での教育に円滑につな げていくことが求められます。このため、大学入試の仕組みの改善のみを問題にするの ではなく、高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の在り方について、一体的な改革 を行う必要があります。
教育再生実行会議では、1高等学校教育の質の確保・向上、2大学の人材育成機能の 抜本的強化、3能力・意欲・適性を多面的・総合的に評価しうる大学入学者選抜制度へ ( 国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成 24 年1月 出生中位・死亡中位推計)」によると、生産年齢人口は、2010 年の約 8,200 万人から 2060 年には約 4,400 万人へ、約 46%(年率 1.2%)の減少が見込まれている。) の転換を提言します。こうした改革の一環として、以下に述べるように、高等学校段階 における学習の達成度を把握し、高等学校の指導改善や大学入学者選抜に活用する新た なテストを導入する必要があると考えます。政府においては、本提言を踏まえ、専門的・ 具体的な検討を行うとともに、高等学校や大学等の関係者の意見にも十分留意し、合意 形成を図りながら、丁寧かつ着実に取組を進めることを期待します。
1.高等学校教育においては、基礎学力を習得させるとともに、生徒の多様 性を踏まえた特色化を進めつつ、教育の質の向上を図り、志をもって主体 的に学び社会に貢献する能力を習得させる。
高等学校教育においては、生涯にわたって学習する基盤が培われるよう、義務教育 の基礎の上に、主体的に学ぶ習慣と文系・理系を問わない幅広い教養を身に付けさせ、 その上で、一人一人の個性の伸長を図りつつ、一定の専門的な知識等を習得させると ともに、社会の発展に寄与する志や責任感を養うことが求められます。
そのためにも、生徒の多様な状況や学習ニーズに対応して、高等学校教育の特色化 を進めるとともに、体験活動を充実し、能力や意欲に応じて様々な進路に挑戦できる ようにする必要があります。
併せて、教育活動の質の確保について、大学入試にその機能を頼るのではなく、高 等学校教育の責務として、絶えず質の向上を図っていくことが求められます。中でも、 高等学校における基礎的・共通的な学習内容については、その学力を不断に把握・検 証し、指導の改善にいかしていく仕組みが必要です。
(1)全ての生徒が共通に身に付けるべき資質・能力の育成
○ 国は、基礎的・基本的な知識・技能や思考力・判断力・表現力等について、高 等学校において共通に身に付けるべき目標を明確化する。学校は、生徒に対し、 主体的に学習に取り組み、生涯にわたって学ぶ基礎となる力、社会の一員として 参画し貢献する規範意識等の基礎的能力を確実に育成する。
○ 国及び地方公共団体は、インターンシップ、ボランティア活動等の多様な体験 活動の充実、海外留学の促進、文化・芸術活動やスポーツ活動、大学や地域と連 携した教育機会等の充実を図る。学校は、生徒がこれらの能動的・主体的な活動 に少なくとも一つは深く取り組むよう指導・支援する。
○ 地方公共団体及び学校は、生徒が自らの夢や志について主体的に考え、学ぶ意 欲を高めるとともに、能動的に学び自己を確立していくことができるよう、キャ リア教育を充実する。その際、社会で活躍する卒業生や産業界と連携したキャリ ア教育・職業教育の充実を始め、学ぶ内容と実社会・実生活との関連を念頭に置 いた教育の実践を図る。
(2)生徒の多様性を踏まえた学校の特色化
○ 生徒の多様性を踏まえ、地方公共団体及び学校において、例えば、次のような 特色化を進めるとともに、国が適切な支援を行うことにより、教育を充実する。 ・グローバル・リーダーとなるための国際的素養と総合力を育成する学校 ・科学技術人材としての素養の育成を目指し、先進的な理数系教育を行う学校 ・産業構造の変化等に対応した専門的な知識・技能を育成する学校 ・学び直しへの支援、考える力の育成、学習意欲の喚起を図る学校 ・進路への自覚を深めさせるため、多様な科目選択や就業体験等を行う学校
(3)学習成果や教育活動の把握・検証による教育の質の向上(達成度テスト(基 礎レベル)(仮称)の導入)
○ 国は、基礎的・共通的な学習の達成度を客観的に把握し、各学校における指導 改善や生徒の学習改善にいかすための新たな試験の仕組み(達成度テスト(基礎 レベル)(仮称))を創設する。同テストは、高等学校教育の質の確保・向上を目 的として、高等学校の教育課程における基礎的・共通的な教科・科目について、 生徒の多様な状況に応じ、高等学校在学中に複数回受験できる仕組みとすること を検討する。
○ 達成度テスト(基礎レベル)(仮称)の試験内容は、基礎的・共通的な教科・科 目の学習達成度について、知識・技能だけでなく、その活用力、思考力・判断力・ 表現力等を含めた幅広い学力を把握・検証できるものとする。同テストは、高等 学校の単位及び卒業の認定や大学入学資格のための条件とはしないが、できるだ け多くの生徒が受験し、結果を学校や生徒に示すことにより、学校における指導 改善や、生徒の学習意欲の喚起及び学習改善につなげる。民間の検定や各種試験 との相互補完により、生徒の学習習慣の定着を図る方法も模索する。
○ 以上の方針の下、達成度テスト(基礎レベル)(仮称)の具体的な実施方法(教 科・科目や出題内容等)や実施体制、実施時期、名称、制度面・財政面の整備等 について、高等学校における教育活動に配慮しつつ、関係者の意見も踏まえ、中 央教育審議会等において専門的・実務的に検討されることを期待する。
○ 国及び地方公共団体は、ジュニアマイスター顕彰制度2や職業分野の資格等も活 用し、生徒の多面的な学習成果の評価の仕組みを充実し、生徒が進学や就職にも 活用できるようにする。
( 高等学校の工業系学科に在籍する生徒に対し、職業資格の取得や技術・技能検定の合格、競技会等での成果を顕彰する制度で、公益 社団法人全国工業高等学校長協会が実施している。主に工業に関する資格・検定等(約 200 項目)の成績が点数化され、合計点に応 じて、「ジュニアマイスターシルバー」(30 点以上 45 点未満)、「ジュニアマイスターゴールド」(45 点以上)として認定される。 ) ○ 学校は、教育活動の質を向上させていくため、自らの教育活動の成果等を不断 に検証する学校評価を通じて、学校運営の組織的・継続的な改善を図るとともに、 積極的な情報発信を行う。
2.大学の多様な機能を踏まえ、大学教育の質的転換、厳格な卒業認定及び 教育内容・方法の可視化を徹底し、人材育成機能を強化する。
第三次提言で述べたように、知識・情報・技術が社会のあらゆる領域で活動の基盤 となる知識基盤社会にあっては、大学が担うべき役割は一層大きくなっています。大 学は、これまでの延長線上ではなく、将来を見据えて必要となる人材を輩出していく よう、教育機能を強化する大胆な改革に踏み出さなければなりません。これからの社 会において重要なものは、大学入学時の学力ではなく、卒業時までに鍛え抜かれた力 であり、大学が生涯を通じての学びの拠点となることが必要です。大学は、高等学校 までの教育を基に更に付加価値を高めるため、それぞれの強みをいかし、学びの質的 転換を図るとともに、厳格な卒業認定を徹底させることが必要です。また、教育内容 や教育方法等を徹底的に可視化し、進学を希望する若者が大学での学修を理解して主 体的に学び進路を考えることができるようにする必要があります。
○ 大学は、その多様性を踏まえ、第三次提言で述べた社会的役割等の明確化の取 組や建学の精神等を基に、例えば、次のような教育機能の強化を図る。国は、組 織的な教育改善を行う大学を積極的に支援する。 ・新たな価値を生み出し、世界に発信する力を備えたグローバル人材の養成 ・幅広い教養を身に付けた知識基盤社会を担う人材の養成 ・我が国の強みや成長につながるイノベーション創出を担う人材の養成 ・様々な分野における専門人材の養成
・地域社会の発展を担う人材の養成 ・社会人の知識・技能の向上(学び直し)
○ 大学は、高等教育機関であるとの自覚の下、教育課程の点検・改善を行い、学 生の学びへの意欲を喚起するための教育内容や教育方法の改善に取り組むととも に、厳格な成績評価・卒業認定等を行っていくことで、学生の学修時間を増加さ せる。国は、こうした改革を進める大学の定員管理について、国立大学法人運営 費交付金や私学助成における取扱いが不利になることのないよう検討するととも に、大学の認証評価3において、教育の質の向上を図る取組や学修成果を重視する 仕組みを整備するなど、教育の質保証を徹底する。
( 国公私の全ての大学、短期大学、高等専門学校が、定期的に、文部科学大臣の認証を受けた評価機関による評価を受ける制度。平成 16 年度から実施。教育研究、組織運営及び施設設備の総合的な状況についての評価(7 年以内ごとの機関別認証評価)と専門職大学 院の教育課程、教員組織その他教育研究活動の状況についての評価(5 年以内ごとの専門分野別認証評価)の2種類の評価がある。)
○ 大学は、学生の能動的な活動を取り入れた授業や学習法(アクティブラーニン グ)、双方向の授業展開など教育の質的転換を図るとともに、大学教育へ円滑に移 行するための初年次教育4など、入学者の状況に応じた教育を充実する。また、個々 の教育課程やその体系を徹底して公開し、教育内容や教育方法、成績評価基準等 を可視化する。学生による授業評価の結果を活用するなど、常に効果的な教育が 行われているかを確認する機会を設ける。国は、情報発信に関する共通の枠組み5を 整備し、大学はそれを積極的に利用して情報発信に努める。
○ 幅広い教養を身に付けさせ、また、学習ニーズに応じて柔軟に学ぶことができ るようにする観点から、大学は、大学入学後の進路変更が柔軟にできる構造に転 換する。このため、大学・学部・学科の枠を越えて履修できる機会の拡大や、大 学における募集時の大括り化、転学・転部ができる機会の拡大を図る。
○ 第三次提言を踏まえ、大学は、海外の大学との連携、外国語による授業の増加、 留学生の派遣・受入れや外国人教員の受入れの拡充等によりグローバル人材の育 ふかん 成を進める。また、産業構造等の変化に対応した理工系人材や技術と経営を俯瞰で きる人材などイノベーション創出を担う人材や、地域に貢献する人材を育成する ための教育プログラムの実施や産学官の連携等を進める。さらに、大学の国際競 争力を高めるため、ダブル・ディグリー6やダブル・メジャー7等の取組を推進する。
○ 今後、日本の大学が世界の大学と伍していくには、大学院教育の重視が必要で ある。大学は、国内外の多様な分野から優秀な大学院生を獲得し、体系的な大学 けん 院教育プログラムを提供し、卓越したグローバル人材や最善解を見出し社会を牽 引する高度人材を育成する。その際、各大学の特性や強みを踏まえて大学院教育 の充実を図るとともに、産学官の連携により、大学院修了者(特に博士号取得者) のキャリアパスの開拓を積極的に進め、広く社会での活躍を促進する。
3.大学入学者選抜を、能力・意欲・適性を多面的・総合的に評価・判定する ものに転換するとともに、高等学校教育と大学教育の連携を強力に進める。
上記1及び2で述べた高等学校教育、大学教育を実現するため、両者の接点である 大学入学者選抜も、それにふさわしいものに再構築することが必要です。その際には、 高等学校教育から大学教育に円滑に接続するという観点から、大学教育を受けるため (主として大学新入生を対象に作られた総合的教育プログラムで、情報処理能力、論文等の学術文章作成技法、意見発表や討論等の技 法、学問に対する動機付け等の教育が行われる。 5 現在、国や関係団体において、大学の教育情報の公表のための共通的な仕組み(「大学ポートレート(仮称)」)の構築に向けた検討が 行われている。 6 複数の連携する大学間で開設された学修プログラムの修了者に対し、各大学がそれぞれ学位を授与するもの。 7 二つの異なる専攻で体系的な教育プログラムを履修し学位を取得することができる仕組み。) に必要な教養や知識、学ぶ意欲等が高等学校の段階で身に付いているかどうかを正し く把握できる選抜方法とすることが重要です。これからの時代に求められる主体性、 創造性を備えた多様な人材を育成するためには、高等学校と大学が連携し、若者の能 力、意欲等を最大限伸ばしていけるような一貫した取組が欠かせません。若者の力を 引き出していく上で重要なこの時期に知識偏重の1点刻みの試験のみによる選抜や、 逆に、学習への意欲や努力の減退を招くような学力不問の選抜によって、本来伸びる はずの若者の能力を損ねることがあってはなりません。
また、現在の大学入試センター試験は、難問奇問を排除した良質の問題を提供し、 各大学が実施する試験との組み合わせによる大学入学者選抜の個性化・多様化を促進 している一方で、1点刻みの合否判定を助長している、試験結果が志願先の選択に直 結するため受験生にとって大きな心理的圧迫になっているなどの課題があるとも指摘 されています。併せて6教科・29 科目という多数の出題科目の準備や約 55 万人が同 時に受験するための運営に係る負担が増大し、限界に達しているとの指摘もあります。
高等学校教育の質の確保や各大学の教育水準の指標としての機能までを大学入試が 担っている状況は改める必要があり、これからの時代を見据えた改革に大胆に取り組 んでいかなければなりません。この観点から、上記1(3)で述べた達成度テスト(基 礎レベル)(仮称)により、高等学校教育の基礎的・共通的な学習の達成度を客観的に 把握し、これを各大学の判断で推薦入試やAO入試にも活用すること、また、各大学 が求める学力水準の達成度については、下記(1)で述べる大学教育を受けるために 必要な能力を評価し判定するための新たな試験(達成度テスト(発展レベル)(仮称)) の活用等により確認した上で、それぞれの大学の創意工夫により、能力・意欲・適性 を多面的・総合的に評価・判定する入学者選抜に転換することが必要です。加えて、 高等学校・大学を通じた一体的な改革を進めていくための高大連携を強力に推進する ことが求められます。
なお、大学入学者選抜の方法については、高校生に不安を与えることのないよう、 十分な周知期間をおいて見直すことに留意する必要があります。また、既卒者、社会 人、中途退学者や海外にいる生徒など国内の高等学校に在学していない大学進学希望 者が不利にならないように留意することも必要です。 高大接続を巡っては、高等学校から大学への飛び入学制度の改善などの課題もあり ますが、これについては、今後、学制の在り方について議論する中で引き続き検討し てまいります。
(1)大学教育を受けるために必要な能力判定のための新たな試験(達成度テスト (発展レベル)(仮称)の導入
○ 国は、大学教育を受けるために必要な能力の判定のための新たな試験(達成度 テスト(発展レベル)(仮称))を導入し、各大学の判断で利用可能とする。高等 学校教育への影響等を考慮しつつ、試験として課す教科・科目を勘案し、複数回 挑戦を可能とすることや、外国語、職業分野等の外部検定試験の活用を検討する。
同テストの運営については、大学入試センター等が有するノウハウ、利点をいか しつつ、達成度テスト(基礎レベル)(仮称)と相互に連携して一体的に行うよう にする。
○ 達成度テスト(発展レベル)(仮称)は、その結果をレベルに応じて段階別に示 すことや、各大学において多面的な入学者選抜を実施する際の基礎資格として利 用することなど、知識偏重の1点刻みの選抜から脱却できるよう利用の仕方を工 夫する。将来的には、試験問題データを集積し CBT8方式で実施することや、言語 運用能力、数理論理力・分析力、問題解決能力等を測る問題の開発も検討する。
○ 以上の方針の下、達成度テスト(発展レベル)(仮称)の具体的な実施方法(教 科・科目や出題内容等)や実施体制、実施時期、名称、制度面・財政面の整備等 について、高等学校における教育活動に配慮しつつ、関係者の意見も踏まえ、中 央教育審議会等において専門的・実務的に検討されることを期待する。
(2)多面的・総合的に評価・判定する大学入学者選抜への転換
○ 大学入学者選抜は、各大学のアドミッションポリシーに基づき、能力・意欲・ 適性や活動歴を多面的・総合的に評価・判定するものに転換する。大学は、これ からの時代の潮流や社会の在り方を展望して、養成する人材像を明確化し、教育 を再構築する。そして、それを踏まえたアドミッションポリシーを具体化し、オ ープンキャンパス等の機会を積極的に活用するなどして、大学入学後の教育プロ グラムとともに示す。
○ 各大学が求める学力水準の達成度の判定には、各大学のアドミッションポリシ ーに基づき、達成度テスト(発展レベル)(仮称)の積極的な活用が図られるよう にする。その際、利用する教科・科目やその重点の置き方を柔軟にするなど弾力 的な活用を促す。各大学が個別に行う学力検査については、知識偏重の試験にな らないよう積極的に改善を図る。国は、TOEFL 等の語学検定試験やジュニアマイス ター顕彰制度、職業分野の資格検定試験等も学力水準の達成度の判定と同等に扱 われるよう大学の取組を促す。
○ 各大学は、学力水準の達成度の判定を行うとともに、面接(意見発表、集団討 論等)、論文、高等学校の推薦書、生徒が能動的・主体的に取り組んだ多様な活動 (生徒会活動、部活動、インターンシップ、ボランティア、海外留学、文化・芸 術活動やスポーツ活動、大学や地域と連携した活動等)、大学入学後の学修計画案 (“Computer Based Testing”の略称。コンピューターを利用した試験方式。数千~数万題の問題の中から、難易度が同じとなるよう 問題を組み合わせて出題することにより、複数回受験しても安定した成績を示すことが可能となる(例 TOEFL、医学部共用試験)。) 7 を評価するなど、アドミッションポリシーに基づき、多様な方法による入学者選 抜を実施し、これらの丁寧な選抜による入学者割合の大幅な増加を図る。その際、 企業人など学外の人材による面接を加えることなども検討する。
○ 推薦入試やAO入試における基礎学力の判定に際しては、高等学校における学 習の達成度を評価するものとして、達成度テスト(基礎レベル)(仮称)の結果の 活用も可能とし、国は、各大学の判断による活用を促進する。また、推薦入試や AO入試の選抜及び結果発表について、高等学校教育への影響を考慮した適切な 時期に行われるよう促す。
○ 大学は、入学者選抜において国際バカロレア資格及びその成績の積極的な活用 を図る。国は、そのために必要な支援を行うとともに、各大学の判断による活用 を促進する。
○ 大学は、社会人、留学生、障害者等の受入れや飛び入学等による多様な学生の 受入れが進むよう入学者選抜の工夫を図る。
○ 国は、メリハリある財政支援により、以上の取組を行う大学を積極的に支援す る。国及び大学は、大学入学者選抜の改革について、その成果を検証し、継続的 な改善に取り組む。公務員の採用においては、特に平成 14 年度以降、人物評価の 重視に向けた見直しが図られてきており、引き続き能力・適性等の多面的・総合 的な評価による多様な人材の採用が行われることが期待される。
(3)高等学校教育と大学教育の連携強化
○ 国、地方公共団体、大学及び高等学校は、高等学校関係者と大学関係者の間で 互いの教育目標や教育内容、方法等についての相互理解を図るため、様々な協議 を行うとともに、教員の交流を深めるなど、その機会の拡大を図る。また、外国 語教育などにおいて、高等学校より前の段階からの連携の強化にも取り組む。
○ 国、地方公共団体、大学及び高等学校は、高校生を対象とした大学レベルの教 育機会の提供(大学教員や社会人が高等学校に出向いて行う授業や大学の授業公 開、アドバンストプレイスメント9の実施等)について、ICT 等も活用しつつ推進 する10。大学は、こうした学習成果を大学入学者選抜や大学での単位認定にも反映 する。特に、スーパーサイエンスハイスクールやスーパーグローバルハイスクー(大学レベルの授業を高等学校で行い、大学進学後に大学の単位として認定する制度。アメリカで実施されている。 10 いくつかの大学において、正規に提供された講義とその関連情報をインターネットを通じて無償で広く公開する活動(オープンコー スウェア)が行われている。) ル11等の高等学校において、高大連携プログラムの導入を大幅に促進する。国は、 こうした取組を積極的に支援する。
○ 高等学校段階の内容の補習を大学において行う必要性が減少するよう、各大学 が入学者に求める学力について高等学校へ情報提供を行うことや、高等学校と大 学の協力により大学入学前の準備教育を実施することなど、高大連携を充実させ る。
○ 高等学校卒業後の進路をより柔軟にするため、短期大学、専門学校から4年制 大学への編入学や専門高校等から大学への進学の機会の拡大を図る。国は、高等 学校専攻科修了者について、高等教育としての質保証の仕組みを確保した上で大 学への編入学の途を開く。(グローバル・リーダーを育成する先進的な高等学校として、第三次提言において創設を提言したもの。 )
「達成度テスト(仮称)」に関する提言内容
名称 (仮称)
達成度テスト
基礎レベル
目的
機能、大学入学者選抜での活用
受験回 数
試験運営 |
発展レベル 目的 高等学校教育の質の確保・向上、大学の人材育成機能の強化、能力・意欲・適性 を多面的・総合的に評価する大学入学者選抜への転換を図る改革を行う。その一 環として、高等学校段階における学習の達成度を把握し、高等学校の指導改善や 大学入学者選抜に活用する新たなテストとして導入 機能・ 大学入 学者選 抜での 活用 高等学校の基礎的・共通的な学習の達 成度を客観的に把握し、学校における 指導改善にいかす 推薦・AO入試における基礎学力の判定 に際しての活用を促進 大学が求める学力水準の達成度の判定 に積極的に活用 各大学で基礎資格としての利用を促進 利用する教科・科目や重点の置き方を柔 軟にするなと?弾力的な活用を促す 大学が求める学力水準の達成度の判定 に積極的に活用 各大学で基礎資格としての利用を促進 利用する教科・科目や重点の置き方を柔 軟にするなど弾力的な活用を促す 試験回数 試験として課す教科・科目を勘案し、複 数回挑戦を可能にすることを検討 大学教育に必要な能力の判定という観 点から教科・科目や出題内容を検討 知識偏重の1点刻みの選抜にならない よう、試験結果はレベルに応じて段階別 に表示 試験運営 大学入試センター等が有するノウハウ、利点をいかしつつ、相互に連携して一体 的に行う |