Grammatically correct sentences and lemon pomanders: Denotation and Connotation
本の中でも書きましたが、

Until when did you believe in Santa Clause?
いつまでサンタがいると信じていましたか。

と日本語表現をそのまま翻訳して言ったところ、英語母語話者である人に、

When did you stop believing in Santa Clause?
いつサンタがいるということを信じるのをやめましたか。

と言うのが普通であると言われたことがあります。

なるほどと思いましたが、こうした日本語表現の直訳的表現でも、文法に則って文を作れば意味を持ちますからその意味を分かってもらえます。
しかしすべての日本語的表現が文法的であれば、適切な意味を伝えられるかどうかは保証できません。
その意味が適切かどうかは検証しながら使わなければいけません。しかしながら、今の世の中は英語が国際的に使われているわけですから、各国語の表現が直訳されて使われるのを英語の母国語話者が英語でそうは言わない、そういう表現は英語ではない、と一概に退けることはできなくなるでしょう。ただし、そうした英語以外の言語に影響された翻訳的英語表現が国際的に理解され受容されるには、説明と時間が必要です。

たとえば、lemonは日本語においてはすっぱいけれどあのすっきりした柑橘類の臭いが清潔感と結びついています。ところが、アメリカではlemonは欠陥商品、特に中古車であまりよくない車を指すことがあります。They handed you a lemon.はイディオムで、欠陥品を渡されて騙された時に使いますが、 語源については諸説あって、シェイクスピアの lemon and cloves pomander(厄除けあるいは香水代わりのかおり/におい玉)まで遡るという説もあります。(Shakespeare's Love's Labour's Lost)
a pomander: a lemon stuck with cloves
cloves

( One modern style of pomander is made by studding an orange or other fruit with whole dried cloves (チョウジ) and letting it cure(乾燥/薫製保存) dry, after which it may last several years. This modern pomander serves the functions of perfuming and freshening the air and also of keeping drawers of clothing and linens fresh, pleasant-smelling, and moth-free.:Wikipedia: https://en.wikipedia.org/wiki/Pomander)

そういう理由で、私の本の表紙はlemonadeストールですが看板にレモンを描くかどうかで検討した結果、レモンでなくレモネードにした方が安全かな、という経緯があります。同じものをさす場合でも、言語と文化が違うと、特にそのconnotationは重なる部分と重ならない部分がありますから要注意です。言語的にも、日本語の「以上」と「more thanやolder than」が異なることはご存知でしょう。

また、次のアフリカのことわざは何を意味するのでしょうか。最初のことわざは、言語的、文化的背景を知らない/想像できない私には、意味が分かりませんでした。説明を読んだ後でも、teethの内延(connotation =暗示的意味)は何か、また他の何と関係して、だからどうだ、というところが説明を必要としていて明瞭に理解していません。字義通りの意味(外延=denotation)が同じものでもどこまでを指しているのかをはっきりさせないと言葉が外延内延ともにぴったりと重なって理解されるとは限りません。ずれがあると誤解が生じます。
Teeth do not see poverty. ― Masai proverb

しかし、次のアフリカのことわざは、どの国でもかなり普遍的にあることですから分かります。
You cannot advise a man who is after a woman.

次のことわざは、象を見たことがない人には写真とtuskの説明が必要です。
The elephant does not get tired of its tusks.

こうしたそれぞれの地域の文化に基づいた表現がよい、悪いと言っているのではありません。世界中の人が交流する世界で英語が共通語となっている現代では、その英語によって表現される文の意味内容が文化的背景とともに学ばれていなければ瞬時に理解されることができないと言っているのです。これは学校教育と個人の学習によって解決されるでしょう。
しかし、一般的知識、個別的知識を多くの人に伝えるためには学校教育が大切ですが、インターネットにあるような知識をすべて所有して、教室で伝えられる教育者はいませんから、世界の国々の文化や生活に基づいた英語化された表現が、個別的、個人的知識から一般的知識になるには時間がかかるでしょう。もちろん、そうした背景的知識をも瞬時に翻訳する翻訳機が登場する時代も来て、外国語教育も必要なくなるかもしれません。外国語を理解するひとは、そういう翻訳機を製造する関係者だけになるかもしれません。そしてその関係者が人工知能に取って代わられるようになるのは必然です。そしてある時、疑似生命を持ったすべての人工知能が突然変異の人工ウイルスによって死に絶え、バベルの塔の崩壊と同じことが起きるのでしょうか。
その時、Ray Bradburyの”Fahrenheit 451” (1953)の人々のように人類の言葉あるいは文学作品を伝えられる人々は地球上にいるのでしょうか。

Teeth do not see poverty.の説明は
Meaning: people still smile despite problems. Often said in difficult situations when people still manage to entertain each other and have fun.
となっています。逆境を笑い飛ばすとまでいかないまでも、逆境においても楽しむことができるよ、逆境に負けるな、ということのように思えます。「悲しいこともあるだろさ。苦しいこともあるだろさ。だけどぼくらはくじけない。泣くのは嫌だ、笑っちゃえ」


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