化学の目的の一つは、分子の構造を様々に変えることでその性質を自在に制御し、新規な機能性を持った分子・分子材料を開発していくことです。革新的な機能を持つ分子・分子材料を創製するには、機能性の本質を理論化学的に解析し、それに基づいて計算化学的に分子の「設計」を行い、その設計を基に分子を実験的に「合成」し、合成した分子の構造・物性の「計測」、さらにその機能性の「評価」を行い、さらにそれらの成果を理論化学的解析にフィードバックして分子の再設計を行うサイクルを確立する必要があります。このような課題解決型の研究システムの構築は、従来の試行錯誤に頼る手法では達成が難しい革新的な機能の開発を行う上で必須のものです。「設計」‐「合成」‐「計測」‐「評価」のサイクルは、実験と計算が密接に連携することではじめて実現できるものです。未来分子研究センターでは、このような新たな研究システム、すなわち計算と実験が密接に連携した新たな研究機構のモデルとなる研究拠点を形成しています。このような研究を通じて、光メモリ、光駆動アクチュエーター、ドラッグデリバリーシステム、環境応答機能触媒、不斉合成触媒、水の光分解触媒、生分解性人工ポリマーなど、環境・エネルギー材料や電子材料、健康・医療用材料の各分野に多大な貢献が望める機能分子の開発を進めています。
立教大学
未来分子研究センター長
森本 正和