立教教育学会創立大会 トークセッションの流れ

 

本創設大会はCOVID-19の影響からオンライン・セッションで開催されることとなりました。しかし怪我の功名かかなりの人数からの参加応募が届き、12時半ごろから開始したオンライン学会のミーティングルームには10分前にすでに50人もの参加者が待機されており、その時点で会員の創立大会への期待の高まりを感じられました。開会の13時には90名もの参加者を迎え、最終的なオンライン参加者は110名となりました。

そのような盛況の中、有本先生のご挨拶から創立大会が開始します。本学会の創立大会がオンライン開催となった経緯、多彩な進路・年代にいる卒業生からいかに登壇者を選定するに至ったかを述べられ、4人の登壇者の挨拶へと移ります。

 最初の登壇者は内閣官房内閣人事局で勤務されている大村若葉(2016年卒)さんでした。大村は立教大学で北澤毅先生のもと、社会学的な「逸脱」「ラベリング」について学び、少年院における矯正教育の研究から「少年の矯正に携わりたい」という思いが生じて公務員という進路を選択されました。少年院での勤務を経て国家公務員になった大村さんは現在、「全ての人に働きやすい職場」を目指して男性育児休業を促進する業務に取り組んでいらっしゃるとのことです。大村さんはこのキャリア変遷を通じて、多様性を認める社会の実現のためには、社会を改善してゆくためには、まず官僚から働き方を改善し、まず自分自身から多様性を持つ必要があるということ「まず隗から始めよ」という金言を添えつつ語られました。

 続いての登壇者である松本知一さん(1999年卒)はオフィックス株式会社の代表取締役をされていらっしゃる方です。松本さんは小学校から大学まで16年間を立教で過ごしており、その後のキャリアを会社員と野球の審判という二足の「スパイク」を履いて過ごしてこられました。中学2年生で野球部を辞め、その空いた時間で出会った「立教中学校ワークキャンプ」が大学を卒業するまで松本さんの学生生活の中心となり、そのワークキャンプで出会った高野利雄先生が松本さんの人生に大きく影響を与えてゆくことになります。教育学科で教職課程を受講しながら教師にならずオフィックスに就職したこと、またその後に野球の審判への道を進んだことには、どちらにも高野先生のアドバイスがあったと振り返られていらっしゃいました。このように、松本さんは立教での生活と今の生活との密接な関係を示してくださいました。

 加藤尚子さん(1991年卒―1993年院卒)は明治大学で臨床心理学専攻の専任教授をされており、臨床心理士・研究者としての自身のキャリアにとって立教大学教育学科がどのような意味を持っていたのかという観点から公演されました。加藤さん学校・勉強への不適応感・劣等感から教育への違和を持ち、それを突き詰めたいという動機から立教大学の教育学科へと進学したとおっしゃられました。家族を離れ上京した加藤さんは意欲ある先生方と同級生に囲まれ、大学院進学のきっかけとなった室俊司先生、そして大学院での福山清蔵先生の教えが加藤さんに明確な目標と自信を与えます。そこから加藤さんは臨床家と研究者、それぞれの経験と知見を往還して自身のキャリアを形成してゆきます。臨床と研究の「接点」として「教える」ことを考える加藤さんの考えを醸成したのは「自由の学府」としての立教大学の校風であり、研究と臨床のあいだである教育すなわち「教える」ことへの志向性、学生を「育てようとする」まなざしにあるとしてお話を絞められました。

 最後に登壇された佐々木正さんは立教小学校校長として、キリスト者としての目覚めと教育者としての目覚めの交わりに基づいて、自身の学びと指導の人生を語られました。中学生の頃に聖書と出会い感銘を受け、高校で洗礼を受けてキリスト教系のミッションスクールである立教大学に進学されました。始めは哲学・神学に関心を持っていた佐々木さんですが、東北の山奥の分校のルポルタージュを見たことをきっかけに、教育と教師に対する見方が一新され、キリスト者として生徒一人一人の声を聞ける教師になりたいと固く決意され、立教大学の教育学科に転科することを決意されました。上田薫先生・浜田陽太郎先生を筆頭に教育研究への真摯な姿勢を学んだ佐々木さんはその中でキリスト者としての教育実践の意義を確かに感じ、教員になった後には公立学校だけでなく僻地教育や在来外国人の児童への補習校でも勤務されます。教えることへの真摯さだけでなく同僚と学ぶ楽しさを持ち続けた佐々木さんは教師を教えることの重要さに気づき、教頭・副校長や教員指導職を経て立教小学校の校長として立教大学に戻ってこられました。佐々木さんは多くの子どもたちに言葉を伝える校長という立場として、ひとことひとことゆっくりと、重みのある言葉を届けられました。

 最後に、司会の有本先生からの一言、また登壇者を代表して佐々木さんから一言、それぞれ頂戴しました。有本先生は学生時代に学科という経験が無かったという経験から、「学科」のつながりに対する新鮮さと広がりへの羨望の言葉が送られました。そして佐々木さんからは自由な学びができるために「健康な体作り」を学生・卒業生諸氏に求めるという言葉を頂戴し、トークセッションが締めくくられました。(文責:院生幹事・日向悠太)            ホームに戻る