Look1  誕生までのプロセス -そして再生・転生-

Designer 吉田圭佑

「白」という色を、不在としてではなく、無限の可能性を秘めた状態として肯定的に捉えるという繊細な日本人独特の感性から、今作においても“無限の可能性を秘めた”服を作ろうと思った。
人も、ものも、誕生してから始まると捉えがちだが、その誕生までのプロセスも流動に含まれる。 人も物も誕生するまでの期間に多くの希望や負の感情を持っている。その一つ一つの産まれてくるものに対して向いている多くの感情(感情ベクトルの集合体)のうちの一つのベクトルを6cm×6cmの正方形のプリーツで表現した。様々な方向を向く、そのプリーツを繋ぎ合わせて一つの生地にすることでそのベクトルの集合体を表現した。
腹部においてもそうである。子宮をイメージしたチュール部分においてもその正方形のプリーツを組み合わせている。
チュール部分にあるスタッズで作ったモチーフは胎児をイメージしたものである。ここに銀色を用いたのは、look29の服が銀を用いていて、“延命や命の終わり”をコンセプトにしているので、その先にある死を迎えての再生であったり、産まれ変わりとしての要素も胎児に持たせるためである。
また、今回は人工的な誕生というものにも焦点を当てた。誕生までの感情のみでなく、行為も要素として含みたかったからである。袖に用いたファーはリアルのラビットファーである。リアルファーを服にするのは賛否両論であるが、動物が生地となりそれが服となるプロセスには誕生までの多くの感情ベクトルが向いていて、服として生まれ変わる。これは動物でありながらも人工物である。それに対し後身頃ではフェイクレザーを用いている。これは、動物という美しさに人間が魅せられ、それを模倣しようとする。そのプロセスにも誕生までの多くの感情ベクトルが向いている。今回、私自身もプリーツを折り、パッチワークをするというプロセスを経て、その行為も服に起こす前の人工的なものであり、自分自身で作りながらその誕生する生地に多くの感情が向かっていた。