01: 視覚について - April 21, 2006

  1. 視覚の仕組み・構造
  2. 眼球から脳までの構造
  3. 視覚理論の具体例
  4. 見えないものを見る?
  5. 立体から平面へ

視覚の仕組み・構造
視覚は、網膜細胞が光と色を認識し、眼球から入力された情報を視神経を通じて脳の視覚野に伝達する

網膜細胞の種類
錐体(cone)と杆体(rod)という二種類の神経細胞によって知覚している

網膜の中心と周辺
錐体→色や形を認識している
杆体→光を認識している

眼球から脳までの構造
網膜から入力された視覚情報は左右を交叉しながら脳に伝達される
→視神経交叉

立体に見える要因
  • 眼球が二つあり、左右に配されている
  • 左右別々のイメージを組み合わせている
  • イメージを交叉させることで、立体視を実現
  • 写真が平面なのは、左右どちらかの眼で見たイメージであるため

視覚理論の具体例

アフォーダンス理論
James J. Gibson(1904-1979)による視覚理論

「空間」から「環境」へ
配列(ambient optic array)
肌理(texture)

光学空間としての環境
観察者を包囲する環境の中から情報を抽出する
→光によってもたらされる面の配列、肌理

光学的配列の変化
観察点(視点)が変わると、配列全体の構成が変化する。
→世界は決して同じ場所を保有しない

固定されない世界
二つの眼球で、一つの視覚世界を形成するために、視覚情報を眼球の運動で調整している
→輻輳運動

2½次元スケッチ
David Marr(1945-1980)による視覚理論

3次元を認識する仕組み
  • 立体物の後ろ側は見えない
  • すべての次元情報を知覚できるわけではない

遮断面と見えない次元

遮断面の向こう側
対象を立体として知覚するのは、2次元と½次元分の視覚情報から残りの½を脳の中で計算するため

輪郭線と不連続点
連続した輪郭線と不連続点の連続性がもたらす面の肌理から、½次元の視覚情報が見えなくとも、3次元分の立方体として認識することが可能

見えないものを見る?

空白という視覚情報
何かを見ないためにも、網膜から何らかの入力が必要
→見えないという情報を見ている

空白を見るとは?
空白という入力情報が必要になる
→何も見ないのではなく、「空白を見る」という情報の入力が必要

立体から平面へ
遠近法に基づく伝統的な西洋絵画は、網膜上に映ったイメージを2次元平面に移し替える作業だった
→写真は機械にその過程を委ねた

物理的な奥行きの抹消

Albrecht Dürer 「横たわる裸婦を素描する画家」

½次元の放棄
本来、立体視を実現する½次元分を放棄することで、2次元としてのリアリティを追求

失われた½次元を補完する
平面表現が抹消してしまう時間を、½次元分の情報として捕獲し、イメージとして与える
→カメラという道具の可能性

カメラと視覚の相似
視界角度=約60°
初期レンズ付きフィルムのファインダーがただの覗き穴だった所以

機能と道具

参考文献
  • ギブソン, J.ジェームズ. 『生態学的視覚論』, 古崎敬・古崎愛子・辻敬一郎・村瀬旻 共訳, サイエンス社, 1985.
  • マー,デビッド. 『ビジョン』, 乾敏郎・安藤広志 訳, 産業図書, 1987.
  • 福田忠彦, 『生体情報システム論』, 産業図書, 1995.
  • クレーリー, ジョナサン. 『観察者の系譜』, 遠藤知巳 訳,十月社, 1997.
  • Rohen, J.W., 横地千仭. 『解剖学カラーアトラス 第3版』, 医学書院, 1994.


Introductions Schedule Lectures Assignments Members BBS Home