01: 構造と機能 - April 20, 2007 |
|
I. 知覚について 何故、知覚について、知っておく必要があるのか? →表現とは、様々な感覚器官の延長、もしくは一部として存在している。 →表現は、受け手にとっても、知覚を介するものである。 |
知覚と構造 知覚は機能だけではなく、構造を伴うもの。 →機能と構造は切り離して考えることは出来ないもの。 →デザインにおいても同様。 |
表現にとっての知覚 表現は、眼で見て、耳で聴き、舌で味わい、鼻で嗅ぎ、皮膚で触れる。 →表現が感覚を通して受け取るものであるならば、その逆、発信(表現)する場合も感覚を経由する。 →故に、制作するには知覚を理解しておかなければならない。 |
知覚情報の入出力 作り手と鑑賞者という二つの絶対的な立場がある以上、伝達される情報にも入力と出力が存在する。 →感覚にとっての刺戟(入力)自体に差があるわけではなく、それをどう知覚して、認識してゆくかというプロセスの段階で違いが生じる。 |
出力されたものの例として![]() |
入出力の違い 入力される情報は同じだとしたら、出力される情報が異なるのは何故か? →セザンヌの林檎は、誰にとっても同じ林檎にならないことを証明している。 →出力で違いが生じるのならば、入力の仕組みは理解しておこう。 |
知覚とデザイン しばしば芸術においては、デフォルメや不協和音など、必ずしも知覚情報の整合性が絶対というわけではない。 →ただし、デザインの場合は個人の審美感に左右されるものではないため、感覚から極端にズレないような決め事に基づいて構成される。 |
デザインの原点にあるもの![]() →「良いデザイン」をするために、人間自身のことを、様々な角度から眺め直してみよう。 |
II. 視覚とは? 網膜細胞が光と色を感知し、眼球から入力された刺戟を、視神経を経由して脳の視覚野に伝達する。 →眼が何を見ているかと突き詰めると、「形と色」ということになる。 |
網膜細胞の「構造と機能」 錐体(cone)と杆体(rod)という二種類の視神経細胞からなる。錐体は中心部に多く、杆体は周辺部に多い。 →主に錐体は色や形を認識し、杆体は光を認識する。 |
視神経交叉 網膜から入力された視覚情報は左右に交叉しながら脳に伝達される。 →二つの眼球が左右に配されることで、左右別々のイメージを交叉させながら組み合わせ、立体視を実現させている。 |
視神経交叉の構造![]() |
四分割される世界 視野は、左右の網膜それぞれに、二つに分かれ、それが脳の中で結合されることで、立体として再構成される。 →入力の段階で、視覚世界は四つに分割されている。例えば、写真を撮影する場合、ファインダーを覗く眼が異なれば、左右で異なるものとなる。 |
III. 視覚理論 ・James J. Gibson(1904-1979) アフォーダンス ・David Marr(1945-1980) 2½次元スケッチ |
生態学的視覚論 アフォーダンス: 観察者を包囲する環境の中から情報を抽出する。 →光によってもたらされる面の配列(ambient optic array) と肌理(texture)から視覚世界を構成するもの。 |
アフォーダンスの特徴 視覚情報の入力があって、それをどのように認識しているか。 →外的なものとしての視覚世界が存在していることを前提にしており、世界が脳の中で作られているという観点ではない。 |
計算論的視覚論 2½次元スケッチ: 対象を3次元として認識できる所以は、2次元と½次元分の視覚情報から残りの½を脳の中で計算する。 →すべての次元分の情報を一度に知覚することは出来ない(例えば、目の前の立体物の後ろ側は見えない)。 |
½次元分から得られるもの![]() ![]() |
IV. 聴覚とは? 音によって、平衡感覚器(耳)を通じ、神経が刺激されることによって生じる感覚。 →聴覚が聴いているものを突き詰めると、「空気の振動」であると言える。 →ただし、空気の振動は地上だけではなく、水の中でも生じる。 |
耳の構造![]() |
聴覚刺戟 聴覚情報である音の要素は、大きさ、高さ、音色の三種類がある。それぞれの単位は、大きさの圧力レヴェルがphone、量的な尺度はsone、高さの場合はmel(melodyが語源)。 |
可聴範囲 どんな動物でも、音を聞き取れる範囲には限度がある。 人間は約20〜20000Hz 犬は約15〜50000Hz コウモリは約1000〜120000Hz |
V. 視聴覚以外の知覚 嗅覚、味覚、触覚といったものがある。 →これらの感覚には、知覚するための器官なり、身体の構造が存在する。 →ただし、知覚は、これらの感覚以外からも情報を獲得されるため、実際には「五感」と呼ばれる以上の感覚を感知している。 |
鼻の構造![]() |
知覚情報の総量 すべての感覚器官が、身体全体から成り立っているものとすれば、表現は、身体そのものであると言えるはず。 →知覚情報の入力量、それを処理する脳の部位が占める割合に差があるものの、知覚機能は単一なものとして存在しているのではない。 |
VI. 時間を知覚する 時間を感覚するための、特定の感覚器官というものはない。 →知覚機能に対応した情報ではない。あるいは、複数の知覚機能を統合的に駆使して認識するもの、と言える。 |
時間の差異 時間は、入出力する知覚器官と全く別の次元として存在する。 →物理的時間と相対的時間のように、時間自体に性質的な違いが生まれるのは、それぞれの時間を厳密に規定できる器官がないことも要因の一つ。 |
時間の伸縮 ある人にとっての一分間は、他の人にとって必ずしも一分間とは限らない。 →例えば、進化の過程は一律な時間の中で起ったものではなく、その時々によって、早かったり、遅かったりするという学説がある(スティーヴン・J・グールドを参照のこと)。 |
三次元の認識 平面、そして奥行き、すなわち三次元の空間までは、視覚、聴覚、さらには嗅覚、触覚でも認識可能。 →時間は、空間とは別の存在。だからこそ、別の次元とされる。 |
四次元目の知覚 物質ではない現象を知覚する術はあるだろうか? そしてそれをデザインという表現によって伝達する手段とは? →課題の根幹をなす命題 |
参考文献
|
Introductions | Schedule | Lectures | Assignment | Members | Blog | Home |