韓国の反日感情について

担当:綿島大地

一 反日感情とは

1.本稿で言う反日感情

・反日感情…
韓国人の日本人や日本社会に対する敵意や嫌悪や懐疑を含む思考様式や態度
〜その形成〜
 反日感情・・・
× 日本人や日本社会の特徴や属性あるいは日本体験
 ある種の偏見→社会制度、伝統文化、ナショナルアイデンティティ
対外関係などが相互にからみあって形成された複合体
この反日感情は韓国のあるタイプの知識人にかなり普遍的に見て取れるモノ
             ↓
ex.韓国文壇の重鎮 朴景利のインタビュー
「私達は日本に対しては常に与え、奪われてきました…」
朴の子供時代の放送記者
「日本で二年半を過ごしたいま私は決して日本から学んでも、日本のようになってはいけないという…力あるものとないものと言う非常に単純な図式…飼い慣らされて支配されてやっと安心するという…弱者を装って日本は戦争を起こし…」
…ここでいう反日主義(↑)は一般的には「反日感情(反日)」と呼ばれている現象

2.「反日」感情

…韓国人や日本人が「反日」に関して広く共有しているもの→植民地体験に起因するものであるというオリジンの認識。
しかし…↓
〜韓国の反日世代の反日感情の強度〜
 植民地世代<その後の世代
 低学歴<高学歴
    ↑
といった現状があり、「『反日』が日本の植民地支配という苦々しい歴史体験をオリジンにするという通説の再考を促すことに。
→でないと、「反日」が植民地体験の単純な所産であるという説明がつかなくなる。
筆者は「反日」と呼ばれる現象を【日本とは直接関わりのない伝統的もしくは近代的なバイアスやイデオロギーをオリジンにしているのではないかと考える、今後これを「反日主義」と呼ぶ。

3.筆者による今日の日韓関係の現状分析

〜状況の変容〜
【以前】
・反日主義が自明のものとされる韓国において、それは検討の対象と言うよりは実践の対象。
・日本の側は反日主義に同調するものと批判的な立場をとるものの二つの対応
多くの日本人は無関心か避関心

【ヒト、モノの相互交流や相互交易、情報の相互浸透の始まった80年代後半以後】
   ↓
今日の日韓関係
…日本人による日本に侵略史や加害史の暴露が、ただちに韓国人に活用されて反日感情を喚起し、それがまた日本に伝えられて反日感情を喚起するという否定的感情の応酬と言う状況。

二 文化的優越意識

・「反日」の歴史的性格
…「経験」的というよりは「知識」的
→「われわれには文化的には優越の歴史があったにもかかわらず、今日、後進日本から軽視され侮辱をうけているという二重の心理的屈折がうかがわれる」
       ↑
【文化的優越意識 授恵者意識のあらわれ】
…日本を文化・道徳劣等者として見下す方法として。
上記のような「反日」は『長く歴史的に培われた遺風』※である。

※『長く歴史的に培われた遺風』…その原型を李氏朝鮮時代の知識人が清国に対して抱いていた排清思想に見いだすことができるもの。またそれは九十年代の今日においても生き続けている※2。
そしてそれは文化に「勝敗の基準を持ち込む」という態度と「韓国人は日本人より文化的に優れているという信念」という理解の差異として現れている。

※2 東亜日報 1994年10月15日
<ノーベル賞のために私達の文化的優越感、数千年の間、海を隔てた国よりは先んじていたという自負心が輝きを失う。(中略)日本は手先が器用で文明的であるが、韓国は文化的だと誇ってきた。ものを作って売ることには負けるかもしれないが、思推し、窮理する分野で負けるわけがあろうかと言ってきた。しかし小説文学という文化で負けた>
韓国において二十一世紀は「文化戦争」の時代(韓国の国際化論者)
文化的多元主義というよりは文化的一元主義が思考される。

三 文化相対主義(浄化論による)

浄化論…自文化の韓国化を志向するもの

・韓国人の自文化や日本文化に対する考え方
…文化的優越意識の項で見た自尊意識とは裏腹の劣等感の表明であり、自文化の自立性の欠如を嘆く。
Ex)日本語系外来語の禁忌語化→
「俗語」「卑語」「猥語」といった裏言葉として生き続けている。

【浄化論によって導かれてくる言説】
「…とりわけ、かつてわが国を侵略した日本の文化浸透をなんの警戒心もなく受け入れて良いはずがない。私達は経済力や技術力で私達より進んでいる日本から必要なものを学ばなければならない。しかし、日本の大衆文化や日本人の社会的慣習、思考様式である日本風まで無差別に受容し、日本文化の亜流地帯に転落することは出来ない。(朝鮮日報)」

●反日文化論の基本的戦略(文化的優越意識と文化相対主義のまとめ)

歴史と近代以前と以後に分け、近代以前を進化論(文化的優越意識)以後を相対主義(浄化論)で分担するもの。

近代以前…
文化的優越意識の言説により、近代以前の韓日関係を進化論的、伝播論的な授受関係として語る。→文化の授受関係を認知する。
近代以後…
浄化論の言説により文化相対主義で武装し、日韓関係を植民地主義や帝国主義の関係として語る→文化の授受関係を認知しない

四 国際連帯

韓国人の価値観のバックグラウンド
…韓国人は誕生から死に至る様々な社会化や参加の過程で反日主義を刷り込まれ、それが思考様式や態度の様式として定着するという状況。
→これにより反日主義は韓国人の日本や日本人に対する眺めを歪めるものであるとともに、自己の歴史や世界に対する眺めを歪めるものであり、それは韓国人の作品世界における創造性を貧困にする要員となりうるものである。
      ↑↓
少数ではあるが反日主義に内部からの批判もある。
→「反日主義を自明なものとみなす大きな集団」と「それに懐疑的な小さな集団」の対立
…この論争の帰趨がこの国の近い将来に経験するであろう社会変動の質や東アジアの国際関係の行方を強く規定するものであろう。

<補足>
これらの反日主義が相互交流や相互浸透といった日韓関係の展開に伴ってむしろ活発化している状況がある。

…日本人による過去の侵略史や犯罪史の発掘・暴露がただちに韓国の反日主義者に活用されて反日感情を活性化するという状況。

●これらの状況に対する作者の意見

・しかしながら韓国のナショナリズムが多くの否定生を抱えていることは明白
・自国の信頼を得るためにはナショナリズムを美徳とする習慣そのものを変えなければならない。韓国の知識人はその双子の兄弟である北朝鮮がその過剰なナショナリズムのゆえに世界中のほとんど誰からも信頼されていないとする事実をうけとめるべき。



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