2002-06-03
5班 松尾・中・岡

ヒトクローンについて

クローンとは

もともと、ギリシア語で「小枝」を表す。
生物学における定義では「一個の細胞または生物から無性生殖的に増殖した生物の一群。また、遺伝子組成が完全に等しい遺伝子・細胞または生物の集団」

クローンの作りかた

1受精後発生初期の細胞を使う方法

胚の細胞を使う方法では、まず受精後、細胞分裂した細胞の中から1細胞を分離し、次にその細胞と核を除去した未受精卵とを、電気刺激を与えて細胞融合させ(核移植)、培養により細胞分裂を誘発させた後、子宮に戻す。(図1)
この方法の問題点
・たとえば、優秀なオス羊Aのクローンを作りたい場合、この方法だと、メス羊Bが必要になり、生まれてくる子供は優秀かどうかわからない。
(簡単に言えば、この方法は一卵性双生児をたくさん作ることはできるが、Aそのものを作ることはないので)(図2)
・また同様の理由で、両方の親から受け継ぐ遺伝子の中身を知ることはできず、生まれてくる個体が親と同じとは限らない。
・受精後発生初期の細胞を使うので作る数が限られる。(16〜32個まで)
→結局のところ、100%のクローンができるわけではない。

2成体の体細胞を使う方法

成体の体細胞を使う方法は、まず、成体から、細胞を取り出し、培養する。次に培養した細胞の栄養分を減らし仮死状態にする。その細胞と核を取り出した未受精卵を電気融合して合体させる。そして、その卵細胞を仮親(実際に生む親のこと)の子宮に入れてうまれるのをまつ。
これで、成体とまったく同じ遺伝子情報を持つクローンのできあがり。

「ドリー」の画期的な点
ドリーは上記2の方法で作られたが、これは非常に画期的なことであった。
なぜなら、2の方法が実現するためには体の全器官を作るのに必要なDNAが必要とされていた。
→従来、哺乳類には存在しないと考えられていた。
しかし、ドリーの成功から、ヒトクローンの可能性が。

ヒトクローンの作り方

基本的には「ドリー」、上記2の作り方と同じ。
1:クローニングしたい人の細胞を用意する。
  (なるべく再生能力の高いほうがよい)
2:ヒトの卵子を用意する。
3:1の細胞を培養液の中にいれ、その後、培養液の栄養分を少なくし、細胞
  を仮死状態にする。
4:3で活動を停止した細胞に電気ショックを与えて細胞の遺伝子が持つ全能性を活性化させる。
全能性…どんな器官にもなりうる能力のこと。
5:2で用意した卵子から、核を取り除く。そして3の細胞をその卵子に核移植する。
6:この卵子を培養液の中にいれ、何度か細胞分裂するのをまつ。
7:この卵子を代理母の子宮に入れる。
8:クローン人間が誕生する。

ヒトクローンの可能性

1:不妊治療の子供の出産
  →親の体細胞を使い、子供を生む。
2:科学的研究
  →発生過程、生殖細胞の分化の研究に大いに役立つ可能性が
3:移植用臓器の作成
  →現在の臓器移植では他人の臓器を使うので移植の際、拒否反応が生じた。
   しかし、クローン技術により、自分の臓器を使うことになり、拒否反応がまったく起こらなくなる
4:永遠の命の可能性も
  →自分のクローンを作り、臓器やほかのパーツを取り替えることも可能になる。

ヒトクローンの問題点

1:安全面
現在のところ、クローン技術を用いた個体が、ほかの個体に比べて、成長・能力が劣るということは報告されていない。また、クローンの動物個体が妊娠・出産した例も。(「ドリー」は1998年に「ボニー」を出産)

2:成功率
現在はきわめて低い

3:倫理面
・特定の能力を持った人を意図的に造ることも可能になるので、人間の品種改良にもつながる。(遺伝子技術を応用すればさらに)
・生まれてくる人を手段・道具とみなすことにつながる。
・クローンで生まれた人と男女の生殖によって生まれた人の間に差別が起こる可能性が。
・生命誕生のプロセスを逸脱する。

その他、ヒトクローンについての疑問点

1:クローンは親に似るか?
 →見た目はそっくりだが、中身はほとんど似ない。なぜなら、人間の性格・能力        は教育・時代・環境に左右される部分が大きいので。実際に生まれたとしても、一卵性双生児より違うだろうといわれている。

2:双子、三つ子はクローンか?
 →一卵性双生児は遺伝情報が同じなので、(受精後発生初期の細胞を使う方法での)クローンといえる。しかし、両親の遺伝子を受け継ぐので、(生態の体細胞を使う方法での)クローンとはいえない。

3:遺伝子操作との違いは?
→ものすごく簡単にいえば、クローンはAという個体からできるのはあくまでAのみだが、遺伝子操作ではAからX・Yという個体を作ることもできうる。

4:自分と性別の違うクローンを作ることはできるか?
→不可能。遺伝子のすべてが同じ=染色体もすべて同じなので。
ただ、将来的には、男性のみX染色体を2つ作ることによって女性のクローンを作ることができるかもしれない。


参考ホームページ
・クローンって何?(平成11年科学技術庁資料)
 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingai/kagaku/klon98/index.htm
・クローン人間はこうして造る
 http://webculb.kocn.ne.jp/ma/yahagi/clone/chapt3.htm
・クローンQ&A
 http://www.rcc.net/comitia/theme10/ref10a4.htm


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