法哲学ゼミ ディベート第二回
2002/6/10
5班:松尾、中、岡

ヒト・クローン作成は法的に認めるべきである<肯定派立論>

1. 積極的支持理由
ヒト・クローン技術は、不妊治療や臓器移植等に応用されることによって、これまでにはなかった個人選択の幅の拡大、生命助長を実現できるという建設的な意義を持つ。
※ 不妊治療―他人に害を及ぼすことはない、自己決定の領域に属する問題
※ 臓器移植―完全な人間の生体から臓器を摘出することはあまりにも問題が大きいが、それに近い生体や動物を媒介として摘出する方法が考えられる(人身御供にはしない)

以下、通説的批判に対する反論としての根拠

2. 安全性に対する危惧
現段階の医療・科学技術でのクローン生体出生率はきわめて低く、成長過程での障害も見られ、ヒト・クローンへの応用が危険であることは事実。しかしこれは今後の技術の向上に待つべき問題であり、法的是非・自己決定とは異なる問題である

3. 子供は「自然の摂理」の中で生まれるべきであり、生殖に人間の手が加えられることは「反自然的で人間の尊厳を損なうものである」という主張に対して
 @「自然の摂理」→生殖方法は倫理的正しさとは無関係
 A「反自然的」→そもそもあらゆる文明・文化活動が反自然的ということになる
 B「人間の尊厳」→個人の独自性のことを指しているなら、人格形成は後天的になされるという事実を見落としている
  また、こうした主張は個人の思想・信条を述べているに過ぎず、このことをもって法的規制を図ることは、このように考えない少数者に対する暴力的圧制である

4. その他の問題
@人間の品種改良になる→政治的意味を持つような育種は厳しく法規制する
A新たな差別の可能性→情報の非公開による保護と教育による意識改善で対応

5. 結論
 以上のことからヒト・クローン作製を肯定する。技術の応用を必要とする者の利用を妨げるべきではない。ただ、以上の議論は技術の成熟と目的の正当性が前提とされているものである。


参考文献:『クローン人間誕生以後』 戸来優次著 徳間書店


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