瀧川ゼミ 2002・6・24

臓器売買

担当:B班 卓、加藤、松木

◆実例

フィリピン受刑者における臓器売買

・フィリピン臓器提供法(特定の目的のために死体の全部又は一部を遺贈又は贈与することを公認する法律)の特徴
@臓器提供に関する規定のみならず、死及び脳死に関する規定を置いていること
A親族等に移植を目的とする死体提供の権限を与える規定を置いていること
B臓器売買を禁止する規定を置いていないこと(※)
※ 禁止規定がないだけで、民事上は公序良俗規定により無効になるであろう。

フィリピンでは受刑者がドナー(臓器提供者)となるケースがあり、1975年以降1993年までに51名の受刑者がドナーとなっている。
日本人も二人がレシピエント(臓器受容者)となっている。
ドナーとなる受刑者の多くは死刑囚で、当初は減刑や釈放を期待しての無償の臓器提供だったが、その後謝礼が渡されるケースが現れ、1985年頃には事前の交渉―売買へと変化。

・近時の臓器(腎臓)売買システム
@腎臓提供(売買)を希望する受刑者が、刑務所病院備え付けの提供希望者名簿に登録
Aレシピエントが腎臓の提供を受けることを希望する旨の要望書を国家刑務局長に提出
B国家刑務局長が承認すれば、その書類は刑務所病院に回される
C刑務所病院の検査技師が、組織適合検査のために提供希望受刑者の血液を採取しレシピエントの入っている病院に回す
D同病院で検査し、組織適合する受刑者がいれば、その旨をレシピエントに知らせる
Eレシピエント(又はその家族)がドナーとなっている受刑者を訪問し、臓器提供の条件について交渉
F合意が成立すれば契約書、権利放棄書等を作成
G契約書は予め刑務所が用意したフォーマットにドナー、レシピエントの氏名などとともに謝礼の額(売買金額)を記入すると言う形で作成される
H刑務所長が、ドナーの外出許可書を発行
Iドナーがレシピエントの病院に護送され、検査の上、移植手術
J健康回復後、ドナーが刑務所に護送される
Kレシピエントはドナーの退院までの間に謝礼(売買代金)を支払う

刑務所病院がコーディネーター(仲介役)の役割を果たしているといえる。
刑務所病院は代金の交渉にはまったく関与していないとしているが、病院が用意している臓器移植の契約書フォーマットの中に「この人道的な意思表示に鑑みて、レシピエントは、喜んでドナー及びその家族に合計金額を提供する」とある。
→実質的には金額に関して関与していないだけで、売買には関与している。

・ナルシソ・モンファト前下院議員(臓器提供法の起草者)のコメント
Q.なぜ臓器売買禁止規定を盛り込まなかったのか?
A.「金のやり取りがあろうとなかろうとドナーの臓器によってレシピエントが助かるのは事実だ。ドナー不足は深刻だ。禁止するとますますドナーが減ることになる。せっかく軌道に乗っている移植医療の芽を摘みたくない。」

・エリベルト・ミサ・ジュニア国家刑務局長のコメント
「(臓器移植に対して)反倫理的とは思わない。腎臓を提供するかしないかは、受刑者自身が決めることだ。」

インドにおける臓器売買

インドでの腎臓移植にかかる総費用は1994年4月時点で20万〜30万ルピーが相場のようである。現在はもう少し値上がりしていると思われる。(1ルピー=約4円)
なおインドでも、1994年7月に臓器売買を包括的に禁止する法律(ヒト臓器移植法)が成立したが適用される州は限定されている。
インドのドナーは移植患者に比べて相対的に貧しいのは確かだが、最下層のクラスの人々ではない。最下層クラスの人は栄養状態や病気などから売りたくても売れないのが実状のようである。

臓器売買の形態は大きく3つあり、@ブローカー主導型、A病院主導型、B患者主導型とに分けられる。
@は移植を希望する患者がブローカーにコンタクトをとり、あらかじめブローカーによって集められていたドナーの中から移植が行われる。
Aはドナー志願者が自ら病院に行きドナーリストに登録し、移植を希望する患者が病院に来ると移植が行われる。
Bは移植を希望する患者がドナー募集の新聞広告を出し、応募者の中から移植が行われる。

・腎臓内科医キルティ・ウパダヤヤの臓器移植に関する見解
「我々の国(インド)は貧しい。腎不全で苦しむ患者は透析を続ける以外、方法がない。それは毎年およそ60,000ルピーかかる。もし患者家族に移植手術を受ける経済的ゆとりがあり、またそのつもりがあるなら、非血縁者からの有償の腎臓移植は患者本人を苦痛から解放するだけでなく、同時に、ドナーとなる貧困者をも救うことになるだろう。政府は、現在のところ、腎不全で苦しむ患者もドナーとなる貧困者もどちらも救うことはできないのであるから、このような治療法(非血縁者からの有償の腎臓移植)は社会全体としてみればそれに利益を与えるものにある。政府はこのような治療法を禁止するのであれば、
患者のために無料又は低額の透析を用意すべきである。また、同時に、ドナーとなるような貧困者を救済する施策を用意すべきである。このような対策をとらないで禁止しても事態は悪化するばかりである。すなわち、需要と供給はそのままで、良心的で腕のよい医師は手を引き、二流三流の医師が闇で移植することになるだろう。」

日本では

臓器移植法第11条「営利目的とした臓器の売買等の禁止」規定があり、日本国内での臓器売買は認められていないので、フィリピンなど海外で臓器を買い求める例がある。故ジャンボ鶴田さんもその1人。
   ↓その裏側には
2002年5月31日現在、日本で腎臓移植を希望する臓器移植ネットワークの登録者数は約13000であり、順番が回ってくるまでに10年ほどかかるという実状がある。

日本人のコーディネーターによるフィリピンでの移植にかかる費用は、総額約3000万円ほどで、ドナーに支払う腎臓1個の値段は300万円が相場。

参考文献

・法学セミナーNo.462
・インターネット
http://homepage1.nifty.com/awaya/hp/ronbun/r001.html 臓器売買―インドの事例―
http://www.jotnw.or.jp/ 日本臓器移植ネットワーク
http://www.medi-net.or.jp/tcnet/ トランスプラントコミュニケーション
http://www.v-net.ne.jp/~pikaia/index.html 医療を考える会


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