売春について

2002.7.11
担当;D班(岡.小栢.和田)

1. 歴史

自然神信仰の文化
→性に対して寛容(例:古代ギリシアの高級娼婦「ヘタイラ」)
日本では神社の祭に乱交の風習あり。また江戸時代には吉原の遊郭に代表されるように、買春も大々的になされていた。

明治時代・・・婚姻外の性交に関しては一方で姦通罪を定め、他方で公娼制度(=国家管理の買春制度)の整備を行って規制する。
ヨーロッパの公娼制度がモデル
近代公娼制度はフランス・ナポレオン戦争期に始まる。
特徴は
 @公娼登録の義務
 A検診の義務

2. 廃娼運動の始まり

1880年、群馬県でクリスチャン民権家の県会議員たちが中心となり、県に対し廃娼の請願をしたのがきっかけ。
1890年には、全国廃娼同盟結成。
また第一次世界大戦後の1919年に、全関西婦人連合会が発足。
反対理由は「天皇の統治する大日本帝国に、買春のごとき“醜業”があるなどということは許されない」、「時代を担う青少年に悪影響を及ぼす売春を、国民の母として見逃してはならない」といったものだった。

3. 売春防止法

第二次世界大戦後、日本政府が占領軍用慰安施設を作る。
米兵の間に性病が蔓延。

1946年1月、連合国軍最高司令官から日本政府に対し覚書「日本における公娼制度廃止に関する件」が発せられる。
1947年1月には「婦女に売淫をさせた者等の処罰に関する勅令」を制定公布。
これにより、公娼制度は廃止されるに至った。

施設の閉鎖とともに職を失った女性が街にあふれだし、街娼が激増。性病がさらに蔓延。
性病対策のため、政府は集娼区として「特殊飲食店街」を設けることにする。

*「特殊飲食店街
・・・通称赤線。警察から風俗営業許可を受けた集娼地域。
これに対し、保健所の食品衛生法の許可のみで密売春を行うところは青線と呼ばれた。
事実上、公娼制度の復活。

労働省に設置された「婦人少年問題審議会」は、婦人の人権と地位向上のために放置できないとし、
・ 黙認主義を廃し、取締強化をすること
・ 単独の買春防止法を制定すること
・ 婦人の保護・更生対策を講ずること
・ 買春問題に対する正しい世論を啓発すること
・ 駐留軍の風紀について対策を講ずること
の五項目を挙げ、これに沿って今後の具体的対策をたてるよう要求。

1955年1月、東京で少女が芸妓屋に売られるという事件を皮切りに、深刻な売春問題が連日報道されるようになる。

世論の広がりも手伝って、1956年(昭和31年)5月、売春防止法制定

<売春防止法の特徴>

@ 売春を行うおそれのある女子に対する補導処分・保護更生の措置を講じたこと
A 男子も売春の主体として認める点
B 単に売春を行うことやその相手方となることについては禁止であることを明確にしたのみで、第三者に影響を及ぼす行為が罰則の対象である点


参考文献:

売春対策の現況(売春対策審議会・編 大蔵省 1959)
性の歴史学(藤目ゆき 不二出版 1998)
椿姫とは誰か(永竹由幸 丸善ブックス 2001)
模範六法(三省堂 2002)


売春防止法(昭和三十一年五月二十四日 法律第118号)

第一章 総則

第一条 この法律は、売春が人としての尊厳を害し、性道徳に反し、社会の善良の風俗をみだすものであることにかんがみ、売春を助長する行為等を処罰するとともに、性行又は環境に照して売春を行う恐れのある女子に対する補導処分及び保護構成の処置を講ずることによって、売春の防止を図ることを目的とする。

第二条 この法律で「売春」とは、代償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交することをいう。

第三条 何人も、売春をし、又はその相手方となってはならない。

第二章 刑事処分

第五条 売春をする目的で、次の各号の一に該当する行為をした者は、6月以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
一 公衆の目にふれるような方法で、人を売春の相手方となるように勧誘すること。
二 売春の相手方となるように勧誘するため、道路その他公共の場所で、人の身辺に立ちふさがり、 又はつきまとうこと。
三 公衆の目にふれるような方法で客待ちをし、または広告その他これに類する方法により人を売春の相手方となるように勧誘すること。

第六条 売春の周旋をした者は、二年以下の懲役または五万円以下の罰金に処する。
2 売春の周旋をする目的で、次の各号の一に該当する行為をした者の処罰も、前項と同様にする。
一 人を売春の相手方となるように勧誘すること。
二 売春の相手方となるように勧誘するため、道路その他公共の場所で、人の身辺に立ちふさがり、又はつきまとうこと。
三 広告その他これに類する方法により人を売春の相手方となるように勧誘すること。

第七条 人を欺き、若しくは困惑させてこれに売春をさせ、又は親戚関係による影響力を利用して人に売春をさせた者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
2 人を脅迫し、若しくは暴行を加えてこれに売春をさせた者は、三年以下の懲役又は三年以下の懲役及び十万円以下の罰金に処する。
3 前二項の未遂罪は、罰する。

第一〇条 人に売春させることを内容とする契約をした者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
2 前二項の未遂罪は、罰する。

第一一条 情を知って、売春を行う場所を提供した者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
2 売春を行う場所を提供することを業とした者は、七年以下の懲役又は七年以下の懲役及び三十万円以下の罰金に処する。

第十二条 人を自己の占有し若しくは管理する場所に居住させ、これに売春をさせることを業とした物は、十年以下の懲役及び三十万円以下の罰金に処する。

第三章 補導処分

第十七条 第五条の罪を犯した満二十歳以上の女子に対して、同条の罪又は同条の罪と他の罪とに係る懲役又は禁錮につきその執行を猶予するときは、その者を補導処分に付することができる。
2 補導処分に付されたものは、婦人補導院に収容し、その更生のために必要な補導を行う。

第十八条 補導処分の期間は、六月とする。

附則

1この法律は、昭和三十二年四月一日から施行する。ただし、第二章及び附則第二項の規定は、昭和三十三年四月一日から施行する。
2婦女に売淫をさせた者等の処罰に関する勅令(昭和二十二年勅令第九号)は、廃止する。
3前項の規定の施行前にした同項に規定する勅令の違反行為の処罰については、同項の規定の施行後も、なお従前の例による。

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