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研究関心領域
これまでの主要研究テーマ
- CMC(Computer-Mediated Communication)研究
- 情報通信技術(ICT)の革新、普及に伴う情報メディア環境の変容とコミュニケーション行動の変化
- デジタルネイティブ研究
- ネット世論研究
- LDASU(Log Data Analysis of Smartphone Use)研究会
- 「ヴァーチュアルエスノグラフィー」「ハイブリッド・エスノグラフィー」
- オンラインとオフラインの生活世界を対象とし、質的調査・エスノグラフィー調査を基盤に、 量的調査と組み合わせることで立体的・複合的にアプローチする方法論の展開
- 情報社会/ネットワーク社会論
- 「情報社会/ネットワーク社会」概念の反省的検討、文化的複数性
- 産業社会・資本主義の 歴史文化的展開 (グローバル化、脱工業化などに伴う文化社会システム、政治経済システムの変化)という文脈における「情報社会/ネットワーク社会」
- デジタルデバイド、ネット世論からみる社会文化変動
- 文化と認知・認知人類学
- 特に、文化的認知モデル理論・認知意味論・文化記号論の観点から文化と認識の関係を探る
- 医療人類学
- 特に、医師-患者コミュニケーションにおける臨床知と文化的知識・文化的推論の問題
現在の主要研究テーマ
- メディアコミュニケーション・CMC研究、デジタルネイティブ研究
- 情報ネットワークメディアの革新と普及とともに、私たちの生活世界のあり方は大きく変容してきました。 とくに若年層を中心に、 携帯、スマホ、タブレット、PC、ゲーム機など、多様なコンピュータが、コミュニケーションに
介在するようになっています。友だちの連絡先、誕生日、趣味などの情報は、自分で記憶するのではなく、 スマホのアドレス帳、スケジュール帳、SNSのプロフィールを外部記憶として利用することが多いかもしれません。また、どのメディアをどのような関係性で用いるか、メッセージをやりとりするタイミングの変化、デジタル情報が「オリジナル−コピー」ではなく、完全同一の「クローン増殖」であり、伝播速度と範囲がアナログ情報と大きく異なるなど、コミュニケーションのあり方、メディアのあり方とそれに伴う社会文化的変化は学術的にきわめて興味深い領域です。
- そこで、こうしたメディアを媒介とするコミュニケーションに関する研究(とくに、CMC(Computer Mediated Communications)研究と呼ばれる分野)を、主要な研究テーマの一つとしてきました。
- より具体的に、メディアコミュニケーション・CMC研究として取り組んでいるのが、「デジタルネイティブ」を対象とした実証的調査研究です。 「デジタルネイティブ」とは、およそ1980年生まれ以降、高校・大学時代からデジタルネットワークに親しみ、積極的に利用する世代と規定され、
2000年代、調査研究、議論が進展してきました。その成果の一部は、2012年11月『デジタルネイティブの時代―なぜメールをせずに「つぶやく」のか―』(平凡社新書)
として著されていますが、その後もアメリカデジタルネイティブ調査やベネッセ教育総合研究所との共同研究
(中高生のICT利用実態調査、2014年版報告書はこちら)など、さらに具体的に展開しています。
- また、2017年度から、フラー株式会社、
MURC(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社)と共同で、LDASU(Log Data Analysis of Smartphone
Use、 スマートフォン実利用データ分析)研究会を設立し、1秒単位のスマホ利用ログデータ分析に取り組んでいます。 2010年代、スマートフォン(スマホ)の普及はインターネット利用形態を変革し、テレビ視聴、外出時間など、生活行動自体にも大きな変化が生じており、
情報行動研究にとっても大きな意味をもちます。しかし、多様なアプリ、短時間の間欠的利用、無意識の操作など、従来型の社会調査では把握することが 難しい課題もまた数多く存在します。そこで、LDASU研究会では、1秒毎のスマホアプリ利用を分析可能とするビッグデータである「モバイルライフログ」
を分析することで、人々の生活行動およびインターネットの利用実態を分析する方法論と実践に取り組んでいます。
- 研究会の成果として、MURC研究員中田雄介氏による論考があります。ご関心のある方はアクセスください。
「スマートフォンの実利用データにみる人々のインターネット利用の実態」
- さらに、2014年度から「ネット世論」研究にも取り組んでいますが、それについては、以下をご覧ください。
- ヴァーチュアルエスノグラフィー・ハイブリッドメソッド
- デジタルネットワークメディアの革新は、社会科学、人間科学の研究対象として重要であることはいうまでもないですが、 データ収集方法、データ分析方法にも革新的変化をもたらしています。質問紙調査に代わるウェブ調査、巨大なログデータ、
テキストマイニング、リンクやトラックバックのネットワーク分析、データマイニングを可能にする多種多様な統計解析手法など、 ネットワーク利用に関する行動様式、意識、態度による定量的調査研究もまた多種多様です。
- 実際、わたしもこれまで、 数多くの情報ネットワークの普及とそれに伴う行動・意識・価値観の変化に関する社会調査に関わってきました。たとえば、以下のような調査です。
-
- こうした量的社会調査が重要なことはいうまでもありません。しかし同時に、利用者がネットワークに接続し、 活動する際の感情や心理、携帯、ブログ、対面など、複数の手段で、どのような人間関係、コミュニケーション関係を形成しているのか、といった質的情報は失われています。
- 私は、学部・大学院教育において、文化人類学徒としての専門教育を受けました。そこで、上記のようなメディアコミュ ニケーション、CMC研究の文脈において、質的アプローチを基盤とし、量的調査と組み合わせて、多元的、立体的に、
「サイバースペース」を含みこんだ人々の社会的活動空間とコミュニケーションのあり方を研究する調査研究方法 (「ヴァーチュアルエスノグラフィー」および「ハイブリッドメソッド」と呼びます)の検討に取り組んでいます。
これについては、ようやく脱稿し、新曜社から2018年8月に刊行されます。
- 産業社会の歴史的展開という観点からの「ネットワーク社会/情報社会」の理論化
- ヴァーチュアルエスノグラフィーが、ミクロの観点からの、認知、意味、 メディアコミュニケーション論であるのに対して、『オンライン教育の政治経済学』、
『ネットワーク時代の合意形成』、『デジタルデバイドとは何か〜コンセンサスコミュニティをめざして〜』、『ネットワークリアリティ〜ポスト高度消費社会を構想する〜』
など、これまで単行本の形で出版してきた研究は、マクロの社会文化理論であり、 その基底には、「ネットワーク社会/情報社会」という概念を反省的に捉えながら、産業社会・資本主義の歴史文化的変化
(グローバル化、脱工業化などに伴う文化社会システム、 政治経済システムの変化)という文脈に「「ネットワーク社会/情報社会」を定位する視座、社会的な富とリスクの産出と分配構造の変化への関心があります。
- 21世紀に入り、「格差社会」を巡る議論は多様に展開されています。比較制度分析の観点から、マクロな社会文化システム変化の理論化に取り組み、どのような情報ネットワーク社会を日本社会は指向することが望ましいのかといった観点からの研究も積極的に
行っています。
- 文化心理学にもとづくネット世論形成研究
- 上記の問題意識に重ね、2014年度から取り組み始めた課題に、ネット世論形成研究があります。ネット空間における 政治的言説、ナショナリズム的言説、政治的態度とネット利用、オンライン政治活動(ネット選挙、オンライン署名なども含む)などについて、
多様な調査研究が行われてきていますが、研究室では、認知人類学、文化心理学への関心と研究を活かし、George Lakoffの MCS (Moral
Conceptural Systems、道徳概念システム) 論、 Richard ShwederのBig Three of Morality(道徳性三元)論、Alan
Fiskeの社会関係モデル理論(RMT:Relational Models Theory)、Jonathan Heidtらの MFT(Moral
Foundations Theory、道徳基盤理論) などをもとに、(a)政治的態度・志向性、政治的言説の摂取・発言、 (b)情報ネットワーク行動・利用
、 (c)個人の属性(社会経済的、社会心理的、価値観、行動規範など)、三者の関係性とその社会的分布に関する実証的 研究に取り組んでおり、研究成果が具体的になりつつあります。本研究では、「ネット世論」をオフラインの世論から隔たった特殊なものとは考えず、ネット社会の歴史社会文化的展開として捉えます。
今後は、ネット空間での「正義」「公正」の在り方、社会の在り方に対する多様な言説・感情表出の分析をもとに、AI、ロボティクスなどを巨大な技術革新
を伴う社会文化変動の在り方を立体的に捉える研究へと発展させたいと考えています。
本研究領域の展開について、別ページを設けました。ここをクリックしてください。
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(c) Tadamasa Kimura